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ナースマガジン vol.38

達人に訊く!排尿ケアのための 環境づくり ここがポイント!

投稿日:2022.02.14

2016年に新設された排尿自立指導料は、2020年の改定で排尿自立支援加算・外来排尿自立指導料が算定対象となりました。入院~退院後へと継続して包括的に排尿ケアを行う仕組みに舵を切り、これまで以上に排尿ケアへの関心が大きくなっています。

今回は、2010年から排尿ケアチームの仕組みを作り活動され、さらに愛知県内で排泄ケア専門家の育成にも携わられている吉川羊子先生に排泄ケアのための環境づくりに関して伺いました。
 排尿ケアチームとは排尿自立支援加算、 外来排尿自立指導料の算定対象となる患者に対し、 病棟スタッフとともに包括的排尿ケアの介入を行うためのチーム医療組織の一つです。 医師、 看護師、 理学療法士あるいは作業療法士の三職種で構成されることが規定されています。

 排尿ケアチームは対象の患者について、 下部尿路障害・排尿障害を改善するための方針を病棟スタッフとともにカンファレンスの形で検討・実施し、 評価します。

 排尿ケアチームの進め方については 「排尿自立支援加算、 外来排尿自立指導料に関する手引き」に沿って進めていくのがよいかと思います。
「排尿自立支援加算」「外来排尿自立指導料」に関する手引き
出版社 ‏ : ‎ 照林社
発売日 ‏ : ‎ 2020/5/26
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 56ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4796524878
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4796524872
排尿ケアとはリスク管理でもあります。適切な排尿ケアを怠ったために生命にかかわる状態を医原性につくってしまうことは決して稀ではありません。

尿路感染症や腎後性腎不全はその代表です。また排尿障害自体が患者の苦痛につながり、QOLや尊厳にも大きく関わることなので、しっかり取り組む必要があります。
吉川先生のご勤務されている小牧市民病院の場合
1.不要な尿道カテーテルの留置をしない。留置する場合は適切に留置する
・院内での尿道カテーテル留置の適応と留置手技のマニュアルを作成する。
・全看護師対象にラダー研修で間欠導尿の正しい実施法について人体模型を使用しシミュレーションを実施する。
・年に数回、看護師主体で間欠導尿とバルーンの違いや間欠導尿の意義についてなど排尿ケアに関する勉強会を実施する。
2.尿が出ない時は間欠導尿を行う
・膀胱留置カテーテル抜去後排尿がない場合はポータブルエコーで残尿測定を行い、導尿を行うかどうかを判断する(ポータブルエコーを各病棟に設置し、残尿測定はSpO2測定同様の感覚で行っている)。
3.間欠導尿の手技はシンプルにする
・準備物は非滅菌の手袋とカテーテル、潤滑剤のみとし、消毒は極度に汚染している場合のみとする。
4.排尿に関する相談窓口を作る
・病棟にリンクナースを置き、困った事例は排尿ケアチーム・泌尿器科医に相談できる環境を作る。
・排尿ケアチームと各病棟リンクナースでラウンドを実施する。
5.退院支援チームと連携する
・入退院支援室と排尿ケアチームで退院後の排尿ケアに関する情報を共有する。
・入退院支援カンファレンスで、排尿に関する方針を検討する。(カテーテル管理や排尿動作のリハビリテーションなど)
 愛知県では2002年より「NPO愛知排泄ケア研究会」 にて排泄ケアに関する知識や技術、排泄環境を取り巻くテーマで毎月勉強会を開催し、地域の看護師、介護士、理学療法士などが交流する場を設けてきました。 さらに排泄ケアに携わる専門資格 「排泄機能指導士」を養成しています。この資格は現在看護師が取得すると所定の追加講習ののちに排尿ケアチームのメンバーになることが厚生労働省で認められています。

 このような勉強会の場を通して、排尿ケアに関する情報を院内だけでなく、 地域でも共有できたらと考えています。昨年度はCovid-19の影響で勉強会の実施が困難となりましたが、 今年はオンラインで開催しています。

 排泄ケア研究会のようなものは全国にあるかと思うので、 ご興味のある方はぜひ参加されてみてはいかがでしょうか?
排尿ケアの達人 吉川 羊子 先生
小牧市民病院 排尿ケアセンター部長 泌尿器科医
排泄ケアは老若男女、誰にでも必要なものです。疾患や障害の有無に関係なく健康管理の要となります。薬物療法や手術療法などでコントロールすることもありますが、生活環境をいかに整えていくかが症状改善につながりますので、まさに看護師の腕の見せ所といえます。
ぜひ多くの方に排泄ケアの醍醐味に触れ、現場で積極的に取り組んでいただきたいと思います。

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