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学会聴きある記第2回

【学会聴きある記】創傷被覆材をめぐる現況②

投稿日:2015.11.17

第17 回 日本褥瘡学会学術集会
(2015 年8月28・29日 於:仙台)
多彩な企画が繰り広げられた本学術集会のプログラムの中から、創傷治癒のメカニズムと新しい創傷被覆材の使用経験をテーマとした、ランチョンセミナーの要旨を紹介。

褥瘡予防への新戦略 〜当院における臨床的データよりの考察〜

加瀬 昌子 氏
(総合病院国保旭中央病院 皮膚・排泄ケア認定看護師・スキンケア相談室看護師長)
加瀬氏は関わっている院内の褥瘡発生の現状、踵部褥瘡の予防対策、医療関連機器圧迫創の予防対策について講演。
ここでは踵部の褥瘡予防対策について紹介する。

臨床データに見る褥瘡の発生状況

急性期病院である国保旭中央病院スキンケア相談室看護師長の加瀬氏は、救命救急病棟(14床)と重症集中治療室(4床)で関わった褥瘡予防の取り組みについて、2014年度の臨床データから褥瘡発生の傾向や背景を示した。

リスク状態775名とハイリスク状態2458名の合計3233名は、全入院患者19037名の17%にあたる。
褥瘡発生数は260件、主な原因は極度の皮膚脆弱、麻薬等の持続的使用、重度の末梢循環不全、ショック状態など。腎臓内科、循環器、救命救急病棟をはじめ、循環動態不良患者に多く発生している。
特に、過去3年間の踵部への褥瘡発生129件についてみてみると、122件に糖尿病、末梢循環障害、閉塞性動脈硬化症、糖尿病と末梢循環障害の合併、糖尿病と閉塞性動脈硬化症の合併のといったリスク因子が伴っていた。

そこで「クイックリファレンスガイド(2009年版)」で推奨された、スキンケアと皮膚保護材による、踵部褥瘡予防のフローを、加瀬氏はICUのスタッフらと作り上げていった。

踵部褥瘡予防のために

今回の踵部褥瘡予防対策では、創傷被覆材として使われるドレッシング材であるメピレックスボーダーⅡヒールタイプの貼付や、医師の指導下での振動療法が導入された(特定集中治療室管理料の算定対象)。

「予防対象は、ショック状態と重度の末梢循環不全とし、必ず簡易体圧計を用いて記録に残しました。ドレッシング材交換の目安は5日、ハイリスク状態が解除された時点で終了としました。
それらの情報は、転科や転棟での申し送りを含め、私も連携させていただきました。結果、本ヒールタイプ使用によって19人中16人( 84%)に圧の低下が見られました」と、事例を紹介する加瀬氏。
ICU入室時よりメピレックスボーダーを使用した、循環動態が悪く末梢神経が収縮して死亡した患者は、全身状態の低下にもかかわらず褥瘡は発生しなかった。

別の症例では同被覆材の使用と並行して、血行促進のための振動機(リラウェーブ)を使用。
踵部褥瘡発生の予防、治癒促進および皮膚の改善に対する有効性が確認されたことも報告した。

「今後もショック状態、循環動態不良の患者に積極的にメピレックスボーダーⅡヒールタイプを使用、評価を継続し、踵部褥瘡予防の有効性を確認していきたいと思います」と語った。
ランチョンセミナー11 より
(共催:メンリッケヘルスケア株式会社)
【学会聴きある記】創傷被覆材をめぐる現況②

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