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聴きある記

聴きある記『ナースマガジン慢性期看護セミナー』第3回

投稿日:2020.06.21

ナースマガジンでは、東京・大阪・福岡において在宅療養支援をテーマとするセミナーを開催しました。
3回目となる今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師の政田美喜先生と高木良重先生にお話しいただいた内容をご紹介します。
(編集部まとめ)

慢性期医療現場におけるスキンケア

【政田美喜先生】
褥瘡・スキンテア予防のための 基本的なスキンケア
褥瘡は持続的な圧迫と組織の摩擦・ずれが加わって起こる皮膚障害で、組織の虚血性変化が主な原因です。一方、スキンテアは摩擦など一過性の強い外力が加わって発生する皮膚の裂創です。

スキンテアは真皮深層までの浅い層ですが、褥瘡は重症になると体腔に至ることもあります。スキンテアは高齢者の脆弱皮膚に多くみられ、状態により分類できます(図1)。

スキントラブルの発生は個体要因と環境要因がありますので、皮膚に障害を起こさないための予防的ケアを提供しなくてはなりません。
発生リスクを高めるものとして、紫斑・斑状出血、浮腫、皮膚の弛み、浸軟、ドライスキンなどがあります。高齢者の皮膚は年齢とともに細胞分裂が低下し、表皮のターンオーバーが延長するなどして表皮が薄くなるうえ、基底層の平坦化により剥がれやすくなります。
さらに皮脂成分や水分量の低下によって皮膚の表面が乾燥し、皮膚のバリア機能が低下するというメカニズムがあります。
また、皮膚が乾燥すると、掻痒や皮膚欠損、さらには感染、敗血症といった二次的障害を惹起することもあります。そこでスキンケアが大切になってきます。
スキンケアの3本柱となるのは、清潔、保湿、保護です。スキンケア用品を使うことで、回避できることもたくさんあります。
たとえば、リモイスクレンズのように塗ってマッサージすることで汚れを浮かし、拭き取るだけで洗浄でき、同時に保湿成分を補えるものもあります。
洗浄剤には、皮膚の修復が期待できるセラミドなどの保湿する成分が配合されたもの、カビを抑制する抗真菌剤が含まれるものなどがあり、皮膚の状態に合わせて選択できます。

肌に生息しやすいヒゼンダニが原因の疥癬は、皮膚の清潔不足が要因となり、発生すると集団発生の危険性があるので皮膚を清潔に保つこと、症状を見落とさないように全身の観察を怠らないことも重要です。
皮膚を保護するものとしては、テープ剥離を防ぐ被膜材や溶剤〔リムーバー)や、さまざまな部位を包み込むチューブ型の包帯なども利用できます。
保湿・保護剤の特徴と使用時の留意点
保湿・保護剤は、入浴した直後など皮膚へ浸透しやすい状態のときに塗り込むと効果的です。
実際にいろいろな製品を使用してみると、保湿効果を高めるのには浸透性がよく、べたつきのないものが望ましいです。

水分を与えるモイスチュアライザー効果のあるローションやクリーム、水分の蒸散を防ぐエモリエント効果のあるリモイスバリアのような保護膜材など目的別の製品があるので、それぞれの特徴を知っておく必要があります。
使用する範囲が両手のひらくらいなら、コイン一つ分くらいの分量を手に取って、全体に伸ばします。
マッサージをしながら、皮膚のしわに沿って広げると浸透しやすいです。
患者さんの皮膚を傷つけないよう、自分たちの爪や手荒れのケアも忘れてはいけません。慢性期の病院では、ケア用品の使用に限りがある場合もあるため、コストパフォーマンスを考え、二次ドレッシングに尿取りパッドやおむつを代用します。
また、洗浄処置時の疾痛緩和に対する生理食塩水の使用を塩と水道水を混ぜて生理的食塩水を作り、使用することもできます。

患者さんの在宅復帰を目指すためには、看護師のみなさんがキーになります。さまざまなケアを集約して、今後も頑張っていただきたいと思います。
いま、求められる褥瘡ケア 〜褥瘡患者における局所管理とスキントラブル対策〜
【高木良重先生】
正しくアセスメントして適切なケアにつなげる
平成30年度の診療報酬改定の中で、褥瘡対策加算にDESIGN-®を用いたアウトカム評価が取り入れられたため、これをきちんと理解し使用することが重要です。
さらに、これからは褥瘡だけでなく、あらゆる皮膚トラブルに着目し、PDCAサイクルを確実に回して看護の質を上げていくための知識と技術が求められます。

