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看護・介護 しゃべり場 在宅訪問編「在宅現場をイメージできるナースになる!」

今回は、12年にわたりALSの夫を在宅介護された吉田道子さんのお宅にお邪魔しました。看護学生時代に吉田家で在宅実習を受けた北村由紀・菅原紗矢佳両看護師、そして松浦和美訪問看護師にもお越しいただき、当時のお話を伺いました。
患者家族が安心して在宅療養できるためには、生活現場や介護者の思いを理解した支援が必要です。あなたは在宅介護の現場をイメージできますか?
(聞き手:西山順博先生 編集部まとめ)

難病ALSの夫を在宅介護

道子さんの夫、幸男さん(昭和6年3月生)が原因不明の体調不良をALSと診断されたのは、平成15年の12月(72歳)。

家族が呼ばれ、進行性の難病ALSであること、呼吸機能が弱っているのでいずれ人工呼吸器が必要になること、延命治療をすれば闘病が長期にわたるので道子さんも高齢であることをよく考えて今後のことを考えるように、と告知されました。
突然の厳しい宣告でしたが、病気の内容、状態をはっきり伝えてもらえたので、覚悟を決めて前向きに受け止めた道子さん。
幸男さんは平成16年4月に人工呼吸器、6月に胃痩カデーテルをつけ、7月末に退院。呼吸困難や誤嚥性肺炎の苦痛を取り除いて生きるための選択でした。
「そのおかげで12年間長生きできたのだから、どちらもつけて良かった」と道子さんは言います。
「平成27年10月9日に84歳で亡くなるまで、私にできるあらゆることをしました。突然、動くこと・食べること・話すこともできなくなった夫は、ロパクで『悔しい悔しい』と毎日嘆いていました。夫の心中を思えば、私は当たり前のことが当たり前にできる幸せに感謝こそすれ、介護の苦労など言えません。
長男家族や訪問サービスの方々にもお世話になりながら精いっぱいやり切ったので、悔いはありません」。

吉田家の在宅介護から学ぶ

幸男さんが難病を抱えながら家族の介護により自宅で生活している、という話は人づてに広がっていき、家族、看護学生、ケアマネジャー、現役看護師など多くの方が訪れました。
吉田夫妻は、見学でも研修でも快く受け入れていました。人工呼吸器をつけている幸男さんの状態に合わせ、家庭にあるものを工夫しながらテキパキと介護をしている道子さんの姿に、当時看護学生だったお二人は、
「病院では看護師が担っているケアを道子さんがほぼ一人でこなしていることに驚きました」(菅原さん)、「ポータブルの人工呼吸器を車椅子に積んで、散歩をしていた姿を思いだします」(北村さん)と、在宅介護の可能性を目の当たりにしたようです。
実際に訪問していた松浦さんは、「私の頃は在宅実習がなかったので、訪問看護に伺ってからが勉強だった」とふり返ります。
「呼吸器の音や測定数値がいつもと違うという相談を受け、その一言からトラブルを防げたこともありました。私たちにしたら正常値の範囲内ですし、1日に1回の訪問なので微妙な変化に気づきにくいのですが、道子さんはその些細な変化に気づきます。ずっと見ているってすごいことだなあと改めて感じました。道子さんは土ロ田幸男さん介護のプロでしたね。
そういう家族の力は在宅現場を訪れて初めて知りました。私も病院看護師だったら、幸男さんの状況での在宅介護は無理と言っていたかもしれません。まだまだ在宅現場を知らない病院のスタッフが『こんな状態で在宅介護は無理』と言っているかもしれません。在宅介護の希望を叶えられるよう、病院の看護師にももっと在宅介護の現場を知ってほしいと思います」と力を込めました。

家族×訪間看護の力を発揮するために

幸男さんの在宅介護は訪問看護と共にスタートしました。
「月曜から金曜まで朝一番(9時)に来てくれて、まず人工呼吸器の点検やフィルターの掃除、バイタルチェックをしてもらい、これで明日の朝まで大丈夫、と安心できました。夫の清拭、足浴、口腔ケアなども、看護師さんとの会話を楽しみながらやっていました。土日は電話対応でしたが、そこで解決することもあれば、すぐに来てくださって適切な処置をしていただいたこともありました。本当にお世話になりました」と今も感謝している道子さん。
そんなご家族を支える上で、訪問看護師として松浦さんが心がけていることは?
「在宅介護を担っているご家族は、日々の頑張りも『家族だから当たり前』と思われていることが多いので、言葉に出して伝え、ねぎらうようにしています。
また、ケアの方法を変える必要がある場合も、今までのご家族のやり方を尊重しつつ、受け入れてもらえるまで一緒に考え、焦らずに見守るようにしています」と、家族の思いの尊重をあげられました。
道子さんに、ご家族にとっての理想の看護師像を伺ってみると、「患者は心が不安なので、思いやりの気持ちとやさしい笑顔で心のケアも忘れない人。
訪問看護師は特に、患者の様子をしっかり看る洞察力と的確な処置のできる技術も大切でしょうね」とのことでした。
※今回の企画にあたり、お集まりいただいた皆様、ご協力いただいた市立大津市民病院、同訪問看護ステーション須原輝美所長に心からお礼申し上げます。

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