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ケースレポートの書き方

ケースレポートの書き方4  「自分の力だけで考察を書いてみる」

投稿日:2012.07.18

前回は、Aちゃんの事例を、看護診断を使って整理しました。Aちゃんへの看護介入とAちゃんの変化が、ひとつの物語のように書きあらわせたでしょうか。他の人にも見てもらって、事例展開がスムーズか、情報に過不足はないかなどを点検してもらい、よりよい内容にしていきましょう。
さて、今回は「考察」について書いていくことにします。ここで、「考察」の目的を改めて考えてみましょう。

考察の目的は、生じた結果が予測どおりであったか、またどうしてそのような結果が出たと考えられるかを記述することにあります。結果の意味づけをしっかり行うことで、あなたの行った看護実践は「生きた経験」として定着することになるのです。  ここでは、Aちゃんの事例について考察を考えていくことにしましょう。 
1)考察の展開
Aちゃんの事例は、3つの場面展開(「Aちゃんがカーテンを閉め切っていた時期」、「カーテンが開いた時期」、「自ら松葉杖で歩きだした時期」)からなります。そのため、考察もそれぞれの段階で「見出し」をつけ、行うのがよいでしょう。
 2)まずは自分の考えだけで考察を書く

1 最初に文献を使わない
考察は、自分の考えや関連する他の研究結果に基づいて展開するのが一般的です。そのため、「考察を書く」場面になると、あわてて図書館に走る人も多いことでしょう。多くの学生や若い看護師は、自分の担当した事例に近いケースレポートを見つけ出し、そこに書かれている「考察」を参考にしようとします。

しかし、それは間違いのもとです。他人の書いたケースレポートの考察は、たしかに自分の事例にも近いかも知れません。しかし、事例の詳細が異なるために、考察を抜き書きしても、結局は自分の事例にしっくりはまらないのです。

こういうレポートは読んでいて、梅の木に桜の枝が継いであるような違和感を覚えます。そして、結局は何を言いたいのかしっくり来ない印象を覚えます。

2 最初は自分の考えを中心に記述する
考察の最初は、文献の力を借りず、自分の言葉でまず考察することをお勧めします。

Aちゃんの最初の場面について考えましょう。Aちゃんは最初、自分の傷を見るのを怖がっていましたが、介入によって自分の傷を見て、医師と一緒に消毒できるようになりました。これは、介入の何が良かったのでしょうか。Aちゃんのその場面の心理状態のアセスメントが良かったのでしょうか。アセスメントに基づいた看護介入が、Aちゃんの行動を促していったのでしょうか。

自分の看護を振り返りながら思う存分に書いてみてください。その場面に立ち会ったあなたこそ、事例に基づいた考察が書ける人なのです。文献による考察は、この自分の考えを中心とした考察を終えてから行うのがいいと思われます(その方法は次回に紹介します)。  

さて、3つの場面について考察をおこなったら、最後に事例全体を見渡して、学んだことや今後の看護に活かせそうなことや、事例を通して見えてきた反省点について記述していきます。 
 3)記述内容の点検
自分の言葉で書くとは言っても、次の点に注意してください。

1 推測の推測でどんどん話を膨らませて考察しない
「Aという結果になったのは、ああではないか・・・、こうではないか・・・」と書くのは結構ですが、書くからにはこの根拠が事例のなかに認められることが大切です。根拠がないのに話を膨らませすぎないようにしましょう。

2 過度の一般化はしない
「過度の一般化」とは、「言い切ってしまうこと。」です。
Aちゃんの事例でいえば、「児童の心理とは・・・だ。」とか、「下肢を切断した児童の接し方は・・・だ。」などと言い切ってしまうことが挙げられるでしょう。Aちゃんの事例は、他の事例にも当てはまる部分もあるでしょうし、Aちゃん独特の反応もあるでしょう。ですから断言は避け、「Aちゃんの場合は・・・であった。」とか、「児童の心理として・・・ということもあるのではないだろうか。」という程度の表現にしておいた方がいいでしょう。  

3 結果で記述していないことを考察で触れない  
これは結構ある間違いです。「考察」に、「結果」で触れていないエピソードが含まれてしまうことです。たぶん、書いているうちに、「ああ、あれも入れておこう、これも入れておこう」などと欲が出てきてしまうのでしょう。小説であれば、読めば読むほど内容が詳しくなってもいいのですが、ケースレポートとなるとそれはNGです。

ケースレポートでは、事例での様々なエピソードは「結果」で書ききってください。「考察」では「結果」に書かれたことのみを議論の対象とすることを忘れないでください。  

こうして、自分の力だけで考察を書いてみたら、次はいよいよ「文献」を用い、考察をより深いものにしていきます。 その具体的な内容は次回に解説します。おたのしみに。


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