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森山 典子先生の認知症ケアコラム第1回

第1回 認知症看護において必要とされる看護師とその役割とは

高齢化社会の日本おいて、認知症を有する高齢者人口は※1)2010年には226
人であり、2015年には262万人で65歳以上の老人人口に対する認知症高齢者の出現率は8.4%に達する勢いで増え続けています。

「認知症」という用語は、2004年(平成16年)12月24日,厚生労働省による“痴呆”に替わる用語に関する検討会により改称されました。

「認知症」に名称変更されたことの背景には、“痴呆”という用語が侮蔑感を感じさせる表現であり、また、“痴呆になると何にも分からなくなってしまう”という誤解や偏見の原因になるとともに、痴呆への恐怖心や羞恥心を増大させ、尊厳を持った関わりや地域連携づくり、早期診断・早期発見などの取り組みの妨げにならないようにとの配慮があったからです。

「認知症に名称変更され、6年半余りとりますが、私の勤務する病棟では未だに認知症者の看護、介護現場において、相変わらず“痴呆”として取り扱われている現状を目にします。

「認知症があり、歩くと転倒するため車いす用のベルトを付けました」、「認知症がありオムツ外しをしたり、不潔行為をするのでつなぎの拘束着を着せます」等と身体拘束するのは、認知症だから「当たり前」とルーチンワークの如く実施されています。

更に、認知症だからコミュニケーションはとれないと決めつけられ、会話をすることもなく、ただ一方的に否定されるという現状があります。

認知症という診断名があるだけて画一的ステレオタイプの取り扱いをしていくことが許されることなのでしょうか?身体拘束に関しては、治療を優先される医療の現場・病院では様々な議論があることと思います。


(※2)身体拘束は1999年3月に厚生労働省令として、介護保険規定基準の身体拘束禁止規定が出されました。)重要なことは、「認知症である」というだけでその人の人権が無視されることがあってはならないということです。

認知症者の人権を尊重することが何よりも重要です。そのためには、認知症者を理解するための看護の視点が重要となります。

※3)認知症の病態を理解することはもちろん、認知症の人が体験している世界を知り、認知症という生活障害をもちながらも、一生懸命に努力している姿をありのままに理解することです。

認知症者の声、気持ちをくみとり、代弁、人権擁護(アドボカシー)することです。

認知症をきたす病因は多岐にわたりますが、認知症の症状や特徴を把握した上で、認知症者一人一人の持っている能力を見出し、その人の生活歴や家族歴等様々な情報とを合わせてアセスメントし、認知症者に関わる様々な職種(医師、看護スタッフ、ケア提供者、リハビリ師、ソーシャルワーカー、ケアマネ、薬剤師等)と情報を共有し、ケアカンファレンスを実施することも大切です。

認知症者の一番近くにいる看護師、ケア提供者達は進行する認知症を抱えながらも、笑顔を忘れることなく過ごすことが出来るよう、その人に寄り添い、心が通じ合えるよう、認知症者を理解し、受け入れられる看護を深めてゆくことが重要です。


尚、認知症の病態・治療と看護については今後のコラムにて掲載いたします。

引用・参考文献
※1)厚生省:1994年、認知症老人対策に関する検討会報告
※2)髙﨑絹子:実践から学ぶ高齢者虐待の対応と予防,p129,日本看護協会出版会,2010
※3)中島紀惠子・太田喜久子・奥野茂代・水谷信子:認知症高齢者の看護,Ⅰ-認知症高齢者の看護,p1~2,医師薬出版株式会社,2007

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