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病院取材企画!第5回

病院取材企画!第5回 「全員参画」の手術室改革が求められている!

投稿日:2015.02.25

厚生労働省は「急性期病床」約9万床を 2015年度末までに削減する方針。
つまり現在ある急性期病床の全体の4分の1が削減されます。
残った急性期病院は受け皿として今まで以上にたくさんの患者さんを受け入れていかねばならず、当然、そこで働く医療従事者に求められる仕事の仕方も変わってきます。
この度、埼玉医科大学病院の中央手術部長 織田先生、青木副看護部長に、手術部門改革の取り組みについてお話を伺いました。

コミュニケーションの徹底で、患者さんをお待たせしない体制作り

織田:急性期病床が1/4となるということは、残った病院が患者の受け皿にならなくてはなりません。
現時点でも当院の手術件数は伸び続けておりますが、さらに増えることになるでしょう。そのためには今までとは運営の仕方を変えていかねばなりません。そのために大事なことはまずはコミュニケーションの強化ですね。

例えば、手術を希望される患者さんがいて、自診療科は枠がいっぱい。でも実は他の診療科の枠は空きがある。でも隣の科の枠のスケジュールは知らない、分からないから自分の科が空きのある日程までお待ちいただく。これは患者さんにとっても不幸です。

当院では、手術スケジュールの共有を徹底しました。毎週火曜の朝8:00に各診療科の病棟責任者が集まって次週の手術スケジュールを検討・調整し、週末金曜までに埋まらない手術枠については、他診療科が申請をして、空き枠を利用できるようにいたしました。

特に当院では高齢の方の大腿骨頸部骨折は可能な限り早期に処置をすることにしておりまして、その空き枠でどんどん処置するんですね。処置が早い=早期手術は合併症のリスクも減りますし、早期退院につながるのですよ。
実際、患者さんにも喜ばれております。

メディカルアシスタントや業者の活用で看護師が本来業務に集中できる環境づくり

織田:そうして枠の有効活用が進むと、今度は現場、特に器械出しの人手が不足するようになってきました。
そこで当院では、数年前からメディカルアシスタント(MA)という新たな職種・スタッフを配置し、器械出しや洗浄・滅菌などの業務についてはMAに担ってもらい、看護師はもっと本来業務に集中できる体制にしました。
看護師の業務は、器械を出したり物を運んだりということではないですからね。

青木:その甲斐もあり、例えば、術前訪問などは現状100%を達成できております。また、業者をうまく活用するということも有効です。
例えば手術用部材はかなりの点数にのぼり、これを現場の看護師達が手術ごとに準備することは非常に手間でした。

当院では手術部材のキット化サービスを行っている業者を活用することで、この準備段取りの手間を大幅に短縮いたしました。また、こうしたワンパックのキットのおかげでゴミも減ったというのも利点ですね。

改革の意識の全員共有が大切

織田:こうした改革をしていくにあたり、大事なことは改革の意識を全員で共有することです。
私が着任した頃は手術運営委員会も3ヶ月に一度でしたが、これは毎月開催としました。そして毎週手術スケジュールを組むミーティングの前に実務者会議も行っております。
やはりこうした会合をこまめにやらないと、全員で意識共有は図れません。毎週毎週、全員で現場の問題点を把握し、解決に向けて皆で知恵を絞る…これが大切なのですね。

青木:こうした会議を毎週行っていると、組織の風通しもよくなり、一体感も生まれてきます。
実際に、看護師の方からも問題提起することも増えてきました。
例えば最近の例ですと、手術と手術の間のインターバルをどうやってより効率化していくのか、などでしょうか。

患者さんのケアの一方でスタッフのケアも

青木:やはり、手術部の看護師にとって負担が大きいのは、同じ術式でも執刀する先生によってやり方が違うし、先生ごとに違ったサポートを求められるということですね。

織田:それは確かにそうでしょうね。特に手術中の執刀医はナーバスになっているため、執刀医ごとのやり方、気性などがまだ把握できていない新人の看護師には難しいこともあると思いますし、実際まだ慣れない中で医師から責められたりすると、いたたまれないと思います。
そこで、当院では毎週実務会議でこうした手術室の現場で起こったことを報告・共有してもらっております。ストレスや問題も一人で抱え込むことがよくないのです。
共有することで緩和されますし、解決の方法も見えてきます。

現場の改革への反対意見には 「何が患者さんのため」になるのかを問い直す。

織田:どんな時でも改革に反対はつきものです。大事なことは「何が患者さんのため」になるかということです。
我々の使命は、一人でも多くの患者さんの治療をすることです。
手術を待っていらっしゃる患者さんを減らすためには、効率を上げて、限りある病院の資源で、できるだけ多くの手術を実施することが必要となります。

「手術時間を短く、在院日数を短くすることは全て患者さんのため」なのです。
「何が患者さんのためか」ここを中心にすえていけば、悪い結果につながることはないはずです。
これまでの急性期病院を振り返ると、7:1看護にこだわり、とにかく看護師を確保しようというところに力点を置き、どこか「患者さんのために」という視点が疎かになっていたところもあったのではないかと感じています。

今回の改定をきっかけに急性期病院は、もう一度「何が患者さんのためか」という原点に戻り、限られた資源でより多くの手術をこなすための効率的な運営へと見直すことを迫られております。
当院のやり方がご参考になるかは分かりませんが、皆さんの病院の手術室改革の一助になりましたら幸いです。
埼玉医科大学病院
住所 〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38番地

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