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専門家Q&A

胃摘出後の禁飲食中の看護

ご質問

禁飲食なのに、ラクテックのみの点滴をしていた患者さんがいました。なぜ栄養剤となる点滴をしないのか、ラクテックのみの間の栄養はどうやって補っているのか、良かったら教えてください

専門家の見解

患者さんや担当医の考え方についての具体的な背景が分からないので一般論としてお答えします。


まず、絶飲食中のエネルギーですが、約半日は貯蔵しているグリコーゲンが糖に分解されて利用されます。
この時期をすぎると、筋タンパク分解による糖原性アミノ酸と脂肪分解によるグリセロールからの
グルコース合成(糖新生)でまかなわれるようになります。


 糖質代謝:キーワードでわかる臨床栄養
 http://www.nutri.co.jp/dic/ch3-2/


この筋タンパク分解を抑制するために1日最低でも100gのブドウ糖の投与が望ましいと
医師向けの栄養セミナー(TNT)では教えています。


しかし、最近、侵襲時の糖の投与量についての見直しが行われており、
過剰な糖の投与は高血糖や余分な糖が脂肪合成に回されるために肝臓への負担や二酸化炭素の産生増加をきたすために好ましくないといわれています。

侵襲はストレスホルモンなどが糖新生が活発化して内因性のエネルギー供給が増えるため
中心静脈栄養などによる外部からのエネルギー供給は基礎代謝量(BEE)を超えないようにするべきです。
こういった時期にどの程度の栄養投与をするべきかについてはまだ結論が出ていません。


最近はERASプロトコールを導入する病院が増えてきました。

 周術期の栄養管理②─ERASプロトコル: キーワードでわかる臨床栄養
 http://www.nutri.co.jp/dic/ch8-2/   ←是非ご一読下さい。


ERASプロトコルでは、手術後の回復促進に役立つ各種のケアをエビデンスに基づき統合的に導入することによって、
安全性と回復促進効果を強化した集学的リハビリテーションプログラムということを基本的なコンセプトとしています。
その中で、手術開始2時間前まで水や炭水化物を摂取することで術中や術後の血糖コントロールが良好になるという項目があります。

それを考えると術後にも1日100g程度の糖の投与はあったほうが良いのではと思いますが、
術後2日目ぐらいから水+炭水化物の摂取を開始することを考えると必要ないのかもしれません。

また、幽門側胃切除と胃全摘では経口摂取の再開時期が異なります。
さらにエネルギー代謝には術前の栄養状態や糖尿病の有無、肝機能、腎機能などが影響します。

そういった違いがあるので一概にラクテックでの術後管理の是非の判断はできません。
ただ、ラクテック単独で1日2000mLの輸液をすると260mEq(食塩で15g相当)とナトリウムの投与量が加療になるのではということが心配です。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
専門家Q&Aを通じて得た知識を職務に活かす場合、患者のの心身の状態が悪化した場合でも、当社は一切責任を負いません。
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