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今日から役立つ!口腔ケア実践講座第3回

今日から役立つ!口腔ケア実践講座 食べられる口づくり 第3回 正しいケアを覚えよう② ~機能的口腔ケア~

投稿日:2015.06.18

前回の器質的口腔ケアに続き、機能的口腔ケアについて解説します。
適切な粘膜ケアと口腔周囲の筋肉トレーニングで、「食べられる口づくり」を進めていきましょう。

※機能的口腔ケア:口腔機能を回復させ、維持・向上させるために行われるケア

お口の中は、潤っていますか?

唾液は通常、1日に500〜1000㎖分泌され、口腔全体の湿潤環境を保つ役割があります。
口腔内の潤滑油として舌や頬の動きを滑らかにし、スムーズな会話や飲み込みやすい食塊形成を助けます。
また、消化作用、自浄作用も含め、QOLを大きく左右するものです。

しかし、加齢や脱水症、放射線治療の副作用、薬物の影響などによって口腔内が乾燥すると、ますます唾液の分泌が悪くなり、細菌の繁殖を増加させたり、口を動かす時に痛みを生じたりして「食べられる口」を保てなくなります。
ぶくぶくうがいや口を動かすトレーニング、保湿剤の利用なども組み合わせながら、唾液の分泌を促す、適切な機能的口腔ケアを行いましょう。

① 粘膜のケア

歯以外の柔らかい粘膜部分(唇、舌、歯茎、頬の内側、上顎など)の乾燥や汚れを見逃していませんか。放置しておくと、唾液の分泌が減り、口腔内の自浄作用が低下します。
歯の汚れをとるように、粘膜の汚れも取り除き、唾液の出やすい環境を保ちましょう。
ただし、直接口の中に触れる行為なので、十分な説明や声かけを心がけ、口から遠いところから触れていきます。
指や手のひら、腕、肩のマッサージなどでリラックスしてもらってから、頬や顎に触れ、抵抗がなければ粘膜のケアに移ります。
使い捨てグローブの着用も、忘れずに。

一度痛い思いをすると、本来気持ちのよいはずのケアも拒否されがちです。ケアの前には保湿剤を塗り、柔らかくなるのを待ってから、スポンジブラシ、口腔ケア用ウェットテイッシュ等を使用し、優しく汚れを取り除きます。
頬は内側から外側へ、歯茎・唇は小帯を避けて左右に、上顎や舌は奥から手前にという動作で、一度に全部取りきれなくても、無理をしないように。
ケアが難しいケースは、歯科医や歯科衛生士に相談して下さい。

② 唾液腺マッサージ

唾液は耳下腺・顎下腺・舌下腺から口腔内につながる管を通じて唾液を分泌します。小唾液腺は、唇・上顎・舌の裏側などにも広く分布しています。
唾液線マッサージは、患者さんに話しかけながらこれらのツボを5〜10回刺激して、唾液分泌を促します。

③口腔周囲のマッサージ

唇のマッサージは、唇を閉じて食べこぼしを防ぐ力をつけます。カサカサしている時には保湿剤やリップクリームでうるおしてから始めましょう。上下の唇を右・中央・左に分け、それぞれを親指と人差し指でそっと挟んで、伸ばしたり縮めたりします。 顔の筋肉もほぐしておくと、スムーズな開口や咀嚼につながります。口の周りや頬を手のひら全体で包み、優しくマッサージします。

機能回復のためのトレーニングを

食べたり話したりするための口腔機能を維持するためには、身体同様、トレーニングが必要です。
皆さん実践されていることと思いますが、嚥下体操、口腔及び口腔周囲のストレッチ、「パ・タ・カ・ラ」の発音など、さまざまなトレーニング方法があります。
それぞれのトレーニングがどういう機能の訓練になるのかを理解して、患者さん一人ひとりの状態を確認しながら行いましょう。

① 嚥下体操

食べ物を飲み込む時に必要な筋肉は、会話をしたり表情を作ったりする時にも使われるものです。
また、食べて飲み込むという行為をスムーズに行うためには、口腔周囲だけではなく首や肩の筋肉もリラックスさせることが大切です。
咳払いは、誤嚥した時にむせて吐きだすための筋力トレーニングになります。
食べるために必要な口腔周囲の筋肉や舌の動きは、加齢とともに低下してきます。
できるだけ機能低下を防ぐために、道具を使わず誰でもいつでもできるトレーニングが、パ・タ・カ・ラという発音練習です。
例えばこの4つの音を含む「パンダの宝物」という言葉をゆっくり正確に発音することで、食べるための口の準備をします。

パ:破裂音ですから、唇をしっかりと閉じないと発音できません。
食べ物をこぼさないように、唇を閉じる筋肉を鍛えます。

タ:舌を上顎につけて発音します。食べ物を噛む、つぶす、飲み込む、という時には、舌の全面が上顎についていなければなりません。その舌の働きを鍛えます。

カ:一瞬のどを閉めてのどの奥に力を入れて発音します。食べ物を飲み込んで食道に送る時には、呼吸を一瞬止めます。その動きをスムーズに行い、誤嚥を予防するためのトレーニングになります。

ラ:舌先を上前歯の裏側につける発音は、舌の筋肉を鍛え、口腔内の食べ物をスムーズに運ぶ動きを滑らかにします。

これらは噛んだり飲み込んだりする力が鍛えられるだけでなく、発音や表情にも良い影響が見られます。
口を閉じることで鼻呼吸に戻り、口腔乾燥を防ぐことにもつながります。

② ガムラビング

器具を使わずに、指で歯茎のストレッチを行う方法です。歯と歯茎の間を、グローブをつけた人差し指でこすります。
小帯に強く触れて痛みを与えないように、細心の注意を払って行って下さい。
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 監修 

株式会社スマイル・フォー・ユー代表取締役/ 歯科衛生士
長岐  祐子  (ながき・ゆうこ)
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 心地良いケアの継続 

顔や口の中は、誰でも突然触られたくはないところです。
信頼関係を築き、今から何をするのかということをきちんと伝え、コミュニケーションをとりながら進めます。

言葉以外の、表情や体のこわばり等にも気を配り、無理のない心地良いケアを続けていきましょう。

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