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WOCナース座談会企画第2回

〔第2回〕在宅患者に対する処置のポイント

投稿日:2016.06.02

●退院患者に対して行うべき処置やケアの簡略化

溝上 退院後、在宅に移行した後では、当然のことながら病院内と同じような処置を行うことは難しくなります。したがって、創傷処置の簡略化を考えなくてはいけなくなりますが、どのような内容を勧めていますか。

加瀬 私は3つのポイントに重点を置いて勧めています。1.貼り替え回数を少なくすること、2.洗浄をしやすくすること、3.ケアの行程がシンプルであることです。

間宮 それと、4.二次損傷が起きないようにすることも挙げられるでしょうね。

●創傷管理において感染を疑った時のファーストチョイスの処置とは

溝上 この4つのポイントに沿ってケアの方法を考えるということですね。では、少し質問の方向を変えて、感染を疑ったときに行うファーストチョイスの処置の方法を教えてください。
松岡 やはり軟膏でしょうか。いわゆる外用薬だと思います。普通の感染の場合であれば、塗布して1週間後にさらに続けるかどうかの判断をします。創の状況を看ながら、軟膏を継続するか否かを決めます。外用薬による処置のまま退院してもらうこともありますね。

間宮 在宅を担う訪問看護の間では、創傷被覆材に関する情報がまだ乏しいのが実情です。創傷被覆材に関する技術や知識が浸透していない状況にあることから、外用薬とガーゼで毎日交換という、従来のやり方をチョイスすることになってしまいがちです。しかし、創傷被覆材を十分に使いこなせる訪問看護師もいます。その場合、患者さんが自宅に戻られたときのファーストチョイスとして創傷被覆材を使うことも情報提供していくべきと思います。

溝上 退院する患者はすでに感染制御ができているという前提で考えるので、在宅において頻繁に交換が必要な状況ではないということですね。だから、軟膏とガーゼによる処置がチョイスになるという側面もあるようです。軟膏とガーゼの管理による創傷治癒の方法にデメリットを感じたことはありますか?

加瀬 軟膏は落としにくく、創洗浄を十分に行えない点ですね。

松岡 あと、沁みたりすることも多く、苦労することがあります。

間宮 やはり、はがす際の二次損傷です。何度も交換しなければならないので。

丹波 外用ヨウ素製剤を使用すると、痛みを伴うケースがあります。少し経った頃から少しずつ痛みが出て、時間が経つとともに増していく感じです。
溝上 感染創に対しては、抗菌性を重視して外用薬をチョイスしているものの、みなさんジレンマを感じながら処置にあたっておられる面もあるようですね。一方で、近年は抗菌作用のある銀含有創傷被覆材というものも出てきていますが、評価はいかがですか。

松岡 傷の状況が停滞し、クリティカルコロナイゼーションに移行しそうな兆候があるときは、抗菌作用のある銀素材の創傷被覆材は有効だと思います。つまり、前駆症状が出たときに使用すると効果があると思います。感染の予防的な意味合いで使っていくと、より高い成果を得られる印象があります。

●抗菌性の高い創傷被覆材活用のメリット

溝上 そうすると抗菌作用がある創傷被覆材は、例えばクリティカルコロナイゼーションの少し手前の段階で使うことが有効ということですね。外用薬はケアを行う看護師のスキルにあまり左右されずに安全な処置ができるということで選ばれてきましたが、一方で外用薬使用時の弊害として、清潔が保てない、無駄に貼り替えの回数が増える、滲出液の量や臭いのコントロールなどの面で課題のある処置方法であるとの指摘もありました。そうした背景の中で、例えば抗菌効果の高い創傷被覆材が今後出てくるとしたら、大いに活用できるものなのでしょうか。いま多く使われている創傷被覆材の利点とはどのような部分だと感じますか。軟膏と比べて良い点について聞かせてください。
間宮 利点は多くあると思います。処置の手間としてシンプルに済む点は非常に助かります。何より、処置時間が短くて済むのは患者さんにとってもメリットが大きいですから。
加瀬 交換の回数が少なくて済みますから楽です。これは、処置される患者さんの側にとってもストレスが緩和され喜ばれる利点でしょう。
松岡 吸収力の高い創傷被覆材も増えており、吸収力の高いものは滲出液管理の困難な患者にも問題なく使えます。

溝上 シンプルな処置ができ、処置の回数も減らせる。手技の面でも特にテクニックは必要ないということですね。また今の創傷被覆材の主流は、剥がしやすくて皮膚にも優しく、高齢者の脆弱な皮膚に対して剥離刺激が少ないようです。高齢者の方自身が容易に貼り、剥がすこともできるんですね。だから安定した処置が可能です。そうした点を考えると創傷被覆材は、これからは在宅でも積極的に活用すべきということが言えると思います。抗菌作用の面でもより抗菌効果の高い創傷被覆材があれば、今後大いに期待できるということでしょうね。


松岡 そう思います。そして、あとは価格ですね。使えればどんどん使っていきたいのですが、どうしても続けて使うとなると価格面も重要な要素となっていきます。


溝上 たとえば、経済性を考えて安い製品を選んだものの、耐久性が低いために週に3回も替えないといけなくなって、結局高くついてしまうことは少なくないと思います。安易に価格だけに捉われず、良いものを選ぶことでトータルコストを低く抑えられるという事実を知らせていくことも重要でしょうね。今年は、創傷被覆材が高いというイメージを是非とも払拭したいですね。

●今回の記事で紹介された抗菌性創傷被覆材の紹介

メピレックス® Ag 承認番号 22500BZX00439000
メピレックス® Agは、皮膚に優しいセーフタック® テクノロジーに銀イオンの抗菌効果を加えたソフトシリコンフォームドレッシング。創傷のサイズに合わせてカットして使えます。
メンリッケヘルスケア社HP
メピレックス® ボーダーAg 承認番号 22700BZX00244000
滲出液を吸収し、銀イオンを放出する抗菌性の一体型フォームドレッシング。セーフタック®のシーリング効果によって滲出液の漏れを防ぎ、脆弱皮膚の患者様でも安心して使用できます。
メンリッケヘルスケア社HP

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