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訪問看護ステーション訪問レポート第12回

第12回訪問看護ステーション訪問レポート 訪問看護ステーションみけ

投稿日:2018.02.15

今回お訪ねした「訪問看護ステーションみけ」は、東京都墨田区で活動する2003年開設の機能強化型訪問看護ステーション。
有限会社ふれすか 代表取締役でもある椎名美恵子さんに、訪問看護の予防的な利用などについて、お話をうかがいました。

利用者さんには要支援の方も多くいます

当ステーションの利用者さんは、月に約200名、訪問件数ですと延べ1700件ほどです。要支援の方の割合が多く、全国平均の約1.5倍(全国11%、当ステーション17%)となっています。
「訪問看護は医療処置だけのためでなく、予防的にも使う」という理念を理解いただき、要支援段階の患者さんにもそのメリットが伝わっているからだと思います。
2003年の開設以降、当ステーションでは24時間電話対応が可能な緊急時訪問看護加算の態勢を整えております。何かあればステーションに電話をして下さるため、看護師が対応することで救急車の要請はだいぶ減りました。
さらに看護師が病状悪化に早期対応することで、入退院を繰り返していた方の入院件数も減らすことができました。

長期的な視野からのアプローチ

訪問看護を介護予防的に使うことの必要性は、開設当初から行政やケアマネさんに話していましたが、最初はなかなか理解していただけませんでした。
「褥瘡・経管栄養などの医療処置が必要になったら、訪問看護に入ってもらう。要支援の方はヘルパーだけで良い」というのが一般的な認識でしたから。
しかし、長期的に見れば早い段階から訪問看護を入れることが重要なのは明白です。重症化してからの医療機関利用や救急車の出動要請は、医療費が膨大になる要因です。
行政やケアマネ側への説得は大変でしたが、区役所等に出向き、行政の担当者とも会合を重ねた結果、「重症化を避けるためには予防が重要」ということに対し、だんだん理解を示してして下さるようになったのです。

緊急時訪問看護が少ないわけ

要支援段階の方から当ステーションに緊急電話がかかってきても、「経口補水液を飲んでもらう」「換気をしてもらう」など、普段指導していることや療養上のケアで解決することが多く、医療処置には至らないことが殆どです。
まれに入院が必要な方もいらっしゃいますが、重症化する前に治療することで、3〜4日の短期入院で済むことが多いです。

24時間電話受付対応というと夜間の緊急電話を想像されるかもしれませんが、実際には電話はほとんどありません。私たちは、夜、電話がかかってくるのは、昼間の看護が悪いためと考えています。人は本来、夜は寝るようにできているのですから、「夜間熱が出そうな場合には病状予測をし、夜間の事前対応をしておく」というように、利用者さんが安心して夜間を過ごせるよう昼間のうちに解決しなければいけません。
訪問看護師はそのように対処するので、夜間緊急訪問もほとんどありません。週末の場合も同じで、金曜日までにいかに予防的対処や、週末に何か起きた時の対策を立てておくかが重要です。

在宅での医療は生活の一部

利用者さんへの指導で気をつけていることがあります。それはお孫さんの世話や家事など、日常生活の中で病気の治療や重症化予防をするということです。

病院に入院している患者さんは24時間医療の中で生活し、病院の対応に不満があっても退院というゴールがあるので我慢しています。入院という限られた期間なので、医者や看護師の言う通りにするのです。しかし、在宅での医療は生活の中のほんの一部のことです。医療が優先されることで、利用者さんのQOLが落ちることはあってはなりません。
利用者さんの希望する社会生活が営めるように、医療はその一部として入っていくようにと、いつも考えています。
例えば、「インシュリンを1日4回打つ」と指導されて退院してくる患者さんがいます。しかし、これは3食しっかり食べていることが前提です。高齢者の場合、病院では3食摂っていても、家では2食になってしまうことがあります。そういうケースでは、4回打つことには意味がありません。それぞれの生活リズムに合わせて、主治医に相談して2回打ちを指導したり、1回打ちで良いインシュリンに変更するなど、普段の生活に支障のでない形で医療を組み込む必要があります。

信頼関係を築く過程が大切

医療者側が押し付け的な接し方をすると、利用者さんに「もう看護師は訪問に来なくていい」と言われてしまいます。薬はどんどん進歩しているし、診断技術も上がってきています。しかし、どんなに良い薬や正確な診断があっても、地域で暮らす方々が受け入れてくれなければ意味がありません。
また、誰かに言われてすることは、継続しません。そこで私たちが心がけているのは、利用者さんご自身に「自分の体のことや重症化・介護予防」に関心を持っていただくことです。
ご自身が関心を持つようになると、 薬も自発的に飲むようになります。リハビリや介護予防も、看護師の訪問日だけではなく、利用者さん自らが毎日継続していただけるようになることが大切なのです。
とは言え、ご自身の体に関心を持ってもらうことは、すぐにはできないものです。
最初に私たちが「あなたの体のことを大切に思っている、一緒に体のことを考えたい」と伝え、何度も話します。すると、「私も体のことを考えよう」という気持ちになってくるものです。
ただし、1回や2回の訪問では、そこまでには至らないものです。特に疾患を抱えている方の場合、人と会うことすら嫌なこともあります。そういう場合は、まずは笑顔で家のドアを開けてもらえる関係を築くことから始まります。

早期離職を防ぎ、頼られるナースを多く育てる

看護師の不足や早期離職は多くのステーションの悩みですが、当ステーションではスタッフの育成に力を入れており、離職者はとても少ないです。
まず面接後、当ステーションでの見学実習を通して、私たちの理念を理解していただきます。また、他のステーションの見学もお勧めして、それでも当ステーションで働きたいと思う方を採用しています。
理念を共有できる方に入職していただかないと、早期離職の可能性も高く、それは双方にとってのダメージです。

入職後の新人研修にも時間をかけ、最初の1か月半は同行訪問をしてもらいます。制度や法律のことを学ぶオリエンテーション、ナースプラザでの30日間の研修、並行してEラーニングも行います。教育には時間をかけて、長い目で見て、「みけの看護師は頼りになる」と評判になるための研修を実施しています。

「病院完結から地域完結へ」の主体は?

今後の日本の医療は、病院完結から地域完結へ移行していきます。しかし、医療従事者には使い慣れた「地域包括ケア」「看取り」という言葉も、地域住民には知られていません。「QOD」などと言ったところで、住民の意識はそこに至っていません。
まずは医療・介護に関わる人がその自覚を持つことが重要です。
その上で、地域包括ケアなら「住み慣れた町で最後まで自分らしく生きる方法をみんなで考える仕組み」といった伝え方をするなどして、医療を受ける主体である地域住民に理解いただけるように、私たち医療従事者が繰り返し対話を続けていくことが重要だと考えます。

訪問看護ステーションみけ

看護師:常勤12 名、非常勤4 名
理学療法士:10 名 作業療法士:2 名
介護支援専門員:8 名(看護師が兼務)事務:3 名

〒131-0033東京都墨田区向島2-10-5 第五安井ビル1階
TEL:03-3626-2317
FAX:03-3626-2318

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