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ナースマガジン特別座談会「aging in placeを叶えるための看護の役割」

その他投稿日時-(2017-11-17)ナースマガジン

少子高齢化により医療・看護の制度改革が進められ、地域包括ケアの需要が高まっています。
この度、宇都宮宏子先生をファシリテータに据え、訪問看護師と病院ナースとの意見交換という形(訪問看護師:川村幸子さん、退院支援看護師:髙橋京子さん、病棟看護師:三枝由理子さん)で、医療現場での役割、現在抱えている問題点、今後の課題などについて語っていただきました。

退院支援が必要かどうか
早い時期から見極める


宇都宮 はじめに、これまで皆さんがどのように退院支援に取り組んできたのかを教えてください。

髙橋 当院で看護職が退院支援に関わり始めた平成19年から退院支援を担当していて、今年で10年目になります。
最初は「在宅療養支援室」という名称で、病棟から依頼されて初めて調整を始めるような受け身の状態でした。平成23年から「患者支援・医療連携センター」となり、PFM(※1)の仕組みができて、地域連携に関わる多職種のスタッフが同室で業務を行うようになりました。
現在、私は退院調整専従看護師として、家に帰るのが困難な事例の支援に力を入れています。

三枝 1年ほど前に育児休暇から復職した際、患者支援センターに配属されました。
今年からは病棟勤務になりましたが、病棟でもなるべく早期に退院支援を開始しようと、取り組み始めました。治療による体の変化などを考慮して、退院後の生活がイメージできるようにするのが私たちの役割です。

川村 のぞみの花クリニックは、がんの患者さんを中心とした在宅緩和ケアを行っています。医療を家庭に持ち込むのではなく、生活を基盤とした医療を提供することを目指しています。当院と連携している訪問看護ステーションのスタッフともカンファレンスを通じて相談・協力し合いながら地域を支えています。

※1 PFM(Patient Flow Management)入院前から入院予定患者の状況をアセスメントして把握し、適切な病床管理及び提供、適切な時期での退院を支援するためのシステム。

宇都宮 柏という地域ならではの特徴はありますか。

髙橋 当院は診療科が多く、救急救命センターや難病相談・支援センターがあるほか、がん診療拠点病院でもあります。
そのため、我孫子、松戸、流山など隣接する市から来院される患者さんも多く、退院支援についても調整する自治体が多いのが特徴です。
また、柏市には訪問看護ステーションが20ヵ所以上もあり、『柏地域医療連携センター』に相談もでき、訪問診療に力を入れている先生もいるなど、他の地域に比べて恵まれていると感じます。

宇都宮 何か問題点などはありますか。

髙橋 救急の患者さんが多いなか、高度な治療を受けた後、生活できるまでの支援が難しいことがあります。回復期の病院でリハビリを受けるにも、ベッド数に限りがあり、タイミングよく受け入れてもらえなければ、待機が必要です。

三枝 最初は全科、全年齢の患者さんが対象なので不安でした。でも、1年間やってみて、看護の基本は変わらないということがわかってきました。訪問看護をよく知らないスタッフもいるので、見て感じて知るために昨年は訪問看護ステーションに協力していただいて、体験研修を行いました。

髙橋 3年ほど前から、すべての入院患者さんに面談を行っています。
そのおかげで、退院支援が必要かどうかスクリーニングされて見出せるようになりました。救急患者さんも多く、昨年1年間の退院支援・退院調整に関する集計をしたところ、19.9%が「退院支援あり」でした。
アセスメントが大事なので、『退院支援・退院調整実施患者動向』というシートを活用し、どの患者さんに支援が必要か、一目でわかるようにしています。病棟にいる患者さんに何が必要か、進捗状況を確認しながら、先のことを考えています。

三枝 私がいる病棟は救急車で搬送されてくる重症の患者さんが多いので、支援が必要な人の割合はもっと高いかと思います。交通事故などで、脳や多発外傷がある場合、一瞬にしてADLが下がってしまいます。精神疾患をもつ人などは、長期にわたる療養が必要です。

宇都宮 入院が決まったときから、患者さんや家族が退院後の生活をイメージできているかが大切ですね。

髙橋 退院支援の有無の判断について、不安だという声もあり、患者支援センターでは、ケースカンファレンスで話し合っています。みんなでディスカッションした結果であれば、個人の負担も減ります。また、患者支援センターのスタッフで病棟担当を決めてラウンドし、「患者支援センターとして、このような理由で判断しました」と病棟の管理者にも伝えています。

三枝 退院支援の有無は、迷うこともあります。みんなで話し合うと、それぞれの経験から具体的な意見が出てきて、参考になります。

患者さんや家族に
語ってもらうことから


宇都宮 最近、訪問看護の現場で変わったと思うことはありますか。

川村 以前は、退院後に訪問すると「無理やり退院させられた」「帰れと言われた」という人が多かったんです。最近は、病院の退院調整部門で患者さんと話し合って、意見もよく聞いてから退院するようになり、いろんな意味でスムーズですね。
病院と在宅との違いも理解してくれているので、私たちも受け入れてもらいやすくなりました。特に予後が短い方の場合、自宅に帰ってからすぐ亡くなったとしても、「帰れてよかった」と受け止めてくれることが多いです。

