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ナースマガジン vol.34

新型コロナウイルス感染症~感染6か月後における抗ウイルス抗体保有および中和抗体保有調査に関する中間報告~2020年12月2日

投稿日:2021.02.02

現在HOTワードとして挙げられる、世界中に特殊災害をもたらした新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)。特に医療現場では、以前にも増して緊張感の高まる現場へと変異させた事象となっていることでしょう。
2020年12月2日、横浜市立大学学術院医学群の教授らよりCOVID-19抗体保有調査研究の中間報告が現地での記者会見に加えオンライン配信でも行われました。
横浜市立大学学術院医学群 左から
梁 明秀 教授(微生物学)、山中 竹春 教授(臨床統計学)、後藤 温 教授
(写真・資料提供:横浜市立大学広報室)

新たな一歩へ

 今回の調査の特徴として、日本最大規模の一般参加型であること、測定期間を6か月に揃え一定期間内での研究結果の算出に成功したこと、高性能の国産抗体検出機器(AIA-CL)を用いた一般の抗体検査に加えて、中和抗体検査で正確度の高い検出に成功したことが挙げられます。

※中和抗体:感染後、ウイルスが細胞へ侵入するのを阻害する役割を もち、再感染を防ぐ抗体を指します。

今回の調査研究から明らかになったこと

▶感染から6か月が経過した時点で、回復者のうち98%に中和抗体の保有が確 認された。重症度別に分類すると、中等症・重症の被験者の100%、軽症でも97%の中和抗体保有率が判明した。
▶重症度が高いほど中和抗体の値も高値を示すことが確認され、重症者については中和抗体の強さでLowを示す方は0%であった。

全自動免疫診断システムの特徴

▶4種類の抗体検出試薬で感度・特異度共に100%の全自動免疫診断システム(AIA-CL)の開発に成功した(いずれも発症13日以降の結果となる)。
▶上記診断システムを用い、同一検体の中で4種類の抗体検査(2種類のウイルス抗原に対するIgG、IgGを含めた全ての免疫グロブリン)の検出が15分で可能、1時間当たり最大240検体の解析が可能になった。

ワクチン開発への期待

 今回の研究結果から、重症化した患者の中和抗体価が高いことが明らかになった。ワクチン開発や今後の治療に重症患者の血清を用いることが示唆されるのか?という質問に対し「自然に獲得される免疫とワクチン接種による人工的な獲得免疫の効果は必ずしも同一の反応とは限らないため、今回の研究結果がワクチン開発に直結して関与するとは現時点では断言できない」としながらも、「抗体保有者は再感染のリスクは少ないと思われ、今後のワクチン 開発に示唆を与える研究結果と考えている」と山中教授は返答されました。多くの質疑内容がCOVID-19の予防や治癒に関連したものであったことから、全国民あるいは全世界が共通認識の中で過ごしていることを記者会見の現場から感じられました。
 COVID-19第一波の流行から約一年が過ぎようとしていますが、私自身昨夏まで感染患者と関わる現場に従事していたため、今回の会見を通して様々な思いが駆け巡りました。私がこの記事を書いている間も、きっと世界中では感染拡大によって多くの方が悲嘆に暮れ、一方で終息に向けてさまざまな研究が進められていることでしょう。その中で今回の大規模な調査研究は、今後のワクチン開発や治療方針への布石になったと思います。ワクチン開発など、感染拡大を防ぐための研究を進めてくださっている方々に感謝すると同時に、これまで感染の犠牲となってしまった方々の存在を大切に想い合える世界になれること、予想のつかない未来に明るい兆しの見える知らせとなることを願います。

(まとめ:編集者ナース 小貫奈津実)

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