まず、どこに重点を置いて介入すればよいかを判断するために、OHスケール、プレーデンスケール、K式スケールなどを用いて、褥瘡のリスクアセスメントをします。
褥瘡がある場合、現在の診療報酬の制度では、日本褥瘡学会が開発したDESlGN-R®を用いて治療過程を評価することが推奨されています(図2)。

褥瘡のDepth(深さ)、Exudate(滲出液)、Size(大きさ)、lnflammation\lnfection(炎症/感染)、 Granulation tissue (肉芽組織)、Necrotic tissue(壊死組織)、Pocket(ポケット)の7項目に、軽症の場合は小文字、重症の場合は大文字で示し、それぞれ点数をつけます。
そしてDを除いた点数を足して、合計点で評価します。
各項目を評価する際の注意点を簡単に解説します。
Depth(深さ)…創の一番深いところで評価する。周りの皮膚と創に段差がないときは真皮までの損傷なのでd、創の周りと創底に段差があり、壊死組織が存在するときはDとする。壊死組織で覆われているとき、さらにDTl(深部損傷褥瘡)が疑われるようなときは判断できないためDUとする。

Exudate(滲出液)…ドレッシング剤の交換時に、どのくらい汚染されているかで判断する。ドレッシング交換が1日1回以下の場合はe、1日2回以上の場合はEとされているが、回数よりも浸出液の量により判断する。

Size(大きさ)…創の一番長いところと、そこから直角に交わるところを計測して掛け算をする。100未満をs、100以上をSとする。
大きな褥瘡の場合、体位によって創の見え方が異なることがあるため、同じ向きで計測する。

lnflammation/lnfection(炎症/感染)…局所の感染徴候のないものをi、感染徴候のあるものをIとする。発赤部分を押さえて色が消えなければ、すでに血管が損傷した状態と考えられる。押さえて白くなる場合は、まだ血液の流れがある反応性充血となる。

Granulation tissue(肉芽組織)…肉の中に良性肉芽が占める割合を評価して50%以上をg、50%未満をGとする。良性肉芽と不良肉芽がどんなものかをきちんと知った上で判断することが求められる。

Necrotic tissue (壊死組織)…壊死組織なしをn、ありをNとする。色だけではなく、柔らかいのか硬いのかという視点で判断する。
混在する場合、多いほうで評価する。

Pocket(ポケット)…存在しない場合は何も書かず、存在する場合はPと記述する。

大きさの計測と同様に、創の一番長いところと直交するところを掛け算する。
具体的な採点法は図に示す(図3)。
深い褥瘡は治療とともに局所の病態が変わってくるため、創の状態を定期的にDESIGN-R®で評価し、進行に応じて治療法を変えていく必要があります。
治療方針の基本は、DESlGN-R®の「大文字」を「小文字」に変えることを目指してケア介入することです。局所治療の基本スキームとして進める順番は、「N→n」〔壊死組織の除去)、「G→g」(肉芽形成の促進)、「S→s」(創の縮小)の順です。そのほか、「I→i」(感染の制御)、「E→e」(滲出液コントロール)、「P→(一)」〔ポケットの解消)は、適宜優先するものを考えて進めます。
適切なケアをすることで、合計点が9点以下なら1ヶ月未満で、18点以下なら3ヶ月未満で治癒するといわれています。
正しく評価するとともに、評価だけで終わらず活用することが重要と考えます。

治療材料を選択して使い分けることが大事

局所ケアにおいては、創の状態に合った治療材料を選択することが大事です。
療養環境を整え、必要なツールで創を正しく評価して、適切な治療材料を選択することをはじめ、体圧分散ケア、スキンケア、栄養管理、排泄管理などにも目を向けていくことが大切です。
特に求められるのはドレッシング材の使い分けで、滲出液の量に応じて選択します。
当院ではエスアイエイド®を使用したところ、通気性がよく、刺激が少なく、滲出液を速やかに吸い上げてくれるといった特徴がありました。
創傷被覆材と同等の効果が期待でき、衛生材料なので約4分の1の金額で使用できる点も長所といえます。
実際に、浅い褥瘡の場合、上皮化につながっており、深い褥瘡の場合も肉芽の増殖や上皮化となっています。

なかなか治癒が進まないときは、TIMEコンセプトを取り入れ、Tissue Nonviable or deficient (不活性組織、壊死組織)、Infection or lnflammation(感染または炎症)、Moisture lmbalance〔湿潤のアンバランス)、Epidermal margin Non advancing or undermined〔創辺縁の治癒遅延)の4つの観点から確認していきます。何に気をつけて問題にどう介入したらよいのかを明確にし、最適なケアを目指しましょう。

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