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【患者さんの真のプロフィールを知るために】最終回 患者さんの真の困りごと なぜ業務の問題に すり替わってしまうのか

その他投稿日時-(2015-11-24)ナースマガジン

今まで、患者さんたちの真のプロフィールを知るために、どうしたら良いのかを考えてきました。
最終回となる今回は、患者さんの問題が、何故業務の問題にすり替わってしまうのか、患者さんの真の困りごととは何か、を考えてみます。

入院患者さんによる衝撃的な出来事

かつて、私が病院で働いていた頃、患者のAさんが自分の持っていた果物ナイフで自身の腹部を刺す、というとても衝撃的な出来事がありました。
Aさんは長らく人工呼吸器による呼吸補助を受けており、ベッド上で生活をされていました。ある日の朝食後、その不幸な出来事は突然起きました。

すぐ当直医が呼ばれ、Aさんの腹部の刺し傷が診察されました。このとき、傷そのものはさほど問題とならなかったものの、Aさんは血栓溶解剤の副作用で出血が止まりにくい傾向にありました。
数時間後、再出血が疑われるバイタルサインの変化が見られ、緊急手術で一命をとりとめました。

繰り返し行われるケアを減らせないか

私も含め、病棟の看護師全員はこの出来事に強い衝撃を受けるとともに、患者さんの心情に何故気づけなかったのかを振り返りました。
何が患者さんをそのような行為へ仕向けてしまったのか…。思い当たる点はたくさんありました。

その当時、病院での在院期間は今と比べものにならないくらい長期に渡る方がいました。実は、Aさんもそのお一人であり、気管切開部から溢れる喀痰を吸引するために、1日に幾度も看護師が病室を訪れていました。

私も含め、看護師達は幾度も繰り返し行われるケアに、少し辟易した感情を抱くときも正直ありました。そして、いつ退院するのか全く見通しが立たない状況の中、私達は、“自分で少し吸引できないかな”“自分で吸痰できれば看護師を待たなくてもいいよね”“箸を持つこともできるから、自分でできそうじゃない?”と話し合うようになりました。
なんて浅はかな考えを抱いていたのでしょう。

Aさんは看護師の勧めを受け入れ、ついに自己吸引をマスターし、看護師の業務負担は減りました。
果たして、これはAさんと看護師双方にとってハッピーなことだったのでしょうか。

「私たち」が主語になっていたケア

Aさんは喀痰吸引を希望する回数は多くても、それ以外は大体決まった時間に手伝いを求めてくるだけでした。
Aさんなりに、看護師にかける負担を最小限にしようと精一杯気遣ってくれていたのだと思います。
また、Aさんのご家族は面会になかなか来れず、人工呼吸器を装着していたため会話もままならない状態でした。当時私達は、病室を訪問する意味を、痰の吸引による気道確保としか捉えていませんでした。
一方、毎日ベッド上で過ごすAさんにとっては、呼吸が楽になるだけでなく、そのつど交わされる看護師との短い会話やスキンシップなどで、気持ちが癒やされるという意味があったのではないかと考えます。
私達は患者さんの気持ちを考えずに、業務の効率化を優先してしまったのです。まさに、患者さんの問題が業務の問題へとすり替わってしまっていたのです。

私達看護師は、自分達の負担を減らすためにケアの方法を試行錯誤することはないでしょうか。あなたが行っているケア、それは患者さんが困っていることを本当に解決する内容でしょうか。「私たち」が主語のケアとなっていないでしょうか。

看護師が患者さんに関わることができるのはほんの一部にしか過ぎませんが、たとえ一部でもその人の全体像との繋がりを考えることが重要ではないかと考えます。

(おわり)

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