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看護・介護 しゃべり場

看護・介護 しゃべり場【施設編】

食事と薬の微妙な関係

神田 さおり さん 看護主任

当施設でも食にまつわる課題は多々あります。自分で食べたいもの、口に入りやすいものを摂り、体調の安定した生活を送れるように、という思いがまずあります。食べる機能は問題ないのに食べられないというケースでは、服用薬のチェックも重要なポイントです。
薬は吸収状態が悪ければ、薬効が期待できません。高血圧、パーキンソン病、認知症の薬や向精神薬などは、むしろ食べる際のマイナス要因になりえます。
本人の病状を見ながら、“薬の引き算”を医師に提案することもあり、服用を中止してから、再び食べられるようになった方もいらっしゃいます。経口薬からパッチタイプの薬に変更する、便秘には飲み薬ではなく座薬や浣腸で対応する、などのアプローチも検討します。
ただ、ご家族の中には「薬で命をつないでいる」と考え、減薬や中止を受け入れにくい方もいます。「先生からこういう指示が出ました」と、引き算の理由をわかりやすくお伝えし、それに対する家族の思いも確認してスタッフ間で共有することも大切だと思います。

食支援は足し算と引き算で

管理栄養士 佐藤 るり子 さん

当施設で提供している食形態は、常食のほか、やわらか食・ミキサー食があります。食形態のレベルは身体機能のレベルでもあり、消化吸収機能や嚥下機能などの低下に対応するため、消化しやすい、むせにくいなど、食事作りで配慮すべきポイントは少しずつ異なります。

さらに高齢者の栄養というと、巷には必要栄養量確保(足し算)の話題があふれていますが、本人の身体機能や意識レベルの程度によっては、あえて公式に当てはめた必要栄養量までの食事量を目標としないケースもあります。ケアする側の「栄養不足になってしまうから食べてほしい」という思いが先行するあまり、食事が本人に苦痛を与えてしまっては本末転倒です。
栄養ケアマネジメントに欠落しがちな視点が“引き算の食支援”ではないでしょうか。食事中や食後に次のようなサインが現れたら食事を見直し、必要に応じて食事量を減らす“引き算の食支援”も考慮してよいと考えます。
●疲れて目を閉じてしまう
●食べたものを口の中にためこむ
●誤 嚥
●嘔 吐
当施設では、介護スタッフからの報告を基にスタッフ間で検討し、本人の身体状況に合わせ、食事量を減らす、食事介助の時間は合わせて20~25分をめどに切り上げる、といった“引き算の食支援”を取り入れています。
限られた時間であるため、少量高栄養の栄養補助食品を追加したり、一口でも本人が味わいを楽しめるものを探す努力など“負担にならない程度の足し算の食支援”も忘れません。
食事にまつわる思い出が誰にとっても美味しく楽しかったものになるよう、足し算と引き算のバランスを考えた食支援を皆で追求していきたいと思います。

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