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専門家Q&A

MRSA創部感染患者への個室対応

投稿日:2013.03.05

ご質問

以前働いていた病院では、創部培養でMRSA陽性の場合、個室隔離はせず、スタンダードプリコーション+接触対策で対応していたのですが、今の病院では逆で必ず個室対応をするように決まっています。
創部感染の場合は、必ずといっていいほどガーゼ保護等行っているので、菌が拡散する可能性は低いと思うのですが、今の病院は『患者が触って菌を広める可能性が高い』という理由なのですが納得しがたいです。創部感染の場合に個室対応まで必要ですか?

専門家の見解

MRSAなどの多剤耐性菌の感染対策は、利用できる病床や標準予防策・経路別予防策の遵守状況、感染・保菌者の周囲への拡散リスクを考慮して決定します。
ご質問のように、創部からMRSAが検出されており、十分に被覆されている状態であれば、必ずしも個室隔離は必要ありません。基本的な感染対策の遵守を徹底することが重要で、個室隔離を行うことだけで伝播が防止できるという考え方は危険です。

MRSAなどの医療関連感染上問題となる病原体は、多くが「接触感染」の経路を取ります。これは、患者さんと医療従事者による「直接接触」と患者さんが接触する部位(周囲の環境や器材など)を介した「間接接触」があります。これらの感染伝播経路を考えると、創処置やケアを行う際には、手指衛生と手袋・エプロンなどの個人防護具を着用し、適切なタイミングで外すことが必要です。物品も個人使用とするか適切な処理を行うことでの共用が求められます。

また、MRSAが創部から検出されている患者さんはおそらくその他の部位でも保菌している可能性が高いと考えるのが妥当と思われますので、ベッド周囲や患者さんが頻回に接触する部位(ベッド柵・ナースコール・TV・リモコンなど)は十分清浄化しておく必要があります。さらに、患者さん自身にも手指衛生の方法やタイミングについて説明することも重要な対策でしょう。

このような対策を適切に行えるのであれば、必ずしも個室隔離は必要ありません。逆に、個室隔離をしていたとしても対策が不十分であれば、伝播の可能性が考えられます。

現在の手指衛生の遵守状況や創処置での感染対策が適切に行えているのかについて評価を行い、並行して検出している部位や量、必要とする処置・ケアの必要度から個室隔離を検討することが望ましいと考えます。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
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