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教えてっ! 退院支援の5つのこと第13回

教えてっ!退院支援の5つのことシリーズ第13回

投稿日:2020.03.27

教えてっ!退院支援の5つのこと 第13回

 五島 朋幸 さん
  ふれあい歯科ごとう代表 
  歯科医師
介護保険がスタートする前から新宿区を中心に訪問歯科診療を始め、「地域食支援」の先駆け的存在として知られる「ふれあい歯科ごとう」の五島朋幸先生に今回はお話を伺いました。

在宅で「食」と「栄養」を支援する

普段午前中は外来診療、午後の2時から5時は訪問歯科診療をしています。訪問診療の約9割は「入れ歯が合いません」という方への対応です。入れ歯が原因で食べられない方もいますし、入れても食べられない方もいますから、食の問題は外から見えやすいのです。
急性期病院の医師は入院のきっかけとなった患者の病気については診ていますが、「食」や「栄養」をチェックしていないのかな?と感じます。病院からのサマリーもあまり参考にならないことが多いのが実情です。

必要栄養量を満たすことの重要性

最近の例では、患者さんの娘さんから「親が退院してくるので診てほしい」と連絡を受けました。その患者さんは入院中は口から食べられなかったのですが、幸いにも胃痩を造設している方でした。これから食支援を行うという立場からすると、胃痩を造設している、あるいはこれから胃痩を造設しようとしている患者さんのほうが望ましいともいえます。なぜなら、食べるという行為には体力が必要であるため、胃痩からの栄養投与で栄養状態が改善され、体力が養われているほうが介入しやすいのです。
ところが、患者さんや家族のなかには胃痩に抵抗を示す人が少なくありません。医療提供者が「まず胃痩を造って栄養をしっかり確保し、食べるためのリハビリを行いましょう」というような説明をすればよいのですが、胃痩を造ってどうするかとの説明をせず、「胃痩にしますか、しませんか?」という聞き方をしていることも一因ではないかと感じます。

看護師に望むこと

病院ではNST(栄養サポートチーム)の取り組みが進んでいるところもあるようですが、現実には1ヵ月半の入院の間に8キロも痩せてしまった患者さんもいます。近年NSTの活躍が注目されていますが、実際に地域に戻ってくる患者さんの実態をみると、あまりにも乖離があるように思います。このような実態があることをふまえて、看護師のみなさんにはまず必要栄養量を満たすことが前提であるという視点を持ってほしいと思います。

食べることが最高の口腔ケア見出し

在宅での食支援について、胃痩などでしっかりと栄養補給がなされているケースでは、専門家が介入することによってその人が持っている機能をいかし、モチベーションを上げるために食べられるものから少量ずつでも、とにかく口から食べてもらうようにしています。
しっかり食べて、しっかりと口腔ケアを行えば、口の中は一気にきれいになります。食べることが最高の口腔ケアなのです。

最期まで口から食べられる街を目指して

私が代表をつとめている「新宿食支援研究会(新食研)」は2009年7月に「最期までロから食べられる街、新宿」をモットーに有志が集まり結成しました。このような「仕事以外の場」に訪問看護師が参加することは稀なのですが、新食研には若い看護師さんも積極的に参加してくれています。現在、約160名のメンバーがいて、24のワーキンググループがあります。
他の地域に移ることになり「新食研」を辞めた人でも、その地域で自立して食支援の活動を広げ、発展させてくれれば嬉しいですね。
(2019年7月26日取材)

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