ナースマガジン ナースマガジン

ナースマガジン

ナースマガジン

WOCN座談会「在宅療養患者に多発するスキントラブルを予防する」

その他投稿日時-(2018-02-23)ナースマガジン

在宅療養者患者の70%以上がスキントラブルを抱えているといわれています。その中でも最も多いものの一つに真菌感染症があげられます。
今回、むらた日帰り外科手術・WOCクリニックの熊谷英子先生の声かけに基づき、在宅療養を支援するスキントラプル予防のためのスキンケアのあり方について3人の皮膚・排泄ケア認定看護師にお集まりいただきました。

※写真左から
盛岡赤十字病院
小田切 宏恵 先生
進行役・臨床写真提供
むらた日帰り外科手術・
WOCクリニック
熊谷 英子 先生
セントケア東北株式会社
セントケア訪問看護ステーション仙台
小野 友美 先生
高崎健康福祉大学
訪問看護ステーション
岡部 美保 先生

_・_・_・_・_・_・_
2017年8月5日
ホテルJALシティ仙台

知識や技術に差がある在宅のスキンケア

熊谷 私は長年大学病院に勤務し、訪問看護師向けの研修や公開講座を開くなど、院内だけでなく院外の皮膚・排泄ケアのレベルアップに努めてきたつもりでした。
ところが、いざ、在宅に出てみると被覆材をガムテープで留めていたり、褥瘡を固い保冷剤で冷やすなどショッキングな現状を目にすることに…。
スキンケアに対する知識も不足し、技術や製品の情報も入りにくいことがよくわかりました。

岡部 同感です。私は新規のステーションを対象に小規模で草の根的な研修を頻回に行っています。同行訪問し、洗浄の様子を見てみると、洗浄剤の泡の「たっぷり」のイメージが人によって異なり、たいてい泡の量が少ないことがよくわかりました。

熊谷 職種ごとにスキンケアに対する認識、知識、技術にはかなりの違いがありますね。
愛護的な洗浄と保湿を浸透させるにはどうしたらよいのでしょう?

小野 やはり実践が大事です。サービス担当者会議でかかわったスタッフに、実際にスキンケアの手順を見てもらうと、その後の徹底と継続につながっている手応えが得られます。

驚くほどたくさんのスキントラブルを抱えている

熊谷 在宅療養者には、どのようなスキントラブルが多いと思いますか?

岡部 悪性腫瘍や神経難病の療養者が多く、病状の進行で食事が摂れなくなると低栄養や脱水症状を招き、皮膚の状態が変化します。
褥瘡や褥瘡に至る前の発赤や掻痒感、ドライスキン、湿疹や真菌感染症などが多いですね。
原因は失禁によるおむつ使用や長時間の座位姿勢など、様々な生活習慣が影響していることもあります。

小野 日中、畳で寝ていることで軽度の褥瘡を発症する人がいるなど、在宅療養者の環境は、訪問してみるまで想像できないことが多いですよね。
特に気になるのが乾燥です。
乾燥に気づいても、トラブルが起きてからの対処になりがちです。スキンテア、浮腫も気になりますね。

小田切 医療や介護の手が届いていない在宅の高齢者の褥瘡が悪化して救急で運ばれてくることもあります。高齢者の皮膚は脆弱なのでスキントラブルが重症化しやすいということを日々実感しています。

高齢者のQOLの低下やトラブルを招く真菌感染症

熊谷 先ほど真菌感染症の話題が出ましたが、在宅療養者の皮膚疾患の実態調査をしたところ、訪問看護利用者の71%がスキントラブルを抱え、その中で最も多いのが真菌感染症という結果が出ています(図1)。
これについてどう思いますか?

一同 現状の通りだと思います。

熊谷 真菌感染症は在宅療養患者、特に高齢者のQOLの低下や重大なトラブルに結びつくことがあります。家族や訪問看護師も危機的な状態にさらされているので、その意味でも予防的スキンケアは大切になりますね。

小田切 真菌感染症を起こす足、爪、陰部、腋下は他入に見せにくい部位ですよね。短い訪問の時間で主治医に「足の爪が…」とは言い出しにくいと思います。スマートフォンで撮影した画像でもいいので、どんどん「オーブン」にしてもらえるといいですね。

岡部 傷の治りが悪い患者がひどい水虫だったということ、ありませんか?

一同 よくあります!

