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ナースマガジン在宅ケアセミナーレポート

投稿日:2018.04.16

本誌20号の特別座談会でも取り上げた、在宅療養支援をテーマとするセミナーを開催した。
企画者である宇都宮宏子氏の基調講演に続き、4人のパネリストがそれぞれの立場から在宅療養支援における看護師の役割を語り、ディスカッションは大いに盛り上がった。(編集部まとめ)
基調講演

aging in place(地域で暮らし続ける)を実現するために 〜連携から協働、そして統合へ〜

在宅ケア移行支援研究所宇都宮宏子オフィス 所長/聖路加看護大学
臨床教授 宇都宮 宏子 氏
「退院支援は人生の再構築を支援すること」の言葉で知られる宇都宮氏。
「入院医療によって遮断されがちな人生を、本人の希望する生き方を希望する場所で最終章まで歩むことができるよう、病態予測に基づき一歩前を歩く道先案内人が看護師の役割。
医師だけに任せないで、看護師を中心としたチームで関わっていますか?」
の声が会場に響きわたる。

事例紹介や法制度にも触れながら、退院調整から退院支援、退院支援から在宅療養支援へと進化し、これからは「在宅療養コーディネート」として在宅療養の継続を支援すること、そして事例を地域の多職種で振り返り、成功体験の蓄積を共有し、連携を協働・統合へと高め、「すべての人のaging in placeの実現を目指しましょう」と呼びかけた。
講演1

望みを叶えるための退院支援のあり方について 〜在宅医療と連携・早期介入によるスムーズな退院支援

武蔵野赤十字病院医療連携センター
副センター長 齋藤 恭子 氏
急性期病院の退院支援担当看護師の立場から、在宅医療につなぐ心得として
①早期介入
②退院前カンファレンスの実施
③後方支援との情報共有
をあげ、「取組のきっかけは退院加算ありきでしたが、算定要件を退院支援のツールとして活用していくにつれ院内のシステムとして定着し、病棟看護師の退院支援能力の向上をもたらしました」と報告。
講演2

様々なニーズにこたえる訪問看護の視点からみた 在宅療養の在り方と事例

医療法人社団隆靖会 墨田中央訪問看護ステーション
所長・ケアマネジャー 廣瀬 祐子 氏
スペシャリスト同士が繋がり、ジエネラリストとしての地域ネットワークを構築して、在宅医療を支えていくことができた訪問看護事例を紹介。
地域の資源を知り連携していくことは、ブツ切りの情報をつなげ問題点を明らかにし、地域で問題を解決できる力につながる、と述べた。
講演3

多様化する療養者のニーズにこたえる 保険外サービスができる在宅療養支援の在り方

株式会社スーパーナース ブライベート看護部
 部長 川幡 民絵 氏
公的保険と異なり、看護サービスを利用する場所や時間の制約を受けないプライベート訪問看護は、①居宅看護、②院内看護、③外出付き添い看護に対応可能。

老老介護が増える中、家族のレスパイト目的や、自分のペースで医療的ケアの手技を習得したい家族の利用事例などを紹介。

講演4

在宅医療連携拠点事業における 活動状況と展望

横浜市神奈川区医師会 訪問看護ステーション
 所長 木村 光代 氏
地域包括ケアシステムにおける医療と介護の連携強化において、医療的アセスメントカを持ち多職種とのパイプ役でもある訪問看護師が連携拠点を担うメリットを強調した。
今後の展望として、次世代を育てながら地域の医療・介護資源を活かす、質を保証した在宅医療への移行、市民啓発事業の実施などを挙げた。
ディスカッション

呼ばれなくてもこちらから! 〜在宅側からのアプローチ〜

平成28年の診療報酬改定では、退院調整加算が退院支援加算に変わり、体制強化をして入院早期からチームで支援することや、地域と連携・協働して退院支援を行うことが求められている。
本人の希望の把握とその実現のために必要な情報を、在宅のサポートスタッフと共有する場として、退院前カンファレンスの質が一層問われることになる。

