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関東甲信越Venous Forum

第1回関東甲信越Venous Forum開催

投稿日:2017.02.01

第1回関東甲信越Venous Forum開催

会  期:2016年11月13日

開  場:大手町ファーストスクエア
カンファレンスEASTタワー2F Room B/C

担当幹事:お茶の水血管外科クリニック 広川雅之先生
近年、静脈疾患の診療の進歩は目覚ましく、下肢静脈瘤の治療法も低侵襲化し入院から外来診療へとシフトしつつあります。
診断や術式の選択も大きく変化している一方、静脈学の普及・啓蒙が課題として挙がっています。
若手の医師やコメディカルスタッフの学びたいという欲求に対して、十分な学びの場が身近にないという声に応えるべく、日本静脈学会の地方会として関東甲信越Venous Forumが設立されました。

記念すべき第1回のテーマは「静脈学へのいざない」。
静脈疾患の診療や検査法などの基本から最新の情報に加え、企業による関連製品の展示や圧迫療法の実演もあり、多彩なプログラムが企画されました。

ここでは、コメディカルセッション「圧迫療法の実際」(座長:東京医科大学心臓血管外科 松原忍先生)の各発表内容をもとに、圧迫療法を行う際の工夫や気を付けるべきポイントなどを紹介します。

発表内容要旨

1.当院における血管内治療後の圧迫方法について

            お茶の水血管外科クリニック 下川 千佐子 氏
1日平均10件の日帰り手術を行っており、医師は術後すぐに次の手術に入るため、術後の処置はすべて看護師が行っている。

血管内治療後の不適切な圧迫は、水疱トラブルが圧倒的に多い。以前、枕子として厚みが少なく吸収の良い材質で肌に優しいものとして生理用ナプキンを選択したところ、表面材に使用されているメッシュにより小さな水疱が多発した。

現在は、圧迫範囲全体にワセリンをむらなく塗布(5-10g程度)し、弾性包帯を巻く部分にはシングルパットを使用、そのほかの部位には枕子をあてて筒状包帯を使用している。
弾性包帯の上に弾性ストッキングをはく際は、補助具も利用するが、高齢で手の力が弱い、リューマチで手首や手指の関節痛・関節の変形などがある、肥満など体型的問題がある、などにより着脱が困難な場合は、低圧のものを使用することもある。

術後1-2日目の来院時に創部の消毒と弾性ストッキングの着脱指導を行い、出血防止目的で下腿の瘤切部位のみ弾性包帯を巻き、弾性ストッキングを着用。
弾性包帯は、帰宅後自分で外し、術後1か月間は弾性ストッキングのみの着用となる。
大腿部のサポーターは、痛みやツッパリ感などの違和感がある時のみ着用するよう説明し、当院から貸し出している(1週間程度)。

2.当院の圧迫療法の実際

               銀座七丁目クリニック 菱田 鮎美 氏
2011年5月開院、2016年10月にレーザー治療実施7000件を達成した。

術後24時間は、軟膏を塗布しアンダーラップを巻いてから弾性包帯を巻き、弾性ストッキングを着用。その後1週間は弾性ストッキングのみ日中着用する。
レーザー治療後の圧迫療法の目的は、止血、深部静脈血栓症予防、血栓性静脈炎の予防である。
圧迫療法後の接触性皮膚炎、水疱形成、神経障害などの合併症対策について述べる。
・軟膏塗布
アンダーラップによる、発赤やかゆみの予防に、白色ワセリンとリンデロンクリームを混ぜたものを使用。
発赤・かゆみが出現した際は、ステロイド剤を処方。
・アンダーラップ
皮膚と弾性包帯の摩擦による接触性皮膚炎予防のため使用するが、発赤や水疱の形成に注意。
・弾性包帯
止血、深部静脈血栓症予防、血栓性静脈炎の予防。

<弾性包帯による合併症と対処法>
①包帯の圧迫や摩擦による前脛部の痛み、引きつれ感、発赤。 ⇒前脛部にガーゼをはさむ。症状が強い場合は包帯を巻き直す。

②包帯と皮膚の摩擦による、水疱、発赤。 ⇒膝周囲はアンダーラップを少し厚めに巻く。 包帯は患者が適度にひざを屈曲しやすいよう締めすぎない。

③腓骨骨頭圧迫による骨神経麻痺 ⇒しびれ感や感覚鈍麻、立位時のドロップフットを確認し、疑わしいはまき直す。

④膝の屈曲困難や起立性低血圧によるふらつき・転倒 ⇒初診時に術後のイメージができるようオリエンテーションを行う。

下肢全体に包帯を巻くため、術後初めての歩行は高齢者でなくても注意が必要。

3.静脈うっ滞性皮膚炎・潰瘍に対する圧迫療法の実際

           横浜南病院 心臓血管外科外来 家田 道代 氏
うっ滞性皮膚炎は、適切な処置をしないと潰瘍へと重症化し、悪化を繰り返してなかなか改善しないため、圧迫療法が重要。
重症例では30-40mmhg以上の圧迫が必要だが、弾性ストッキングは履きづらさが増すため、補助具の使用も指導する。

