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セミナー・イベントレポート第1回

セミナー・イベントレポート①新春PDN医療フォーラム 「認知症鑑別診断から胃ろうの適応・看取りまで」

270名余の参加を得て開催された、新春PDN医療フォーラム。
昨今の話題の中で胃ろうとは切っても切れないテーマである「認知症」に踏みこんだ。

新春PDN医療フォーラム

「認知症鑑別診断から胃ろうの適応・看取りまで」

日時:1月12日(日) 13:00 ~ 18:00
会場:東京慈恵会医科大学 1号館3 階講堂・7 階実習室(東京都港区)
主催:NPO法人PEGドクターズネットワーク(共催:NPO 法人CIM ネット)

<演者およびシンポジスト>

第1部

・東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 神経内科 診療部長  鈴木正彦先生
・地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 研究部長  石井賢二先生
・筑波大学 臨床医学系精神医学 准教授  新井哲明先生

第2部

・町田市医師会 会長  川村益彦先生
・北里大学 講師/亀田メディカルセンター 特別顧問  小野沢滋先生
・東京大学大学院 人文社会系研究科 特任准教授  会田薫子先生
・医療法人社団穂光会いなば内科クリニック 院長  稲葉敏先生
・東京慈恵会医科大学 分子疫学研究室 教授・小児科医長  浦島佳充先生

第1部では、認知症の診断と予防の可能性についての講演。

認知症は受診時すでに症状が進行しているケースが多く、発症10〜20年以上前の、日常生活が自立している時期から脳内の変化が現れ始めているという。
PETやMRI画像により、脳内の血流や脳の委縮を可視化する技術が確立されている一方、認知症の背景疾患(神経変性疾患、血管性認知症、正常圧水頭症など)を鑑別診断できる医師や医療機関の格差が大きいのも実情。
早期診断、早期治療、地域包括ケアの観点からは、地域のかかりつけ医への認知症に対する理解を深める支援が必須である。
・葛飾区では医師会が中心となった認知症対策委員会が地域医療 ・ケアの連携を模索していることが紹介された。
・認知症予防の取り組みとしては、茨城県利根町の65歳以上の住民約2000名による「フリフリグッパー体操」が動画で紹介された。

運動が注意機能に効果があるだけでなく、脳を活性化し生活習慣病や認知症、うつ病等の予防への効果も期待されているとの研究成果を報告。

第2部は、「地域連携と終末期ケア」を取り上げたシンポジウム。

町田市では、行政と医師会の連携による、地域包括ケアシステムを推進している。しかし、多職種連携を掲げながらも「担当のケアマネジャーを知らない」「サービス担当者会議に参加していない」という医師も少なくない。
医師への啓蒙活動を通して在宅医療を支えていきたいとのこと。

また、これからの地域連携のモデルとして「命を伸ばすために問題点を抽出し、解決に努める連携」から「患者の希望をかなえるための連携」へ意識変革してゆくべきではとの発言があった。
認知症末期での胃ろうの適応が議論される中、
・嚥下機能が落ちてゆく段階で、かかりつけ医がしっかりと「胃ろう」について患者・家族、介護スタッフと話しあう仕組みを作ること
・本人が胃ろうにしたくないと希望したならば、スタッフ全員で共有し尊重すること
・主治医と地域のかかりつけ医で方針を決めてゆく際に、患者の希望が尊重される地域主導の連携のしくみを構築してゆこう
と提言。

それを受け、本人の意思を尊重するACP(Advance Care Planning)の概念が解説された。
患者の価値観、死生観、信仰等を理解・共有し、ケアや治療の方針を一緒に悩みながら決めてゆくプロセスこそが大切。時間をかけ、患者の本心を聴き出すことは、患者側の満足度を高めることにもつながると強調した。

実践報告としては、葛飾区医師会が取り組む認知症対策として、
①在宅対策、②BSPD ( 認知症周辺症状)対策、③医療連携対策、④学術・啓蒙が紹介された。

かかりつけ医への働きかけと同時に、もの忘れ予防診断・相談窓口の開設など、住民・患者側への対応も並行して行い、地域完結型の医療連携を目指していると報告。

最後に、胃ろうを造った認知症患者に対する全国調査( NPO法人PEGドクターズネットワーク) の結果について、従来の認知症患者への胃ろう造設の適応について否定的な欧米の論文と、本調査の生命予後の良さを比較解説。
患者本人や家族に与える影響も含めたさらなる分析のため、療養の場が変わっていっても、記録を残してゆくことの重要性が述べられた。

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