宇都宮 不安はあっても、家で嬉しそうにしている患者さんの姿を見れば、家族の気持ちも変わりますよね。

川村 在宅導入前に、家族面談を行っているのですが、グリーフケアに繋がる家族ケアの一環として捉えているので、2時間半くらいかけてじっくり話を聞きます。
「これまでの経過を話していただけますか」と問いかけると、涙ながらに色々な思いを語られます。他にも家族を看取った経験や、死生観なども確認し最期はどこで過ごしたいと思っているかも聞きます。
まずは、胸の内を十分に語っていただくことがいちばん大事だと思っています。

宇都宮 グリーフケアは、亡くなってからのものではないんですよね。

川村 私が担当しているのは、がん患者さんなので、これからどう生きたいか、どんな最期を迎えたいかなど、きちんと話を聞きながら、ケアしたいと考えています。

宇都宮 地域包括ケアを進めていくうえで、何ができていて、何が足りないのか。病院と自宅で関わるスタッフみんなで話し合う必要がありますよね。

川村 以前、訪問をお願いしていた訪問看護ステーションの方に、末期がんの患者さんとどう関わればいいか分からないと言われてしまったことがありました。最近は、ようやく連携がうまくいくようになって、看取りまでチームで頑張ることができるようになりました。

宇都宮 がん患者さんは期間が短いので、あれこれできないこともありますね。

川村 柏市には医療介護連携システム(※2)という「情報共有」と「コミュニケーション」をサポートしてくれるツールがあります。そこで各専門職が共有・交換した情報を活かすことによって、地域で暮らす患者さんに質の高いサービスを提供できるのです。
症状はどうか、どんなことに困っているのか、患者や家族だけでなく、関わっているスタッフ自身もどう思っているのかなどを把握するのに役立っています。

宇都宮 ある地域で、多職種のスタッフがグループメールをつくって、退院後の患者さんの様子をみんなが見られるようにしたケースがありました。誰かがスルーしてしまっても、大事な場面だと気づいた誰かが、助言できるなどのメリットもあります。

※2 柏市が導入している医療介護連携システム(カナミックネットワーク )
株式会社カナミックネットワークが提供する、看護・介護などの専門職が効率的に連携を行うための情報共有システム。クラウドサービスで、職種・法人の垣根を越えた情報共有を容易に。

一般の人の意識を変え
在宅医療を広めたい


宇都宮 大規模な病院から在宅医療への移行は流れができてきていますが、医院やクリニックからの移行には医師への負担が大きいという点で、難しさがあると感じます。一方、理解のある先生もいるので、医師会が交代で行っている夜間・休日の診療のように、交代で時間外の緊急往診に対応するようにすれば、負担感は減るのではないでしょうか。
コーディネート能力のある看護師やケアマネジャーなどが当番制で相談を行っている自治体もあります。
外来や入院で悩んでいる患者さんに対して、現場の看護師やケアマネジャーのサポートがあると安心感に繋がると思います。ボランティアでは続きませんから、自治体の支援も必要ですね。

川村 病棟の看護師が「この患者さんは家に帰れないよね」と思うのと同じように、私たち訪問看護側も「今の状態だと家にいられないよね」とすぐに思わないことですかね。その前に何ができるかをチームで相談して、少し踏ん張れればいいのかなと。
実際、独居でも定期巡回随時対応サービスを入れて、最期まで自宅で過ごせたケースもあります。

宇都宮 自宅という選択肢があることを理解してほしいですね。医療チーム、本人、家族も含めた取り組みが大事かなと感じています。患者さんの願いを受け止めて、みんなが腹をくくってサポートすることも必要かもしれません。

三枝 在宅医療を知らないため、「家で看取るなんてとんでもない」と思っている一般の人は今でも少なくありません。一般の人の意識を変えていかなければと思います。

宇都宮 病気になる前から、老いを感じたときから相談できる、かかりつけの医師、看護師をもち、自分のこととして考えてほしいです。今後、看護の立場から啓発活動のようなものもできたらと考えています。

川村 在宅医療を経験した患者さんの家族は「こういう医療があると知らなかった」と口を揃えて言います。
自宅で家族を看取られたご遺族から、親族や近所の方に広めてくださることも多いです。

宇都宮 最後にみなさんの今後の目標などをお聞かせください。

髙橋 地域で暮らし続けることができるよう在宅医療について、しっかり話し伝えていきたいですね。患者さんがどんな生活を思い描いているかきちんと聞いて、医師やスタッフとも共有して、治療の決定ができるような関わりをめざしたいです。

三枝 救急患者さんは意識障害があって、早期に退院後のことを考えるのが難しいこともあります。現実を徐々に受け入れて、今後どうしたいか、どうありたいかを理解してもらい、その人にとって一番いいゴールを見据えて関わっていきたいですね。

川村 緩和ケアを行っていることもあり、トータルペインの視点は常にもっていたいです。がんの患者さんに限らず、健康を損ねてしまった方や家族には、さまざまな辛さがあります。どうしたら安楽に過ごせるか、どうしたら生活を重視した医療が展開できるかを考えていきたいです。
また、看護職には、忙しい中でも業務と対人援助の違いを理解してほしいので、そのサポートにも回れるようになりたいです。

宇都宮 エンドオブライフに近い人たちがどう生ききるか、これからは患者・家族にとって一番身近な看護師がリーダーシップを取りながら、サポートしていくべきではないでしょうか。みなさんの活躍を期待しています。本日は、ありがとうございました。

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