在宅側からの積極的なアプローチの例として、基幹病院の外来に在宅医療連携拠点出張所の窓ロを作って相談を受けている区もある横浜市や、病棟力ンファレンスに地域の訪問看護ステーションが毎週定期的にアドバイザーとして参加している大阪市北地域での取り組みが紹介された。
訪問看護師やケアマネジャーが病院に出向き、在宅療養移行コーディネートを病院医療者と協働していくという積極的なアプローチが始まっている。
一方、疾患ごとに複数科にかかっていると、電子カルテで患者情報を共有できるにもかかわらず、自身の専門領域以外には関心を持たない医師もいるそうだ。対する廣瀬氏の作戦は”書く”こと。
「医師宛に手紙を書く、医師が目を通すノートに書いて家族に見せるように言う、薬剤師経由で伝わるようにお薬手帳にもコメントを書く。医師からこういわれたら家族はこう答えよう、というシナリオも考えます」と発言。
また、一元化されていない多剤処方は、「退院調整ナースが関わり、早く訪問可能な医師やかかりつけ医へ移行することで、薬剤管理も適切に対応してもらえる印象を持っています」と齋藤氏が語った。

入退院時における ケアマネジャーのあるべき連携プロセス

平成28年度厚生労働省保険健康増進等事業で報告された、「入退院時におけるケアマネジャーのあるべき連携プロセス」※を資料に添付し、退院時の状況に合わせたケアプランの変更や要介護度の変更申請をするためには、従来の病院からの退院連絡では遅い、と現場の課題を語る宇都宮氏。
入院7日以内に、大まかな情報を病院側から提供し、ケアマネジャーは病院側と協働して課題分析を行い、ケアプラン(たたき台)を退院前カンファレンス等で提示していく。
それが退院後の生活を意識し、医療ニーズ、ケアニーズが反映されているかを多職種で検討してプランを完成させる。
さらに本人の希望に沿っていたかを振り返るために、退院ーカ月後に病院ヘフィードパックすることもケアマネジャーの役割、と説明。
入退院によって遮断されるのは、患者の人生だけでなく、患者を支える側が把握しておきたい患者情報でもある。保険適用の訪問看護ステーションが見つかるまで、療養生活に溝を作らないために利用されることもあるプライベート訪問看護の立場から「公費・自費に関わらず、訪問看護を利用する在宅療養は、ケアマネジャーからの正確な患者情報によってスムーズにスタートが切れると感じます」と、川幡氏も在宅療養の質を左右するケアマネジャーの責務を強調した。

※新規利用者ではなく、すでにケアマネジャーがケアプランを作成して在宅療養を行っていたケースについて。

みんないずれは通る道

訪問看護を入れるタイミングも、患者の生活、身体状況に影響を与える。
「デイサービスのお迎え時間をずらすので、30分状態チェックに入ってほしい、訪問看護を入れると生活が落ち着くから、とケアマネジャーから依頼されることもあります。
早期介入で小さな変化に対処すれば入院が必要になるほど身体状況は悪化しない、という実体験があるのかもしれません。
しかし利用者は、具合が悪くなってから使うのが訪問看護だと思っており、『自分はそこまで悪くないから不要』と言われてしまう場合もあります」と木村氏は残念がる。
病状説明と今後の予測を利用者が理解できるように伝えることも、今後の課題だ。
最後に宇都宮氏が「外来や入退院という節目で病院ナースが在宅療養コーディネートに関わることや、暮らしの場で早い時期から訪問看護が伴走することで、療養者自身が、自分の病気や老いとの向き合い方や医療の受け方にも主体的になるという成果があることが、まだまだ知られていないですね。
医療やケアの専門職だけではなく、住民や行政関係者への発信・啓発にもっと積極的に取り組んでいきましょう。
私も皆さんも、いずれは必ず通る道。自分ごと、私ごととして考え、地域づくりに看護の力を発揮したいですね」
と締めくくり、本セミナーを終了した。

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