ナースマガジン ナースマガジン

ナースマガジン

ナースマガジン

患者・同僚・管理者に好かれるデキるナースになるシリーズ第1回

その他投稿日時-(2016-04-13)ナースマガジン

        これからのナースに求められるケアの質とは ~効率的で効果的な質の高い医療的ケアを知る~
        第1回 下痢患者のトラブル対策のポイント
     ~漏れに伴う患者の苦痛、看護業務の負担を軽減するには~


-透析患者には下痢傾向の方が多いそうですが、どうしてですか?

 透析患者は、水分コントロールやカリウムを含む生野菜摂取の制限などによって、便秘になりやすい傾向にあります。2011年11月に行われた日本慢性腎不全学会で報告された発表では、透析患者の46%が下剤を使用しているという事が紹介されています。透析患者の約2人に1人が便秘解消を目的として下剤服用をしていることから、下痢の発生頻度の高さは見てとれると思います。下剤の中でも大腸刺激性の下剤は、その依存性から、結果的に腸の蠕動運動が低下し、下剤の使用量増大と共に下痢が続いてしまうこともあります。

 また、腸管の支配動脈も動脈硬化や血管の石灰化が進み、虚血性消化器疾患を生じやすくなっているケースには、消化管への負担の少ない経腸栄養剤を経管投与することもあります。その栄養剤の浸透圧が高かったり投与速度が速すぎたりする事でも、下痢をおこします。さらに免疫力の低下から、クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎などの細菌性の消化器疾患による下痢も起こりやすくなっています。

出典:第14回日本腎不全看護学会学術集会・総会 ランチョンセミナー8 透析患者さんの便秘の現状と問題点~アンケート結果からわかること~ 演者:長野県腎不全看護連絡会 代表 諏訪赤十字病院 赤津 サトミ 先生 より

出典:第14回日本腎不全看護学会学術集会・総会 ランチョンセミナー8 透析患者さんの便秘の現状と問題点~アンケート結果からわかること~ 演者:長野県腎不全看護連絡会 代表 諏訪赤十字病院 赤津 サトミ 先生 より

-下痢が発生した場合、どのような対応をしていますか?

 まず、下痢発生の原因をアセスメントし、発生している下痢が病原性なのかを鑑別することが必要です。例えば、ノロウイルスやクロストリジウム・ディフィシル誘発性やMRSAなどによる腸炎など、発熱や腹痛などの症状を伴うものであれば、静脈栄養や抗菌薬の投与などが必要となってきます。

 その他、下痢を起こしやすい薬剤使用の有無、下剤乱用の有無の確認も必要です。薬剤性による下痢であれば、医師と相談し治療方針を検討していきますが、下剤乱用によるものであれば患者さんを中心に医師や薬剤師も含め相談しながら、下剤の種類や量、内服間隔の検討をしていきます。並行して、腸内環境を整える食物繊維や乳酸菌を含む整腸剤や栄養補助食品をとりいれることもあります。

 経管栄養を行っている方は、まず栄養剤の浸透圧や成分、投与速度がその方にあっているかを見直し、必要に応じて栄養剤や投与法の変更を行います。経腸栄養用のポンプを用いて、投与速度をコントロールして対応することも多いですね。適応であると判断されれば、半固形栄養剤や消化態タイプの濃厚流動食品を使うこともあります。当院では、毎日多量の下痢便がある方にハイネイーゲルを使用し、毎日有形軟便が自然排泄されるようになった経験から、排便コントロール目的として栄養剤の検討は必須と感じております。

 いずれにしてもその症状に合った腸内環境の改善に努め、下痢を起こさないようにすることと、下痢による二次トラブルを予防することに気をつけています。


■食物繊維としてペクチンを使用している消化態タイプの濃厚流動食品 ハイネイーゲル

販売者:㈱大塚製薬工場

販売者:㈱大塚製薬工場

-下痢発生による二次トラブルとしては、どのような問題がありますか。
 頻回な下痢が発生し一番辛い思いをするのは、患者さん本人です。寝たきりの方は特に、便漏れによる気持ち悪さのみならず、おむつや寝衣、シーツを汚染し、一斉に看護師に交換される時の羞恥心や情けなさは、医療者の想像以上だと思います。更に、肛門周囲のスキントラブルや褥瘡を発生した場合は、創部の交換やケア時の疼痛など身体的苦痛もあります。

 一方、看護・介護者の立場からみても、便漏れがシーツまで及んだ際に行うおむつ・寝衣・シーツ全ての交換にかかる時間は、病棟業務に支障をきたします。限られた時間内で複数の患者を看護しなくてはいけない看護師にとって、大きな業務付加と時間のロスを発生させます。ひいては仕事に対するモチベーションに影響を与えてしまうこともあります。

 だからこそ、患者さんだけでなく看護・介護者にとっても、下痢が発生した際には早期に原因をアセスメントし、予防の徹底が必要となります。体位変換や食事時の背上げの前におむつ内排泄の確認をするなど、ほんの少しの一手間が、結果的に便漏れによるシーツ交換など回避する術となります。

 便漏れによる二次トラブルとして最も多いのは、肛門周囲皮膚のびらんです。下痢便に含まれる消化酵素と腸液のアルカリ刺激に加え、肛門周囲の頻回な洗浄やふき取りによる機械的刺激が原因です。そもそも、おむつは尿を吸収するための構造であり、便は吸収されません。よって、排泄された下痢便が皮膚に付着していても、皮膚のバリア機能を低下させないよう撥水性のクリームを塗布し、肛門周囲の洗浄やふき取りによる機械的刺激を最小限にする技術が必要です。

