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口腔ケア

口腔ケア 摂取嚥下講習会に参加して

投稿日:2015.04.08

歯科衛生士の講習会も、ここ数年急激に介護に関連する内容が増えてきました。
特に最近は、摂食嚥下が注目されています。

先月、東京都歯科衛生士会が主催する摂食嚥下講習会を受講してきました。
定員80名がすぐに満席となり、キャンセル待ちする受講者もいたほどです。
午前中の講習会では、一つのテーブルに8名の受講者が座り、合計10グループに分かれ、一つの症例から考えられる問題点と改善点を抽出し合うグループワークでした。

<症例>

年齢91歳 (架空人物です)
女性 
介護度4 
既往歴 パーキンソン病(75歳の時診断) 高血圧 認知症(中等度)
デイサービスは週2回
訪問看護週1回
往診月2回
・簡単な意思疎通は成立する。(挨拶・口を開けてなどの指示は可能)
・発語はほとんどしない。「痛い」程度。
・表情は乏しい。穏やかで最近傾眠傾向にある。
・食事を含む身の回りのことは全介助。移動は車イス。
・肺炎の既往はなし。体調は安定している。
・口腔内 上下総義歯(適合良好) 口腔粘膜は乾燥気味で舌苔あり。

<介護状況>

・青果店を営む長男夫婦と同居。店の奥が自宅。
家ではほとんどベッド生活。オムツ使用。
 移動は車イスだが、長男夫婦は腰痛があり二人がかりで移乗を行う状況なので、外に出る時のみ使用。
・主な介護者は長男の嫁(68歳)。
 本人が元気な時から関係は良好で、介護を行う事は嫁の務めと割り切っている。
 忙しい夕方は店に出ている。控えめな性格。介護能力は高い。
・長男(70歳)は介護に協力的だが、店に出ているため介護はほとんど妻に任せている。
 食事介助は時々行っていて、食べて欲しいという気持ちから押し込みがちになっている。
 商売がら、お客さんと会話する機会が多く、介護情報を得ると妻に聞かせ試させる。
 息子夫婦で可能なかぎり自宅で介護し、できれば自宅で看取りたいと思っている。

<主訴>

・パーキンソン症状が進み咀嚼が困難となり、食事はおかゆと軟菜を摂取しているが、最近食事に 時間がかかるようになってきた。半分程度食べさせると口もあけなくなり、口腔内に食物をため込んでしまう。
1時間以上かけて食事をさせるが途中でムセも現れ、全量摂取は困難である。
食事途中で眠ってしまうこともある。
・デイサービスでも朝食は半量摂取と報告を受けている。
・このままでは栄養不足が心配なので往診医に相談したところ、高カロリー栄養ドリンクを処方された。
しかし、近所の知人より歯科医が嚥下訓練を行って食べられるようになった話を聞き、嚥下訓練を希望し歯科医師会に連絡、その紹介でA歯科医師の訪問に至った。

この症例から、患者さんにどんな支援が出来るか、どんな提案が出来るかをグループで話し合いました。

各グループから出た代表的な意見を紹介します。

①介護者の負担を減らすアドバイスをする。
②多職種との連携を図る。
③本人の希望を聞く。
④全身疾患(投薬・血液・栄養状況)を把握する。
⑤食事の方法を確認し、アドバイスする。
⑥覚醒状態にあるときに食事をさせる。
⑦摂食嚥下の評価をする。
⑧間接訓練を指導する。

介護者に対し、私たち歯科衛生士が最もアドバイス出来る事は、⑦・⑧です。
しかし、この症例の患者さんのようなケースは、機能トレーニングから著しい回復は見込めず、目標は「現状維持」になります。

この講習会に参加した歯科衛生士の感想として、皆さん「介護の負担軽減」「食事についてのアドバイス」が大切という意見が非常に多く上がりました。
もちろんそれらも重要ですが、歯科衛生士の本業としては、義歯や口腔内を丁寧に洗うよう的確にアドバイスできることが、最も重要な役割だと思いました。

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