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認定看護師さんインタビュー企画

認定看護師さんインタビュー企画~武石さん(乳がん看護認定看護師)~

投稿日:2013.10.31

認定看護師インタビュー今回は、
がん研有明病院でご活躍されている武石優子さんにお話を伺いました。

■これまでのプロフィールを教えていただけますか。

高校までバスケットボールをやっていて、卒業後は実業団に入り2年ほどプレーしていました。しかし、もともと看護師になりたいと思っていたので、看護学校に入学し看護師になりました。
少し遠回りにはなりましたが、社会人を経験したあとに希望を叶えることができました。

看護師として最初に入職した病院は、腎臓内科を専門に透析を行っている施設で消化器外科や脳外科なども診療科目にもつ病院でした。そこで腎臓内科、糖尿病、泌尿器科の病棟や消化器外科病棟、手術室を経験しました。
その後、乳腺専門のクリニックに職場を移し、6年間ほど乳腺疾患のケアを経験したあと、乳がん看護認定看護師教育課程に入学しました。卒業後にがん研有明病院に入職しました。

■乳腺専門のクリニックに入職したきっかけは何だったのですか?

最初の病院で消化器外科の病棟に配属されたときに、乳がんの患者さんも看ていました。その病院は東京医科歯科大学の関連病院でしたので、医科歯科大学附属病院から乳腺専門の先生が週に何度か非常勤外来で来ていました。
その当時、看護学校では乳がんの手術をいうと乳房切除しか習っていませんでした。しかし、その先生は乳房温存手術を行っていてとても驚きました。
看護学校時代の乳がん治療は切除が当たり前で、術後の患者さんの痛々しい姿ばかりをみていて、温存手術は新鮮で興味が湧きました。

その先生に普段思っていた質問をぶつけると、思いのほか丁寧に説明してくださって、乳腺っておもしろいな…と思うと同時に勉強してみたい気持ちになりました。
そして自分なりに乳腺のことをもっと勉強しようと思って、参考になりそうな書籍を探してみました。すると乳がん看護に関する書籍がほとんどなく、当時あったのは術後リハビリテーションや、乳房切除を受けた方に対して専用の下着を紹介する内容のものばかりでした。

■まだそうした時代だったのですね。それでどうされたのですか?

そのことを先生に相談してみると、先生はさらっとこう言いました。「なかったら、作ればいいんじゃない?」と。先生が簡単に言うのを聞いて、「そうか…」って思ったんですね。
自分が勉強を深めていって、エキスパートになれるくらいに頑張ってみればいい。そう考えて、いっそう興味をもって乳腺について勉強していきましたね。
その後、先生が乳腺専門のクリニックを開業することになり、「乳腺をもっと勉強したいと思うのであれば、一緒にやらないか?」と声をかけてもらいました。私は乳がんのことをきちんと学んで、乳がん看護の専門性を高めたいと考えていたので乳腺クリニックに異動し、乳がんの患者さんに深く関わっていくことになりました。

■その後、認定看護師になろうと思ったきっかけを教えてください。

当時、認定看護師についてはいくつかの分野がすでに認定されていましたが、乳がんに関する認定看護師はありませんでした。そのため、「乳がん看護認定看護師になろう」と思ったのではなく、「乳がん看護を認定看護師として分野認定してもらわないといけない」と思っていました。

現在も、臓器に限定した認定看護師というのは乳腺以外にはありません。また、乳がんは他の臓器とは違い、40歳代後半から50歳代が発症のピークで、働き盛りの若い世代が罹患しやすいがんです。そのような患者さんをケアしようと考えると、やはり専門のナースが必要ですし、アメリカやイギリスのように、これからは日本でもブレストケアナースが絶対に必要だと考えていました。

まずは、乳がん看護に関心のある看護師の仲間と東京で勉強会を始めていき、同じような思いの看護師が全国にいることを知り、乳がん看護が認定看護師として分野認定されるように協力していこうと団結していきました。私たちが活動するにあたっては、乳がんを専門にしている先生方に理解とたくさんの支援を頂きました。

このような活動が認められて、乳がん看護が分野認定され迷わず受験しました。
私は乳がん看護認定看護師の1期生ですが、同じような思いを持って活動していた看護師が同期にはたくさんいます。

■認定看護師になるための受験勉強はどのように行いましたか?

