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聴きある記

聴きある記「第7回慢性期リハビリテーション学会」「第35回日本環境感染学会総会」

投稿日:2020.06.19

本来は岡山コンベンションセンターでの開催であったが、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、岡山での開催が急遽中止となり、メイン会場のみネット中継となった。

基調講演

人生100年時代を見据えた日本医師会の医療政策

国民が生涯にわたり健やかで生き生きと活躍し続ける「人生100年時代」を見据えた社会を実現するためには、国民皆保険制度を堅持しつつ、持続可能な社会保障制度を確立していくことが不可欠。超高齢社会において生命・健康を守るためには、かかりつけ医が多職種連携のリーダーシップをとり、切れ目のない医療・介護を提供すべきである。
地域包括ケアシステムにおいて医師は医療のみならず、地域住民の予防・健康づくりにも力を入れることが重要。厚生労働省はアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及を図っているが、ここでもかかりつけ医の役割が増している。

学会長講演

尊厳の保障 誰もが誇りを持って暮らせるまちづくり

予定の講演内容を変更し、前半部分は新型コロナウイルスへの医療・介護の対応について解説した。

新型コロナウイルスへの医療・介護の対応

現状は避けることのできない状況であり、正しい知識に基づいた冷静な対応が求められる。感染拡大および感染のピークをできる限り抑制し、事業継続を維持することが大事。健康被害を極力最小限に抑えることに全力を注ぎ、社会機能を維持することを社会的な行動目標とする。

▼ 潜伏期間

最長12.5〜14日間とされているが、概ね4〜7日で発症していることが見受けられる。また、発症から入院までの平均値は7日間で、8〜9日間辺りで多くは改善しているが、一部は急性増悪している。

▼ 基本再生産数( Ro:感染力のある一人の感染者が免疫獲得もしくは死亡によりその感染力を失うまで何人の未感染者に伝染させたかの人数)

現状では2.2程度(現在インフルエンザ指数と同等)

▼ 症状

発熱、倦怠感、乾性咳嗽、食欲不振等

▼ 死亡者年代

現状では8割が60歳以上であり、高齢になるほど致死率が上昇

▼ 医療機関や施設内の感染対策

①患者・利用者の健康状態及び基礎疾患の状況を日頃から把握し個別に対応する
②感染者が発症した際は施設管理者・管理医師・感染管理担当等に即時に報告し、連携し組織的対応を図る、または速やかな感染対策の徹底を図る
③医療者が感染した場合も同様であり、出勤停止やその期間の検討、勤務配置等の検討を行う
④アウトブレイクを防ぐために環境消毒の徹底が必要
⑤発症者と不顕性感染者の動線分離と空間隔離を図り、集団隔離(コホーティング)を行う
⑥ベッド間隔やベッドサイドカーテン利用等の検討・食事場所の検討を行う
⑦通所の感染対策として、利用者が発症した場合かかりつけ医と連携し通所利用中止やその期間の検討、訪問系等の代替サービスの導入を行う、
等の対策を行う

▼ 医療現場で働いている人の感染対策

①標準予防策・飛沫感染対策・接触感染対策を基本とし、サージカルマスク・ゴーグル・フェイスシールド・ガウン・手袋等の着用を徹底する
②エアロゾル発生時は陰圧室に移すと良いとされる
③発症確定患者と感染が疑われる患者を早期にトリアージし、隔離を行う
④PCR検査は、陰性でも完全に診断否定とならない可能性もあるため、人混みを避ける方が望ましい

▼ 治療

現状は抗インフルエンザウィルス薬・抗HIV薬を投与している
※詳しい消毒方法や環境対策は「隔離予防策のためのガイドライン〜医療現場における感染性微生物の伝播の予防」( C D C 、2 0 0 7 )を参照としていただきたい。
[取材・執筆]西谷 誠(ニュートリション・アルファ)
※学会長講演後半および診療報酬改定については、ナースマガジン次号でご紹介します。

ランチョンセミナー21

手荒れ対策の意義を再考する
〜ハンドケアモニター調査からみる
    予防的スキンケアの効果〜

司会:荒川創一先生(三田市民病院院長)

演者:森兼啓太先生(山形大学医学部附属病院検査部部長・病院教授)
冬になると「手荒れ」というものがつきものですが、皆さん今年の冬の手の状況はいかがだったでしょうか?本誌30号で、同タイトルのICN座談会の記事を掲載しましたが、本学会のランチョンセミナー21でも、手荒れから予防できる感染対策について、その貴重な調査結果が報告されました。

手指衛生標準化の動き

2002年のCDCガイドラインではどのような時に手指衛生が必要なのか明示し、汚れが目に見えている時は石鹸と流水、目に見えて汚れていない時はアルコールベースの手指消毒薬を行うとされています。アルコール性の手指消毒薬が今は病棟に何個も配置され、手指消毒を行う機会が日常茶飯事となっています。
2009年にはWHOから手指衛生の5つのタイミングが明確に示されましたが、その中に「手指消毒剤の配置は良い場所(アクセス)に」、とされています。山形大学病院のICUでは、アルコール消毒剤を各所に配置することで順守率が約2倍も上昇したとのことです。このように配置場所にまで細かく提示されている手指衛生は、現在、更に標準化が進められており、I S O( 国際標準化機構)では手指衛生も規格化されようという段階にきています。

手荒れ対策は正しいハンドケアを

アルコールベースの消毒薬は殺菌あるいは滅菌効果があり、保湿剤を通常含有しているため手荒れはそこまで発生しないと思いますが、医療現場での手洗いやアルコール消毒は頻回なため実際は手荒れで悩んでいる人も数多くいるのではないでしょうか。
今回の講演は、2018年11月〜2019年2月までの3か月間、7施設の方々と各施設に所属されている感染管理認定看護師の方のご協力の下、ハンドケアを行っていただくことによる手荒れ対策効果についての結果をお伝えするものでした。
私自身も看護師としてICUで働いていた時、夜勤明けの手はカサカサとひび割れが生じ、なんとも言えない手でした。次の勤務までに良くしようと思い、必死でハンドクリームをマッサージしながら塗りこみ、休みの日はこまめに塗布していたことを覚えています。
森兼先生は、夜間や休日の時間がある時にハンドクリームを1日4回、1FTUの量をハンドマッサージしながらハンドケアを行うと良い、寒くなる前から正しい方法でハンドケアを実施することで手荒れしにくくなるとおっしゃっていました。
現場で働く看護師が手荒れを生じていると、石鹸での手洗いやアルコール消毒も沁みて痛みを感じることから正しく消毒できなくなることも考えられます。手荒れシーズンに入る前からしっかりケアをしていくことが必要だなと感じました。
(編集部 A・K)
モニター調査に関して詳しくはこちらから
ICN座談会「手荒れ対策の意義を再考する」