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専門家Q&A

胃ろう栄養剤の選択について

ご質問

現在、Mー8400ml×2の栄養剤を注入している利用者様ですが、入所してから朝の注入後、
必ず多量の水様便がオムツより漏れる程毎回見られています。  最初はとろみをつけ注入し対応して暫くは落ち着いていたのですが、ここ2ヶ月程前よりまた、水様便がでるようになりました。   次に栄養剤を人肌に温めてとろみをつけ注入するも状態変わらず。
主治医に相談してもM-8は下痢をしにくい栄養剤だからといい、変更の指示はなく、下痢止めの処方のみとなっています。そして、量を半分量にするよう指示がありました。
施設からは半固形の栄養剤の使用を提案したけど、濃度が高いとの理由で半量の指示でした。
今、施設で使っている栄養剤が、M-8,E7,アクトエールアクア,CZ-Hiの4種類となっています。
栄養剤の選択で水様便を落ち着かせることが出来るのであれば、何を選択すればいいか
教えていただきたいと思います。
宜しくお願い致します。

専門家の見解

水溶性の下痢でお困りとのこと。
大切なことは、まずその下痢が感染症でないのかということです。
便培養とCDチェックを行っていただき、否定してください。
 『PEG患者さんの難渋する下痢について』(第3回コラム)
⇒ http://www.nurse-star.jp/colum/detail/37
をご参照ください。

入所されてからの下痢とのことで栄養剤との相性が悪いことは考えられます。
この場合は、注入速度を遅くしても、量を半量にしても、温めても、とろみをつけても下痢は改善しません。
入所前はどのような栄養剤を使用されていたのでしょうか?過去に牛乳にて下痢をしたことがあったか否かの聞き取りは必須項目です。
乳糖不耐症の方はもともと乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が弱く、乳糖(牛乳100mlには約5g含まれている)をグルコースとガラクトースに分解することができず、吸収されないまま大腸内に到達し浸透圧が上昇し、水分が大腸内に引き込まれ下痢になります。乳糖不耐症の患者さんには乳糖の含まれない栄養剤を利用します。

M-8をご使用とのことですが、MA-8でしょうか?クリニコさんの製品を使っておられるようですが、MA-8にもいくつか種類があるようですが・・・。
ご使用いただいている4種類の中のCZ-HIは乳糖が入っていなかったと記憶しています。CZ-HIは食物繊維も豊富で、ビフィズス菌増殖因子である大豆オリゴ糖やミルクオリゴ糖が含有されています(メーカーに確認してください)。
乳糖不耐症が否定されれば、半固形状流動食はおすすめです。とろみをつけて注入されているとのことですが、その過程で感染症が起こることも危惧され、寒天での固形化の方がとろみ剤での固形化に比べ、加熱しますので衛生的であり、寒天使用にされても良いかもしれません。
ただ、手間がかかりますので、元々、固形化されているアクトエールアクアを使用されてはいかがでしょうか? MA8を800Kcalよりもアクトエールアクアを800Kcalの方が、ビタミンミネラルも充足されます。

いろいろなメーカーがいろいろとコンセプトをもって各種の経腸栄養剤を発売されておられ、日進月歩よりよいものに組成変更されています。貴施設ではクリニコさんの製品を多くお使いですので、まずは一度担当のクリニコさんに商品説明していただき、入荷コストのこともあり、現在の4種類で良いのか?それぞれの使い分けについて相談してはいかがでしょうか?

患者さんの年齢、ご病気の状況、摂食嚥下のグレード、栄養状態についてご質問には記載されていませんが、老化、病状悪化に伴い、どのような作戦を企てても経腸栄養管理がうまくいかないケースがでてきます。
今回ご質問の下痢に加え、唾液誤嚥が出現してきます。このような患者さんは、経腸栄養での栄養管理か困難者であり、十分な栄養を充足させる必要があるのであれば、経静脈栄養の適応ということになります。
終末期という意味で、患者さんの尊厳を重視し、栄養剤を減量していくことを検討する必要もあります。ただ、600Kcal/日以下になる場合は、生命維持に必要な栄養量ではありません。スタッフ・ご家族とカンファレンスを行い、方針を決定しなければいけません。また、下痢が長期にわたっているのであれば、電解質等のチェックも必須です。かなりの低ナトリウム血症になっていることが予測されます。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
専門家Q&Aを通じて得た知識を職務に活かす場合、患者のの心身の状態が悪化した場合でも、当社は一切責任を負いません。
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