1期生でしたので試験に関するアドバイスをもらうことはできませんでしたので、乳がん看護書籍のケアのポイントを確認しながら勉強を進めていきました。
また、臨床での乳がん看護の成果を研究会や学会で発表する経験を積み重ねていくことも重要視されていたので、学会や研究会で発表し、他施設の看護師とコミュニケーションをとっていきました。大変なこともありましたが、新しいことに挑戦していく面白さがありましたね。
それから、自分たちが行っていた乳がん看護そのものが試験内容になると考え、日々の臨床での実践をおろそかにしないようにしました。
普段行っているケアを理論立てて考える習慣さえ身に付けておけば、試験には困らないのではないかと考えていたように思いますね。

■認定看護師となって、ご自身にどのような変化がありましたか?

認定看護師を取得したころは、自分自身の職場環境が変わったことで看護の内容にもおおきな変化がありました。認定看護師の教育課程を卒業して現在のがん研有明病院に入職したのですが、これまでに経験してきたクリニックでの看護業務とはいろいろな意味で大きく異なることがたくさんありました。

クリニックでは患者さんの顔と名前が一致する中で、患者さんと密な関係を築いて仕事をしていたのが、年間1000例の手術を受ける患者さんと、1万人近い術後の患者さんに対応していくような当病院では、自分が果たす役割がまったく違うことに戸惑いました。
ここでは、私が1対1でやれる看護には限界があります。自分が担当した患者さんだけを大事にしたらいいということではなく、当院の乳腺科を受診する患者さん全体を見渡した看護というものが必要になってきました。
このような状況の中で、認定看護師教育課程での学びはたいへん参考になりました。組織全体を見回した看護や交渉のスキル、看護師への教育といった学び受けられ、退院してからは外来で引き続き同様の相談に乗ってあげられるような仕組みを、これから作っていかなければいけないと思いますね。

■認定看護師としての今後の目標について教えてください。

自分たちが理想としている看護を、全ての患者さんに提供できるように頑張ることは言うまでもありません。そして繰り返しになりますが、患者さんが私たち看護師に相談できる機会をもっと増やしていきたいですね。

患者さんは、「乳がん」と診断を受けたとき、大きな衝撃を受け、悲嘆にくれてしまいます。そんな時に多くの情報をもらっても、何をどうすればいいのか整理のつかない状況になってしまうことが多くあります。
治療法の選択や、今後の自分の生活について考えていかねばならないものの、そこまでとても考えが行き渡らない。だからこそ、私たち看護師が患者さんと一緒に考えられる存在であることが必要なのです。

しかし、なかなか介入ができていないのが現状で、患者さんが悩み、迷っている状況に関わり、見守ることで、「自分のそばには話を聞いてくれるナースがいて、ここで相談すると聞いてもらえる」ということを患者さんに分かってもらいたい。
そのためには、外来の看護がやはり重要だと思っています。乳がんの患者さんは、入院していても長くて2週間程度です。その後は、外来で通院しながら治療を受け生活を送っていきます。
つまり、外来看護が充実していかないと、乳がん患者さんのケアの充実はあり得ないのです。だからこそ、専門の看護師がもう少し増えて、さまざまな相談を患者さんが希望したときにすぐに受けられるような環境や場所、そして時間を提供したいというのが私の夢でもあり、目標になっています。

■最後に、認定看護師を目指す皆さんへのメッセージをお願いします。

私が乳がん看護認定看護師になりたいと思ったのは、人との出会いがあったからだと感じています。自分と似た考えの人といろんな機会を経て出会ったことが、今の自分を作っていると思っています。
たとえば、自分が何をやりたいのかわからない、何に興味があるのかわからない、といった方はたくさんいると思います。そんな中でも、ちょっと気になることや、興味のあることって、ナースであれば絶対にあると思います。
そう思ったら、是非、興味のある分野の勉強会や研究会などに参加してみるといいのではないでしょうか。そして、もう少し欲張ると参加して帰ってくるだけではなくて、発表者や参加者に質問するなどして、出会いを作ることが大事だと思います。

興味がある分野にはどんどん参加して、他施設の人や同じような興味をもっている人、頑張っている人と仲良くなって、相談をし合えるような仲になること。そうした努力を積み重ねていくと、いつの間にかそれが自分の得意分野になり、「自分はこれが好きだったんだ」と気付いて道が開けてくると思います。こんな努力を是非してもらいたいなと思っています。

<武石さんがご活躍されている病院>

がん研有明病院
〒135-8550 東京都江東区有明3-8-31
 TEL.03-3520-0111(代)

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