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【何ぞやシリーズ第10回】 IAD(IncontinenceAssosiated Dermatitis)って何ぞや?

【何ぞやシリーズ第10回】 IAD(IncontinenceAssosiated Dermatitis)って何ぞや?

投稿日:2017.03.07

6月に開催されたJWOCM学会(日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会)で、その評価方法が検討されたIAD。
失禁関連皮膚障害と呼ぶこともあるように、尿・便など排泄物の曝露に関連する湿潤病変の1つです。日常的におむつを使用している患者の陰部・臀部のスキントラブルは、褥瘡との判別も含め適切なスキンケアが必要です。
観察やケアのポイントをしっかり押さえておきましょう。

失禁によって引き起こされるスキントラブル

本来皮膚の表面は弱酸性の皮脂膜がバリア機能を発揮して、外部からの刺激から皮膚を守っているのだけれど、失禁によっておむつなどを使用している方の肛門周囲の皮膚は、蒸れや排泄物の付着によってバリア機能が低下してトラブルを起こしやすいのよね。

おむつに排尿後、放置された尿や消化酵素が多く含まれている水様便は、アルカリ性が強くて皮膚表面のバリア機能を低下させるので、細菌の繁殖や感染性皮膚炎などのトラブルも起こしやすくなるわけね。

ここで気をつけないといけないのが、汚れた皮膚のケアの方法。
石けんの洗浄作用が強すぎて皮脂を取りすぎてしまったり、石けんを泡立てて汚れを浮き上がらせて洗い流すべきところをガーゼなどでごしごしこすってしまったり。
1日に何回も石けん洗浄するなんてもってのほか!こんな間違ったケアによって肛門周囲の皮膚はさらに傷つきやすくなっていくのよね。

失禁そのものへの対応と同時に、肛門周囲の皮膚障害を予防するためのスキンケアが重視されるようになって、IAD(IncontinenceAssosiated Dermatitis:排泄物に関連する皮膚障害)という概念が注目を浴びているのよ。

IADから学ぶ皮膚の仕組み

I A Dは近年、盛んにその評価法や対応についての検討が重ねられているんだ。
l A Dが汗による皮膚障害などの湿潤病変と同義的に使用されていることに異を唱える研究者たちもいるし、今後さらに研究が進められていくだろうね。

国内の老年泌尿器科学会や、日本創傷・オストミー・失禁管理学会発表でも、おむつや尿とりパッドによる湿潤環境とスキントラブルの関連や、高齢者の失禁による皮膚の浸軟の有無と皮膚の生理機能の比較などが発表されているんだよ。

おむつ内の蒸れた環境で皮膚が水分過剰になると、角質がはがれやすくなって、一緒に保湿成分も溶け出してしまう、いわゆる浸軟の状態になるだろ?
すると角質内の組織の結合もゆるくなってしまうから、水分の蒸発を防げなくなってしまうわけ。
その上、ちょっとした摩擦にも弱く、拭き取り等で簡単に皮膚損傷を招いてしまうんだよ。
‥ってことは浸軟した皮膚は、見た目は湿っているけれど、実はドライスキンってことなのか。浸軟した皮膚にこそ保湿が必要なんだね。
ちょっと認識を間違ってたよ。お尻の周りの皮膚が浸軟していたら、水分の蒸発を防ぐ軟膏やクリームで守ってあげないといけないんだね。
きよちゃんの悩んでいた患者さん、スキントラブルを悪化させずに退院させてあげたいよね。
退院してから自宅でも洗浄・保湿・保護のスキンケアを継続していけるように、使いやすいスキンケア用品のリストを渡してあげようっと。

いいわね!
値段や使い方の解説も入れて、在宅用のハンドブック、作りましょ!

スキンケアのポイント

清 潔(洗浄・清拭)

・皮膚表面の弱酸性環境を保ち、保湿成分を含む洗浄(清拭)剤を
・洗浄剤を使って洗うのは1日に1回まで!
・皮膚はこすらずやさしく洗う
・拭き取りは押さえ拭き。こすらない!

保 湿

・角質層内の水分の蒸発を防ぎ、皮膚のコンディションを保つ

保 護

・皮脂膜の代用となる、撰水性のあるクリーム、オイル、被膜剤などを塗布して皮膚を保護する
・浸軟予防および排泄物の化学的刺激から皮膚を守る
・傷その物をカバーするには皮膚保護材を貼ることも有効

■監修:小林 郁美 皮膚・排泄ケア認定看護師(上尾中央総合病院 看護部 褥瘡管理科)

参考:真田弘美、飯坂真司 監訳:国際ガイドライン、褥瘡の予防:有病率および発生率について、コンセンサスドキュメント,2009

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