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ナースプラクティショナーまでの道第2回

連載コラム「ナースプラクティショナーまでの道 ~看護師人生中間地点~」 第2回

投稿日:2011.06.30

第2回:後ろ向き人生“冬眠”からの目覚め

入職後1年で、命に関わるこんなにも責任の重い仕事は怖くてできないと逃げるように結婚退職した。結婚後4年が経過し、思い切って家を建てることにしたが、当時若かった元夫の収入だけではローンを組めなかった。


「奥さんが看護師をするならお金を貸しましょう」と住宅会社からも銀行からも看護師に復職を勧められたことが看護職に戻った動機であり、非常に不純だったと今も思っている。


そして、住宅ローンの返済期間である25年間は看護師を続ける必要があり、どうせ仕事をするなら私の苦手な心電図に関係する循環器にしよう、看護師である限りどこの診療科でも役立つであろうと考えた。


無事に循環器内科の診療所に就職したが、正看護師は退職寸前の師長さんと半日のパートさんだけで、正職員はベテランの准看護師さんだけだった。


准看護師さんから教わる診療所ナースの日々がびくびくしながら始まった。まず驚いたことは、そこの准看護師さんは医学的知識を豊富に持っていたことだ。


特に心電図に関しては医師の診察時には十分なデータが揃うように、診察前に胸部症状や定期検査の有無などを確認し、必要なときには心電図をとり、かつ波形も解読できるスーパー准看護師さんだった。


私はその診療所で先生や准看護師さんに一から心電図を教えていただいた。当時の医療界では、cureは医師の役割で、看護師が口を挟むことではないという印象があった。


しかし、私は日々の診療補助業務を行う中で患者さんの治療や検査に関して医師のオーダーを予測して準備したり、医師のオーダーが間違っていないかなどの確認や患者の訴えや症状を医師がどのようにアセスメントしたのかと診療録の記事を確認したり、診察の短い時間に病態や薬の説明をわかりやすく行う患者教育を間近でみることで、長年冬眠中だった私の知識欲はどんどん刺激されていった。


診療所では医師一人で多くの患者を診察するので、診療を効率よく進めるには診療補助の看護師の知識と判断は重要なポイントとなる。


ここでは心筋梗塞後などの糖尿病大血管合併症の患者も多く、新規インスリン導入患者の自己注射指導を行う機会もあり、ここで経験できた糖尿病患者への検査計画の立案や治療計画と評価および患者教育が、次に就職した病院で糖尿病を担当するきっかけになるとは思いもしなかった。


この診療所では3年半勤務したが、その間に心電図の苦手意識は随分解消され、心電図の解析が興味深かった想い出が今も残っている。


この心電図に対するイメージの変化は非常に大切で、大学院の循環器疾患の講義は非常に興味深く受講でき、NPになった今でも心電図の解析に自信はなくても苦手意識もない。


勉強し続ければ解析する力は徐々にはついてくれるであろうと信じている。


この診療所での3年半で、私は人の身体と症状・検査・治療などをもっと知りたいと看護師人生の再スタートにエンジンをかけてもらった。


そして、長男が小学校に上がるタイミングで「次は患者のベッドサイドで“がん看護”をしたい!」とこの診療所を退職した。


看護学生時代から、卒業に必要な最低出席日数と成績で卒業し、看護師をしたくなくて主婦になるなどずっとネガティブで“逃げの人生”を歩んできた私が、ようやく長い冬眠から目覚めて行動を開始した。


しかし、私が就職したい病院は当時看護師を募集しておらず、面接さえも断られたにも関わらず


「是非私を雇ってください!雇ったことを病院が後悔しないように、患者さんのために、病院のために一生懸命働きます!」


というような内容を手紙にしたためて図々しくアピールした結果、3ヶ月後に中途採用で入職できた。


この大胆な言葉が、次の病院で楽な方に逃げたくなったときに「総師長さんが手紙に書いたことを覚えているかもしれない」と私自身を奮い立たせてくれたことを思いだす。


最近の就職難では就職希望者の自己アピールは珍しくもないが、売り手市場の看護師では当時珍しいアピールで、職場の人に


「こんな時期に募集があったの?」と聞かれ「いえ、雇ってくださいって事務長や総師長に言いました」というといつもびっくりされていた。


当時の総師長さんはもうとっくに退職されているが、私を雇ってよかったと思っているか尋ねてみたいものである。そして、この病院で私の看護師人生に大きな影響を与えてくれた先輩たちに出会うことになる。

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