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坪田 康佑先生のコーチングコラム第10回

コミュニケーションに「キャッチボール」を取り入れる

投稿日:2012.07.25

■あなたのコミュニケーションをボールに例えると?

「あなたが普段患者さん、もしくは職場の人たちとしているコミュニケーションをボールに例えるならば、それはどのようなものになっているでしょうか?」


このことをテーマに話すと、

例えば
「患者さんとはいい感じのキャッチボールをしているけど、職場の仲間とはドッチボールや千本ノックをしていることが多いかもしれない。」


「同期には、ピンポン玉のような軽さでキャッチボールできるけれど医師に対しては重く固い砲丸にならないとボールを投げることも始められない。重く固くなっているから、キャッチボールじゃなくて、発射してしまう。」


「ついつい、後ろを向いているところにボールを投げてしまって、キャッチしたかどうかも確認できない。」
などなどいろいろな表現、そして気づきが出てきます。

コミュニケーションというと私たちは「何を伝えるか」「何を扱うか」「何を聞くか」というように「内容」に注目しがちです。

しかし、コミュニケーションを通して得られる成果や人間関係には、「どのように」コミュニケーションが行われるかも大きな影響を与えます。今回はこの「どのように」に少し注目してみましょう。

■コミュニケーションはキャッチボール

コーチングでは、コミュニケーションをよくキャッチボールに例えます。

キャッチボールで交互にボールを投げるのと同じように、「話す」と「聞く」の2つの役割をお互いに担うこと、つまり「双方向であること」を大切な原則としています。

一見当たり前のことのようですが、日常を振り返ってみると、わたしたちのコミュニケーションは必ずしも双方向でないことに気づきます。

代表的なのは組織における「指示命令型」コミュニケーションです。もちろんそれが悪いわけではありません。

特に医療業界のような専門性、緊急性の高い職場の場合、指示命令がコミュニケーションの多くを占め、また機能している例も少なくありません。

 しかし、そうしたやり方だけを用いていると、後輩スタッフの不測事態対応能力の欠如、自発性やモチベーションの低下などを招きます。

それをフォローする方法として、コーチングの「双方向なコミュニケーション」が注目され、最近では、医療安全、チーム医療の充実、医療スタッフの退職率低下などの目的で導入され成果を上げてきています。

では具体的にどんなことに取り組めば、職場で双方向コミュニケーションを実現できるのか、そのちょっとしたコツをご紹介しましょう。

■キャッチボールのイメージで会話を行う

梅干しと聞くだけで唾液が出るように、私たちはイメージに大きく影響を受けます。コーチングのトレーニングを受けている方の中にも、キャッチボールというイメージを持つだけでも、話し方、聞き方に変化が現れたというケースが少なくありません。 誰かと話をする際にはぜひ、「会話はキャッチボール」のイメージを持ちながら、相手とコミュニケーションしてみてください。自分が投げたボールが返ってくるのを待つ余裕ができて、相手の話を聞くことが少し楽にできるのではないでしょうか。

■相手から声をかけやすい場をつくる

ミスの報告、退職の意思表示など、職場で「ああ、なんでもっと早く言ってくれなかったの!」と思うことはありませんか? 

「何かあったら声をかけてね」「いつでも相談してね」と声がけしているにも関わらず、問題が深刻化してしまってからしか報告・連絡・相談がない。特に指示命令型の一方方向コミュニケーションがもともと多い現場では、メンバーのコミュニケーションは受け身になりがちです。

それはそれ以外のコミュニケーションを経験していないからというのが理由の1つです。

そこで、まずはこちらからその場を提供し、「自分から意見を言っていいんだ」「自分が言うことが大切に扱われるんだ」という体験を提供していくことが双方向コミュニケーションを実現する第1歩になります。

まずはできるときで構いません。先ほどの「キャッチボール」のイメージを頭に浮かべながら、 「最近気になっていることはない?」 「そのことについて、提案やアイディアはない?」 「あなたはどう思う?」 と話しかけ、相手が自分の意見や考えを自由に話す場を提供してゆきましょう。

また、「何かあったら」と漠然とした表現ではなく、 「もしちょっとでも、患者の肌が発赤していると感じたら教えてほしい」 「初めてやる処置のときには気軽に声をかけて欲しい」 というように具体的にリクエストしましょう。

そのようなコミュニケーションの場作りを繰り返しているうちに、やがて相手からもコミュニケーションを気軽に始めるようになるかもしれません。

情報交換をする際の障壁が減ると、医療安全の観点でも情報の伝達ミスによる医療ミスを未然に防いだり他者からのフィードバックからヒヤリハットを減らしていくことにつながっていく可能性があります。

私のクライアントのAさんに、上記のことを伝えたところ Aさん自身が、新人ナースの頃に、プリセプターが怖くて、根拠のない不安を発言出来なくなっていたこと そして、そのことから、担当している患者さんの「体調が悪そう」の一言をプリセプターに言えずに高齢の患者さんに入浴介助を実施してしまい、結果的に風邪をひかせてしまった、 という経験があったと伺いました。

Aさんは、同じミスを新人ナースに体験させないように 「寒い・熱い・調子悪そうなど、いつもと違うと感じたら確認のために声かけてね」 「80キロ以上の患者さんの体位交換の時には、声かけてね」 と、新人に声をかける基準を具体的にリクエストしているということです。

冒頭でもお伝えしたように、すべてのコミュニケーションを双方向にすべきだというわけではありませんがまずは普段の業務に、双方向なコミュニケーションの可能性も取り入れてみるという視点を持っていただければ幸いです。

次回は「アクノレッジメント」ついて扱います。どうぞお楽しみに。

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