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専門家Q&A

水痘対応時の対応+α

投稿日:2015.11.16

ご質問

定床116床(そのうち稼働しているのは100床)の旧重症心身障碍児者(現在は医療型障碍児入所と療養介護事業所)の病棟に勤務しています。50床ずつ別棟の病棟(A棟、B棟)が独立しています。A棟に9/18(1回目;13歳女性),10/7(2回目;8歳男児と18歳女性)、10/31(3回目;12歳女児)と断続的に水痘が発症しました。病棟の構造上の問題で個室隔離をすることが困難なため、医師の指示で1回目の発症の時点で、罹患者と、水痘の既往のない方と不明の方(幼少期からの入園のために未確認;11歳~57歳男女合計8名)には5日間、水痘の既往がなくかつ免疫不全の方(無ガンマグロブリン血症;6歳男児)に14日間にわたって、ゾビラックスの予防投与が行われました。2回目、3回目の発症の時点では、罹患者には5日間、免疫不全の方には14日間、同様薬が投与されました。
 また、A棟の中でもⓐ(18人程度)とⓑ(30人程度)に入園者が分かれて寝食や活動の場を別々に送っているのですが、今回の発症は3回ともにⓐの居室からのものでしたのでⓑに居住している方には内服の指示は全くありませんでした。実際に勤務している職員はA棟の中でもⓐとⓑ別々で、入園者同士の接触も9/18以降全くありませんでした。
 前置きが長くなりましたが、今回相談させていただきたいことが 4点あります。

1.11/5の時点でⓑで居住している方(C様;11歳男児)が手術目的でD病院(急性期を中心とする総合病院)転院しました。(C様は水痘の既往はなく抗体価は不明です)C様と水痘発症者の接触の件でD病院の感染管理看護師より問い合わせがあり、回答したところⓐとⓑは直接の接触はないが、空調は一緒なのでC様は接触者として対応するという返答がありました。D病院では個室隔離できても陰圧個室でない場合は接触者として対応しているということです。
感染管理の立場から考えるとⓐと同様にⓑに居住している方たちにもゾビラックスの予防投与は必要なのでしょうか?

2.居室ⓐの水痘既往のある家族に対して、ある時には面会可能で外出も出来たのに、ある時にはできないと統一したかかわりができなかったために、不平不満の訴えがあったようです。(実際は抗体価の検査前で面会が可能だった時期と検査中のため保留状態だったので面会ができなかった現状があったようです)家族の方への対応として、窓口はどこで行うのが理想ですか?

3.当園は入園期間が10年以上の方が入園者の半数以上を占めています。入園者によって面会者の人数や頻度もまちまちです。そんな中で、今回のような伝染性の感染症が発症した場合の家族の方へのインフォメーションはどの程度の範囲で、どの程度の内容が必要なのでしょうか。(ちなみに園長からは、罹患した方と予防投与した方の家族に簡単な状況説明でよいというお話を伺っています)

4.これからの季節ではインフルエンザの発症の可能性が大きく、今回のようなケースをふまえた今後の対応として力を入れなければならない点を教えてください。

長々と質問をさせていただきましたが、よろしくお願いします。

専門家の見解

1.感染管理の立場から考えるとⓐと同様にⓑに居住している方たちにもゾビラックスの予防投与は必要なのでしょうか?
→水痘の感染経路が、空気感染であることを考慮すると、同じ棟の方も対象とすることは妥当な判断と思います。実際には、すべての人が感染するかは不明ですが、抗体保有状況を把握できてないことや発症した場合のリスクなど総合的に検討の上、施設ごとに決定することになると思います。

2.家族の方への対応として、窓口はどこで行うのが理想ですか?
→窓口は、「どこがよいか」よりも、一本化することが良いと考えます。聞く方によって返答が異なったり、あまり把握できていないスタッフが答えることは、ご家族の不安・不満を増加させるためです。通常は、病棟管理者または事務局担当者になると思います。

3.インフォメーションはどの程度の範囲で、どの程度の内容が必要なのでしょうか。
→園長先生の判断で基本的には良いと思います。これは感染管理の領域ではありませんし、発生の状況によって「正しさ」が変化する可能性がありますが、もしこの問題を私が担当する場合は、やはり当該病棟全体にしておく方が良いと提案すると考えます。
その理由は、今後の発生を短期で食い止められるという確定的な情報(抗体価と罹患歴)を、早い段階で把握できていなかった(とご質問の文章からだけですが)からです。
さらに、今後もインフルエンザやノロウイルスなど、アウトブレイクのリスクがある感染症の流行も懸念されます。情報の公開は、リスク管理の観点から「早く」「誠実に」が原則と考えると、今回のことを知らなかった方がいた場合、「隠された」と捉えられかねないと思います。
ただし、すべて直接説明するのでは、現実的ではないため、病棟内に現状と対応についてのお知らせを掲示するなども手段に一つになると考えます。

4.これからの季節では、インフルエンザの発症の可能性が大きく、今回のようなケースをふまえた今後の対応として力を入れなければならない点を教えてください。
→これは非常に難しいご質問ですね。
流行性の疾患もですが、私であれば、まずワクチン接種によって発症を防止できる感染症の抗体価保有状況を確認し、獲得する体制を作ります。
aliceさんの施設では、入院されている集団の特性から、麻疹・風疹・ムンプス・水痘に対する対応は優先度が高いと思います(空気・飛沫感染で発生すると対応が難しいが、抗体保有すると制御可能なためです)。
あとは、感染症が発生した場合、施設全体で発生状況を把握できる体制があると速やかに制御に向けて対応できるため、報告体制の整備(マニュアルであるだけでは×です)も重要と思います。

施設で経験した今回の貴重な経験を今後の改善に活かせるよう、流行性ウイルス疾患に関する振り返りを兼ねた勉強会をされてはいかがでしょうか。
このような地道な取り組みの積み重ねが、より高い感染制御レベルへとつながると思います。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
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