<弾性ストッキングをはきやすくする工夫>

①滑りを良くする:フットスリップやイージースライダーなど
②摩擦を利用する:ゴム手袋やグリップシートなど
③補助具を利用する:ストッキングをセットするカトラーなど
④患者の状況に合わせた柔軟な対応:弱い圧のストッキングを二重にはく、低圧のものに変える、大きいサイズの物を選ぶなど

4.当院における圧迫療法の実際

                    立川病院  伊東 和美 氏
急性期の総合病院で地域の基幹病院としての役割をもつ当院のリンパ浮腫外来では、医師・看護師が緩和ケアも専門としているため、がん患者(当外来通院患者の9割はがん患者で、約半数は治療中)のセルフケア指導を中心に行っている。

圧迫療法実施者には主婦が多く、ただでさえ多忙な朝の時間に今迄より早く起きることや弾性着衣の見た目など、これまでの生活パターンや価値観を変更せざるを得ない苦悩を非常に多く抱えていることを理解する必要がある。

我々はリンパ浮腫を全人的苦痛の一つとしてとらえ、浮腫があることで生活上に生じしている支障や、その方の生活背景・価値観などを重視しながらリンパ浮腫ケアの目標を設定している。
生活の中で継続できることを念頭に置いて、ケアの選択を考えている。
<診察前の病状の確認>
・病状の進行はないか

・主治医からどのような説明を受けどのように理解されているか

・浮腫を悪化させる他の要因はないか

・抗がん剤による末梢神経障害やその他の支障がリンパ浮腫ケアに支障をきたしていないか ⇒ケアの選択・変更をするうえで重要

急性期病院の限られた時間での診療のため、浮腫の強い患者は専門的な病院を紹介することもある。
がん患者の場合、亡くなる1カ月前まではの他疾患に比べADLが保たれていることが多いので、日常的な動作を妨げない圧迫方法や、患者の希望する生活スタイルが守られる圧迫保護法を選択していく必要がある。

5.リンパ浮腫患者に対する圧迫療法の進め方

慶応義塾大学病院リハビリテーション科 理学療法室 佐野 由布子 氏
リンパ浮腫とは、リンパ節やリンパ管系が何らかの理由で圧迫・狭窄・閉塞されたために毛細血管から漏れでたリンパ液が組織の隙間に過剰にたまった状態であり、圧迫療法は「リンパ浮腫診療ガイドライン2014」おいて上肢・下肢ともに非常に重要とされている。

浮腫を改善する集中的な治療には弾性包帯、悪化を防止・維持するためには弾性着衣を用いている。
国際リンパ学会によるリンパ浮腫の重症度分類ステージ1の可逆性の浮腫の場合は弾性着衣、ステージ2の非可逆性また皮膚が固くなるような浮腫の場合は弾性包帯による多層包帯法を指導している。

当科では集中的治療目的の、弾性包帯による多層包帯法が中心である。
指導のポイントとしては、一定の圧力(40-60mmhgの強圧)で巻くということになっておるが、患者にとっては非常に難しい。
浮腫軽減効果が高まる長時間装着の指導も難しい。

そこで当院の指導は、2段階に分けるようにしている。
まず使用物品を少なくした比較的シンプルな多層包帯法を伝え、継続可能化の評価をする。その際、患者の背景や生活スタイル、セルフケア能力も十分評価する必要があり、長時間連日継続的な圧迫が可能かを判断していく。
全体的な浮腫軽減が認められたら、部分的な圧迫資材を使って部位別の浮腫に個別対応を追加しながらし、理想的な下肢形状を目指して指導している。

ナースの視点

静脈・リンパ浮腫疾患の基本である圧迫療法は、患者の苦痛を増大させる可能性もあります。
正しく患者の不快感なく継続することが必要なため、その効果と患者の生活や価値観のバランスをとりながら指導をしていく上で、看護師の視点は欠かせないと感じました。

特に、力の弱い高齢者やリューマチなどで指に力が入らない患者、コシ・ひざが痛くてストッキングをはく姿勢が取れないなど、個別の状態に適した療法、物品、補助具の選択が、圧迫療法の効果に影響を与えるともいえます。

在宅では家族や訪問看護師の介入、院内では他科や他部門との協力・連携も必要であることが、紹介された症例からも示されました。
圧迫療法の重要性と正しい実施法の指導、個々の患者に適切な物品の紹介など、弾性ストッキングコンダクターの役割がますます高まっていくことでしょう。

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