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歯科衛生士アイ子の訪問日記第1回

口腔ケアコラム  歯科衛生士アイ子の訪問日記から  ~訪問歯科で頑張るぞ!~

勤務していた歯科医院で、ある施設からの依頼で、訪問歯科診療を始めることになりました。

私の住む地域は田舎で、まだまだ訪問の認知度は低く、歯科衛生士が患者さんに行う口腔衛生指導と、ヘルパーさんが行う口腔ケアの違いも理解されていません。


そんな環境に中、私たち診療側も、手探り状態でのスタートでした。まずは本格的な訪問診療前に、介護施設に入居している方々の口腔診査を行いに訪問しました。


もちろん現状と口腔内を把握するのが目的ではありましたが、本当に私たちがやっていけるのかという不安を取り除くための、患者さんとのコミュニケーションの第一歩としてのご挨拶が目的でもありました。

訪問先は居宅型の施設でしたので、一軒一軒ご自宅を訪問するように部屋をノックしていきました。

「こんにちは、○○歯科医院から来ました、今日はお口の中を拝見させてくださいね」

いつも患者さんに接するように挨拶をして、少しお話が出来る方にはお話をしてから接するつもりでしたが、最初の患者さんから、私たちの顔を見るなり、口を一文字に固く閉ざし、全身の力で私の腕をつかみ暴れられ、私たちは一気に不安とその光景から恐怖させ感じてしまいました。

その患者さんとは初対面なのに、何年も前から私を恨んでいるかのような怨念こもった目つきに、思わず私は目をそらしてしまったのでした。


介護者の診察は学生時代に実習もし、実際の臨床でも経験済みでしたが、この何とも言えない雰囲気と環境に、訪問診療の難しさを痛感したのでした。

その後診察した人達も、認知症や半身麻痺、チューブだらけの患者さん。本当に口を診るだけでも忍耐と体力が必要でした。

この初回訪問時、口腔診査でものすごく気になる患者さんがいました。常に歯を食いしばり口が半開き状態のため、唇は渇き、前歯は歯石なのか治療の後なのか、被せ物なのか、見ただけでは判断できないそれはひどい口腔内状況のAさんでした。

しかしこの口腔内の現状が、この方の長い寝たきり生活と、それをケアする人がいなかったのだと私は悟りました。

この日すべての患者さんの口腔診査を終えたとき、私はなぜかとても清々しい気持ちでした。

それは、無事にこの作業を終えたという安堵からではなく、私たち歯科衛生士の関わりから、訪問先の患者さんに、口腔ケアから、口の中のさっぱり感や、食事を美味しいと感じる幸せを提供できる、そんな使命感と意欲が熱く胸に湧き上がってきたからです。

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