 間違った便漏れ対策としてよく見かけるのが、おむつの重ね使いです。脇漏れ防止のために股間・お腹・腰まわりと、インナーの重ね使いをしても、おむつの吸収体は便を吸収できません。結果的に脇や背中から便漏れしてしまいます。インナーの枚数が増える分患者さん自身も窮屈で蒸れやすく、交換の時間もコストもかかります。

 便の漏れにより、シーツ交換、おむつ交換、洗浄、スキンケア、着衣交換などの業務が発生します。1人で対応した場合15分~20分程度の業務時間を費やすことになり、本来の看護業務を妨げることにもつながります。

 当院では、便意のある患者はおむつを都度交換し、便意のない患者は1日6回程度決められた時間におむつ交換を行います。その際にも皮膚に付いた便の量が少なければ、2人で1~2分、1人でも5分以内で取り替えられます。しかし、泥状便や残渣の多い水様便の場合は、おむつを開いて便が身体に大量に付着している事を確認し、それからお湯を用意して、洗い流して、おむつを交換してという流れで、2人で対応しても5分程度かかります。

 さらに適切なケアが行われないと、ほぼ100%、褥瘡を含むスキントラブルの発生につながると考えてよいでしょう。その治療・ケアが在院日数に影響することもあります。入院の目的を果たしたとしても、下痢があった場合は、落ち着いた時点で退院するので、軽い場合でも1-2日は変わります。

-特にスキントラブル予防のために行っていることは何ですか?
 まず、皮膚の清潔ケアと保護です。陰部洗浄は原則として朝1回ですが、汚れの具合によっては適宜対応します。洗浄剤は弱酸性泡状のボトルタイプを利用しています。2プッシュの泡で洗って洗い流して2分くらいです。

 下痢が頻回な方でも、皮脂膜を除去しすぎないよう洗浄剤の使用は、2回までにとどめています。下痢の有無で洗浄時間は大して変わりません。

 また、下痢などの症状が無い方でも、おむつをしている患者はトラブル発生リスクが高いと考え、予防的に撥水クリームを塗って皮膚を保護しています。

-下痢による漏れ防止のポイントや工夫していることを教えてください。
 体位変換や背上げを行う前に、体動などでおむつがズレていないか、排泄の有無を観察し、その状態に合わせたケアを実施することです。正しいアセスメントを行って、おむつも適切な当て方をする必要があります。

 おむつについては基本ルールとしてアウター1枚、インナー1枚で使用する事が望ましく、出来れば同一メーカーの物を選定する事が大切です。他メーカーのインナーとアウターを使用すると、規格が合っていないため、漏れ予防を目的としたギャザーが機能せず漏れの原因となることもあります。よって、おむつの正しい選択と使い方はとても重要です。

 経管栄養患者の場合は、栄養剤の選択も重要です。当院では、便が有形軟便でおむつを汚さない適度な固さでまとまるため、ハイネイーゲルを活用しています。バッグタイプの栄養剤で、ぶら下げて自然落下で投与できるので、業務効率も非常に高いです。容器への移し変えに伴う手間や細菌混入予防の面からも、メリットがあると感じます。スキントラブル対策的にも、コラーゲンペプチドを含有しているのはありがたいですね。

-下痢による漏れ防止対策を行う、病院運営上のメリットは?

  患者のみならず、病棟看護師にとってもおむつ着用患者の下痢の漏れは実に深刻な問題の一つです。シーツ交換、着衣交換、おむつ交換など大きな業務負荷がかかる上、改善がなかなか見られないと、看護師のモチベーションにも影響を与えます。人件費の増加と看護師のモチベーション低下は、病院経営の視点からも大きなリスクではないかと、経営サイドも認識しています。更に、下痢便の原因が感染性の腸炎であれば、感染対策の徹底を実施していかないと、他の患者への拡大や医療費、入院期間の拡大に繋がっていきます。よって、日ごろからの感染対策は必須となります。

  病院経営にとって、無駄なコストの削減も大切ですが、安易に目先のコストや合理性を重視することが、結果的にトラブルを招いてしまうこともあります。トータルコストで治療やケア、物品や栄養剤の選定も考えることがコスト管理においては重要だと考えております。例えば、経管栄養患者の排便コントロールのために使用しているハイネイーゲルなどは、コストだけでは計れない価値があります。物品や栄養剤の選定は、患者と看護師の双方にメリットがあれば、病院にとっての必要経費として捉えて使用する事も重要だと考えています。

  看護業務の軽減は、より質の高い看護のために活動するゆとりをもたらします。そして、質の高い看護が患者満足度のアップや病院に対する信頼につながることを考えると、パフォーマンスを重視する事が大切だと考えます。

下痢漏れ発生時の経済的な負担は、看護師の業務負荷を考えた場合に決して安いものではありません。

 また、下痢漏れの発生により院内感染リスクが高まり、下痢漏れが頻発すると、病棟看護師のモチベーション低下にもつながる重大な事象の一つであると考えられます。また、これらの下痢の漏れは、日常ケアを正しい知識と智恵を持って正しく行うことで回避できるケースも少なくありません。
 
 おむつ内のアセスメントの徹底とアセスメントに対応したケアの実行、おむつの適正使用、排便コントロールにつながる栄養補助食品、下痢予防に配慮した組成の濃厚流動食品の選択など日々の日常業務の中でもやれることは沢山あります。

 日常ケア一つ一つをこだわり、正しく適切に実行して行く事でも経営に確実に貢献できているということを、本企画を通じて感じていただければ幸いです。

会員登録はこちらから

西山順博先生のWEB動画セミナー カテーテル・漏れ・スキントラブル PEGのアセスメントと対応実務を症例画像つきで解説!

照林社セミナー
アンフィニBooks
訪問看護支援協会
照林社
ビデオ・パック・ニッポン
ラフィネ採用
モバイルサイト