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病院取材企画!第4回

病院取材企画!第4回「地域全体で口腔リハビリテーションの支援を! 日本歯科大学  口腔リハビリテーション多摩クリニック」

投稿日:2014.02.27

2012年10月、J R 東小金井駅前( 東京都小金井市) に、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックが開院しました。
院長は、同大附属病院で口腔介護リハビリテーションセンター長を務めていた菊谷武先生。
地域に隠れている摂食・嚥下障害を発見し、適切な対応のできる地域づくりを目指したい― さて、拠点を預かる菊谷先生は、どんな未来予想図を描いておられるのでしょうか?

口腔リハビリテーションと栄養に特化

― 多摩クリニックは、普通の歯医者さんとどこが違うのですか?

第一に、摂食・嚥下障害の検査と診断、障害のレベルや介護環境に応じたリハビリテーションに特化していることです。
食べることや話をすることを通して、私達は人と交流しています。そのための大切な器官が口。
その口に問題がある場合、障害のレベルや個々の介護力に合わせ、歯科治療や訓練、食事指導などの対応を考えます。
予約制で、外来および施設・自宅への訪問診療を行っています。

開院から1年以上経った時点で、初診患者数は約1600名です。外来初診患者の約20%は12歳未満の小児でした。発達期の障害を抱える小児のニーズの高さが伺え、「口の発達センター くりん」を設けました。摂食機能療法、言語治療、歯科治療などの対応を、外来・訪問どちらでも行っています。
受療形態は外来と訪問で、ほぼ半々(図)。
訪問診療は約80%が75歳以上で、外来診療を受けられない高齢者です。元気な時は外来受診に来てくれていた患者さんたちですから、来られなくなったのなら、こちらが自宅まで行きましょう、ということです。

第二に、歯科領域と栄養領域との連携を重視していることです。施設や在宅の摂食・嚥下障害患者さんのもとへは、管理栄養士が訪問し、個々の機能に合わせた食形態や食内容の指導、栄養指導に当たっています。
なんとか食べられるようになると、次はどう食べるか、どんなものが食べたいかという話になります。余裕を持って食べているわけではなく、ぎりぎり可能な量を食べたいものだけ食べていると、栄養バランスを崩し、体に必要なカロリーもたんぱく質も少なくなる可能性が出てきます。こういう時こそ、栄養の専門家による栄養評価が必要なのです。
クリニック内でも、キッチンスペースでの介護食教室開催や、介護食ショップの設置などを展開しています。地域の人に使ってもらえる場所を作る、ということがこのクリニックのコンセプトですから。

地域全体の認識の底上げ

―この1年、多摩在宅歯科医療研究会を頻繁に開催されていますね?

診療範囲地域内の開業歯科医の先生方とどうつながっていくかは、医療資源の有効利用という意味でも重要な課題です。
そのため、地元の歯科医の先生方を対象とした研修会を、毎月開催しています。目的は、在宅に行ってみようという動機づけです。
毎回70名前後の参加があり、その7割は一度も在宅訪問診療をしたことがない先生方です。
今後、訪問診療の要請もあるだろう、でも不安もあるし…そんな先生方を巻き込みたいのです。

一つの医療機関が突出した高い技術を持っていても、「食べること」は、そこだけで支えられるものではありません。患者さんは、施設に入ったり入院したりと動き続けています。
どこでも一定のレベルの支援が出来るよう、地域自体が底上げされる必要があります。

地域の先生方がフィルターとなり、専門的な介入が必要な嚥下障害の患者さんをすくいあげ、こちらに送っていただく。
我々の対応後、軽症あるいは安定した人たちは、地域の先生方にしっかり診てもらう。再発や悪化した時は、当ク リニックが対応する、そういう流れを作りたいのです。
とはいえ、そう簡単に成熟するものではありませんから、3〜5年先を見据えて考えています。

―多職種の関心はいかがですか?

60名くらい入れるここのホールを使って、医療・介護・福祉職向けの勉強会も開催しています。駅前というアクセスの良さも幸いし、摂食嚥下障害について学びたい、自分の患者や利用者で困っている人の役に立ちたい、という方々が多数参加されています。
この勉強会で我々の行っている診断の内容や意味を理解してもらうと、今まで全く気付かれずに見過ごされていた嚥下障害の人たちを、ケアマネさんや訪問スタッフが、すくい上げてきてくれます。
「うちの利用者にもよく似た人がいる」「まだ何となく食べているからいいと思っていたが、嚥下障害を疑うチェック項目にたくさん当てはまるので診てほしい」と。
勉強会がなければ、ここまでつながらなかったようなケースです。

実際に介護に関わっている人たちが、当クリニックの診療内容を理解していなければ、我々と患者さんはつながれません。

―在宅患者さんの食支援には、訪問看護師の役割が重要という事ですが…

訪問看護を利用している患者さんというのは、胃ろう、褥瘡、酸素吸入など、医療的ケアが必要で、リスクの高い人たちです。ですから、我々と主治医と患者・家族をつなぐ要として、訪問看護師さんが我々の訪問診療に立ち会って下さる事は、大変意義が大きいのです。
嚥下機能評価や訓練にも同席してもらい、我々の行っていることの意味や技術を共有してもらっています。医療的な指示内容をかみ砕き、わかりやすくご家族に伝えてくれるのも、日々患者家族と接している訪問看護師さんならではです。

最初のひと口を味わって飲み込んだ感動は、忘れられないものです。いい加減に始められて窒息や誤嚥性肺炎などの悲しい結果を招かないためには、慎重に進める必要があります。その実施の場に訪問看護師がいて下さるということは、我々にとっても大変ありがたく安心なことなのです。

実績を示して次のステップへ

―最後に、先生が描かれる未来予想図を教えて下さい。

まず、口腔リハビリテーションの拠点として当クリニックの存在と対応可能な診療内容を知ってもらう。そして、我々が多職種と関わることにより何が起こるかを、市民も含め医療、介護、福祉関係者や行政にも理解してもらう。
多職種が連携することで、1+1が3以上にもなるような体験をお互いが積み重ねてゆく。そこから摂食・嚥下障害支援のシステム、健康福祉の増進に役立つモデルに成熟させてゆく。

気がついたら、多摩北部地域は摂食・嚥下への対応が進んでいる、と言われるようになりたいですね。
口腔リハビリテーション多摩クリニック
住所 〒184-0011 東京都小金井市東町4- 44 -19
      (JR 中央線東小金井駅南口)
TEL   042-316-6211 
FAX 042-316-6212

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