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患者・同僚・管理者に好かれるデキるナースになるシリーズ第6回

その他投稿日時-(2017-04-21)ナースマガジン

        これからのナースに求められるケアの質とは ~効率的で効果的な質の高い医療的ケアを知る~
        第6回 カテーテル感染症 対策のポイント
     ~ワンバッグタイプTPN用輸液の導入によるトータルコストの軽減~

TPN実施時のカテーテル感染リスクを軽減することは、患者の栄養状態の安定につながるだけでなく、医療費の削減およびナースの業務負荷の軽減、ひいては看護ケアの質的向上を促進します。今回は、医療法人社団 兼誠会 杉安病院をお訪ねし、各地の学会・学術講演会にも登壇されている薬局長 久保山恵理子先生に、カテーテル感染症対策のポイントを伺いました。

-ワンバッグタイプTPN用輸液の導入前は、どのような状況でしたか?

●従来のTPN実施状況
 微量元素を含有しないTPN用輸液と、微量元素製剤を使用していました。薬剤師がTPN用輸液と微量元素製剤の2種類をピックアップし、微量元素製剤を、患者の名前ラベルと一緒にTPN用製剤の外装に貼り付けて、払い出しを行っていました。また、クリーベンチ等はないため、混合調製は看護師が病棟で実施していました。

●課題となっていた点
 当院では3病棟129床のうち、各病棟に常時12~13人はTPNを実施している患者がいます。従来までのTPN用輸液は交換直前での混合調製が必要だったため、1日のうちトータル1時間程度、混合調製を担当する看護師が煩雑な作業にかかりきりになっていました。また、CLABSI感染が疑われる症状が発生した際には、血液検査や尿検査、胸部レントゲンなどの諸検査に、病棟全体が追われがちでした。
 何より課題だったのは、TPNの安全かつ安定的な継続使用です。輸液感染によるTPN抜去の頻度を減らすことが、患者の栄養状態の安定につながるからです。 この課題を解決するため手指衛生の徹底やTPN用キット製剤への薬剤混注を極力減らし側管投与を推奨するなどの取り組みとともに、微量元素入りワンバックタイプTPN用輸液であるエルネオパを採用し、病棟での混合調製機会の最小化を目標に取り組んできました。

-ワンバッグタイプTPN用輸液の導入で、どのような変化がありましたか?

1.調剤・看護現場の業務負担軽減と、看護ケアの質的向上
 まず薬局では、ワンバッグタイプTPN用輸液の導入直後から、抗生物質の払い出し量が目に見えて減少しました。また、TPN用輸液と微量元素製剤の2種類をピックアップし取り揃えるという作業がなくなったことで、注射剤の払い出しに要する時間を、1日あたり20~30分程度短縮することができました。
 看護現場からは、大幅な時間短縮につながったとの報告を受けています。
 たとえば、従来の混合調製作業は
 1)作業台を消毒する
 2)患者の氏名を確認後、TPN用輸液の外装をはずす
 3)微量元素製剤のアンプルを割る
 4)微量元素製剤を注射器で吸い上げ、TPN用輸液に注入する
 5)両手で輸液バッグを揉み込み、充分に混和する
 6)作業に使用したエタノール綿・シリンジ・注射器・ガウン・マスク・手袋・帽子などの消耗品を廃棄処理する
 以上のような一連の煩雑な作業となっていましたが、ワンバッグタイプTPN用輸液はあらかじめ微量元素製剤が内蔵されているため、以下の2ステップで作業が終了します。
 1)患者の氏名を確認後、TPN用輸液の外装をはずす
 2)輸液バッグの所定箇所を両手で押し、バッグ内の4室を混合させる
 従来は1日あたりトータル約1時間ほどかかっていた作業が、わずか十数分へと短縮できました。
 さらに、CLABSI発症数が大幅に減少したことで、症状への対応、採血オーダリングや検査室への送り出しといった付帯業務の負担も大きく軽減。慌ただしかった病棟全体にゆとりが生まれ、その分、ベッドサイドケアの充実や環境整備に取り組めるようになったと聞いています。
 患者ひとりひとりのニーズに応えられるような細かなケアや、チームを組んでの週3回の環境ラウンドを実施することなど一歩踏み込んだケアに時間を費やせるようになってきているそうです。
 病棟業務に余裕ができたため、新人ナースの教育とフォローを今まで以上に手厚く行えるようになり、人材の育成・定着にも良い影響が出ています。

