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セミナー・イベントレポート 第15回日本褥瘡学会関東甲信越地方会学術集会

褥瘡ケア投稿日時-(2018-08-24)ナースの星編集部

第15回日本褥瘡学会関東甲信越地方会学術集会

日時:平成30年7月27日~28日   
会場:大宮ソニックシティ
会長:前川 武雄  先生(自治医科大学皮膚科学講座)

28日の学術集会の前日に行われたプレコングレスセミナーを紹介する。


  褥瘡に関わる全ての人へのメッセージ

●過去・現在・そして未来へ紡ぐ創傷診療

 安部 正敏 先生(札幌皮膚科クリニック)

江戸時代には創傷治療薬として当時の名外科医・華岡青洲が考案した紫雲膏が使われていた。
紫根(シコン)の主成分であるシコニンは抗炎症作用、肉芽形成作用、抗菌作用などが報告されている。漢方薬に創傷治癒効果があるかを調べるために、八味地黄丸、黄連解毒湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など10種類の漢方薬について創傷治癒効果を調べた。その結果、桂枝茯苓丸は増殖因子と同様のシグナル伝達系を活性化することにより、線維芽細胞に作用することが示唆された。

外用薬のメリットとしては、
①配合薬と基剤による2つの作用が期待できる。
②配合薬によりより積極的な治療が可能となる。
③保険診療の面で有利。
があげられる。
一方、被覆材の特徴は、
①閉塞性ドレッシング、機材の働きがほとんどで、配合薬の働きに期待することが難しい。
②保険診療面でやや不利。
などである。
急性創傷にはドレッシング材、慢性創傷には外用薬という使い分けが考えられる。

創傷治癒において作用する時期は、増殖因子によって異なる。増殖因子を用いた褥瘡治療のストラテジーとして、
①バイオテクノロジーの発達でリコンビナント蛋白が多量に得られるようになり、負の作用を持つ増殖因子を制御することも可能。
②遺伝子レベルで作用する治療法も夢ではない。
③複数の増殖因子を同時に使い、相乗・相加的に効果を得ることが可能。
などが考えられる。

●知っておいたほうが面白いエビデンスや承認についての雑学

 市岡 滋 先生(埼玉医科大学形成外科)


科学的根拠に基づく医療(EBM)が全盛の今日、RCT、システマチックレビュー、メタアナリシスが行われ、エビデンスを重視したガイドラインに基づく医療が行われるようになった。

中世には修道士による瀉血療法が行われていたが、ローマ教皇の禁止令により床屋の仕事となった。瀉血の習慣はアメリカにも伝わったが、1799年、合衆国大統領ジョージ・ワシントンは瀉血が原因で命を落とした。
瀉血懐疑派ウイリアム・コルベットと推奨派ベンジャミン・ラッシュにより医療過誤裁判が行われたが、コルベットは敗訴し賠償金を払うことになった。瀉血については、後にスコットランド人軍医のアレクサンダー・ハミルトンが半島戦争従軍中に兵士を2群に分けて調査を行った結果、死亡数の差は瀉血が原因であることを明らかにした。

現在、最も信頼できる臨床試験はランダム化プラセボ対照二重盲検試験とされている。スコットランド人医師、アーチー・コクランは1979年、意味あるRCTのすべてについて批判的評価(critical review)を作成し、その内容を定期的に更新する作業を組織的に行うべきと提唱し、後にシステマチックレビューが集積されたコクランライブラリーが誕生した。エビデンスの集大成とされている。

新薬の治験が厳密になった発端としてサリドマイド薬害事件がある。世界で数千~1万人、わが国で約1000人の被害者がいるが、米国では安全性に疑問をもったFDA審査官フランシス・ケルシ―が申請を保留したため被害者は出なかった。わが国ではその後、スモン事件、薬害エイズ事件をへて2004年、PMDA設立に至った。

*PMDA(Pharmacenticals and Medical Devices Agency);独立行政法人医薬品医療機器総合機構
医薬品・医療機器・再生医療等製品等の「承認審査」及び「安全対策」、並びに「健康被害救済」の3つの業務を行う厚生労働省所管の日本唯一の組織。

●超高齢化社会における褥瘡対策の将来を考える

 真田  弘美 先生

(東京大学大学院 老年看護・創傷看護
 グローバルナーシングリサーチセンター)

平成30年医療・介護保険同時改定が行われ、褥瘡ハイリスク患者ケア加算では、対象患者に「皮膚に密着させる医療関連機器長時間持続的な使用が必要であるもの」が追加された。また、入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価に「スキン・テア」が加えられた。
わが国の褥瘡有病率は、褥瘡対策未実施減算(2002)、褥瘡対策管理加算(2004)、褥瘡ハイリスク患者ケア加算(2006)、在宅患者訪問褥瘡管理指導料(2012)、などを経て大きく低下した。
今後、わが国は「高齢・多死社会」を迎える。医療機関や介護施設のベッド数は、今後大きく増える見込みはなく、在宅医療を支える地域で看取る体制の整備が早急に必要である。

超高齢者の褥瘡が今後、問題となる。超高齢者の褥瘡について、
①浮腫は褥瘡発生を予測するか。
②褥瘡発生率が持つ意味。
③褥瘡再発率を減らす方法。
④ポケットは切開するか。
の4点について検討した。
入院中の患者について多重ロジスティック回帰分析をした結果、浮腫は褥瘡発生の独立したリスク要因であることが示唆された。

ケネディ潰瘍(KTU)は1980年代に最初に明文化された。圧迫やずれに加えて、終末期の低循環・低酸素血症・多臓器不全による皮膚血流不全に伴って生じる「皮膚の脆弱性」に起因する防ぎきれない褥瘡、とされている。死の6週から2~3日前までに形成され、洋ナシ型、紫型、境界が不整形という特徴がある。米国のメディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)では、ケネディ潰瘍と確認された場合は、褥瘡とコードしてはいけないとされている。

わが国でのKTUを調査した結果、形状は線形、色は明瞭な紫・赤黒色の紫斑と紅斑の二重発赤、発症部位は腸骨部、大転子部、発生約1週間以内に死亡という特徴が明らかになった。

取材・執筆 ニュートリション・アルファ 西谷誠


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