小野 1日中靴下を履いている患者も多いので、水虫のリスクは高いですよね。

熊谷 足・爪白癬の疫学調査で無症候群患者のうち、5人に1人が水虫だったという調査結果があります〔※1)。
まずは1日1回きちんと洗浄することが基本です。家族の予防も大切になります。

(※1)渡辺ら:本邦における足・爪白癬の疫学調査成績日皮会誌:111〔14)、2101‐2112,2001

岡部 おむつをしている患者は、カンジダ感染症を疑ってスキンケアを徹底しています。皮膚のしわやたるみ、乳房の下部、放射線の照射部も必ずチエックしたいポイントです。
脇の下の皮膚がジュクジュクして浸出液が出ている人もいます。

小野  脊椎損傷や拘縮のある患者も洗浄が十分にできないのでハイリスクです。

熊谷 おむつの中に手を入れてしまい、その手で体を触って感染を広げているといったこともあります。 

小田切   認知症の人でも、心地よければおむつの中は、いじりません。かゆみはせん妄と関係があるといわれているので対処していきたいポイントになります。

熊谷 PEGの造設部位も注意しなくてはなりませんし、ストーマの患者では、ストーマ周囲に生じた難治性のスキントラブルの原因が真菌感染症の場合もあります〔図2)。
鱗屑を伴う紅斑が出ている状態〔図3)でも適切なスキンケアで症状はほとんど改善されます。蜂窩織炎にまで発展しないと真菌感染症対策の重要さを理解いただけていない現状を少しでも改善しなくてはなりません

コミュニケーションの工夫で
  他職種との連携がスムーズに


熊谷 予防的スキンケアを継続していくためには他職種との連携が重要ですね。

岡部 他職種の人と初対面でチームを組んだとき、看護師とは共通言語が異なることに気づきました。そのようなことはありますか?

小田切 岩手県でも、病院のWOCナースは、いそがしそうで電話するのに勇気がいるというのが課題になっていました。
そこで指示書の書式を必要な医療行為・訪問時のケア・緊急時の対応だけを記載するように一斉に簡略化しました。すると結果的に勉強会に対するイメージまで変わり、出席率が上がったんです。
「困ったらメールください!」と呼びかける工夫も地域連携の大事な要素と考えています。

熊谷 どうしても医療者に通じる言葉を選択してしまう傾向にありますね。

小田切 重症度の高い患者に対しては、「退院時指導」、「退院後訪問指導」が当たリ前になりつつあるので、できるだけ主治医にも経過を画像で見てもらえるように心がけています。
プロセスを共有することで、在宅療養に移行しても皮膚に意識が向けられると思うのです。こうした取り組みで指の切断をまぬがれた患者がいたのは、大きな成果だと考えています

スキンケア用品の選び方や使い方を説明する役割も

熊谷 スキンケアの3原則「洗浄・保湿・保護」が在宅療養者を取り巻く、家族、在宅医療者、介護職者などにも1日も早く浸透し、定着し、継続してもらうための体制づくりが今後の大きな課題ですね。

岡部 スキンケアは皮膚・排泄ケアのべースになります。

熊谷 在宅のスキンケアの質を向上させるには、私たちが適切な洗浄剤やスキンケア用品についてもアドバイスすることが重要です。

小田切 スキントラブルには弱酸牲で、抗菌などに配慮された洗浄剤を用います。保湿剤は低刺激でセラミドなどの保湿成分が配合されたものを選択します。

小野 退院時にスキンケア用品を持ち帰り、そのまま「置物」になっていることもあります。改めて療養環境や経済状況を考慮しながら、スキントラブルを予防する必要性をお伝えすると、続けて実践していただけることが多いです。

岡部 私たちが使っている洗浄剤やスキンケア用品がほしいと言われることも多く、製品の特徴や経済性を考慮して説明する責任を感じています。もちろん価格も重要だとは思いますが、長期にわたって健やかな皮膚が維持できればリーズナブルです。
これらを実感することで患者の意識も少しずつ変わってきていると思います。

小田切 症状に応じて市販のスキンケア用品をすすめる場合、使用期間の目安を「目標」として伝えるようにしています。症状や病態、経済状況を総合的に判断し、アセスメントカも身についてくるのでおすすめです。

熊谷 みなさんのお話を伺い、在宅療養患者に多発するスキントラブルを予防するためには、予防的なスキンケアが重要であることが、より明確になりました。 そのためには私たちWOCナースと訪問看護師の連携をより強化し、家族・在宅医療者、介護職者が一体となって、在宅療養者を支援していく必要があるということを再確認できました。
みなさん、一緒にがんばりましょう。

一同 がんばりましょう!

協力/持田ヘルスケア株式会社


皮膚・排泄ケア 関係記事