2.患者の栄養状態の向上
 CLABSI発症によるカテーテル抜去の頻度が下がり、TPN継続率が上がったことで、患者の栄養状態の安定につながりました。そのため、褥瘡の治癒率にも改善が見られています。
 看護師が患者を観察する際に「衰弱している」と感じることが少なくなったそうです。これらの変化が、患者ご自身はもちろんのこと、ご家族の安心と満足度の向上にもつながっています。

3.トータルコストの削減
 CLABSI発症によりCVポートの抜去・再埋め込みが必要となった場合、当院では一時的に転院していただき、他院で抜去・再埋め込み手術を行っていただいています。その間は、ベッドを空けておかねばなりません。さらに、その間、当院は保険請求は一切できません。
 また、検査に用いる採血スピッツ・検尿コップ・培養セット、治療に用いる生食・抗生物質・解熱剤・ヘパリンロックなども、CLABSIが発症する都度に必要となります。
 病棟での混合調製作業には、TPN用輸液・微量元素製剤はもちろんですが、エタノール綿・シリンジ・注射器・ガウン・マスク・手袋・帽子など、日々多くの消耗品も使用していました。
 調剤・看護現場の業務負担低減につきましては先に触れました通り、計り知れない時間的コストの削減につながっていることは言うまでもありません。
 ワンバッグタイプTPN用輸液の導入により、抗生物質使用量の減少をはじめとした様々な面でのコスト削減・経営改善が実現していると、当院の経営陣も高く評価しています。

-TPN用輸液の切り替えにおいて、苦労された点や工夫された点は?

ワンバッグタイプTPN用輸液は、従来のTPN用輸液に比べると高額ですので、切り替え導入の承認を得るまでには多少の時間がかかりました。
  メーカーさんの話をまず薬局内で充分に検討したのち院内勉強会を行い、感染対策の面や、抗生物質使用量などの面から費用対効果を概算。薬事委員会で説明し、まずワンバッグタイプTPN用輸液と、従来のTPN用輸液の「併用」からスタートしました。
  「実際に使い比べてみると違いがわかる」と言いますが、まったくその通りで、看護現場から「混合調製による業務負担と感染リスクが明らかに減った」と強い支持を得ました。さらに薬局でも、抗生物質の払い出し量が減少傾向にあることを併用直後から確認することができました。
  一斉の全面切り替えはなかなか難しいものであるだけに、まずは併用して実際に比較し、現場の支持を得ることで全面導入を実現しました。

-ワンバッグタイプTPN用輸液の導入により、今後どのようなメリットが見込まれますか?

 ワンバッグタイプTPN用輸液は混合調製作業を必要とせず、一度開通しても7日間その品質を維持できるため、医療機関以外の場所でも継続的に使用できるメリットがあります。そのため、今後は患者に選んでいただける選択肢が広がっていくと思います。
 たとえば、軽症かつCVポートを留置している患者なら、1週間分のワンバッグタイプTPN用輸液を退院処方して退院していただくこともできます。
 さらに看護現場からは、在宅医療にワンバッグタイプTPN用輸液を活用していきたいとの声も出ています。患者のご家族といった在宅ケアにあたる方が、レクチャーを受ければ比較的簡単に扱えることも、ワンバッグタイプTPN用輸液の大きな特徴のひとつです。訪問看護に携わる看護師が訪問時にまとめてTPN用輸液を届け、患者とご家族自身で管理・施行することが可能です。
 在宅医療を含めた地域医療を担う病院として、入院療養以外の幅広い選択肢を、患者に提供していけることと思います。

 現在、TPNの混合調製は看護師が実施するところもあれば、薬剤師が実施するところも増えてきました。
 医療は24時間、多職種との連携の上に成り立っていますが、業務改善をする場合、3つの方向性があります。

①    人手を増やして業務の量を減らす
②    その業務をやらない、あるいは他職種 他部門へお願いする 
③    業務の生産性をあげる

 今回のカテーテル感染症対策は、多忙な現場で②③に着目したか改善法です。
 このように多忙な現場で改善を考える場合、忙しいから人手を増やすではなく、他部門と連携して改善を考えることも必要です。
 また、改善のインパクトは時間的視点、コスト的視点から考えて評価をするといいでしょう。

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