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「口腔ケア」という用語・定義について考えてみる第2回

「口腔ケア」の意義と役割について考えてみる。 第2回

投稿日:2011.06.22

口腔ケアには、要介護高齢者の誤嚥性肺炎を予防する効果があります。口腔ケアを行っていると誤嚥性肺炎の発症を42%抑制できます。(1)



誤嚥性肺炎による入院では約170万円の入院・治療費がかかります。口腔ケアの取り組みは患者にとっても国にとっても利点が大きいといえます。



また、口腔の病気を治療し重症化を防ぐことが、大幅な医療費の引き下げにつながることが明確になっており、高齢者で20本以上歯を持っている人は、医科医療費が約2割前後安くなるとされています。(2)



80歳の方が全員、20本以上の現在歯を持てば、医療費は1兆円超が削減できるとの試算もあります。



残存歯が多く残るほど歯科医師による適切な口腔管理ならびに歯科衛生士による適切な口腔衛生管理といった歯科医療スタッフの活躍が強く求められるのです。



歯科医師や歯科衛生士がおこなう「口腔ケア」の取組みの特徴は、口腔の衛生状態の改善や嚥下機能、口腔機能低下予防の目的だけでなく、歯科治療の一環として行われ、医学的管理を目的としていることが特徴として挙げられ、専門職として介護職、看護師などの他職種への助言も行っています。



その意味で、歯科医療従事者が行う「口腔ケア」は「専門的口腔ケア」とも言われています。介護職の行う「口腔ケア」では要介護者高齢者が口腔衛生管理を自分で行えない場合、介助の目的で日常的な口腔内の清掃(歯ブラシその他の補助用具)と入れ歯の清掃を行います。



一方、看護師による「口腔ケア」は急性期における基礎疾患により経口摂取ができない場合、口腔の廃用予防、感染予防、食事や粘液性の唾液による窒息予防などを主な目的としており、「口腔ケア」により、早期に経口摂取へと移行させ、基礎疾患の早期回復、早期退院へと促しています。



また、言語聴覚士は病院などの現場では嚥下障害に取り組むチーム医療でキーパーソン的存在となっていますが、その「口腔ケア」は嚥下障害や発声・発語障害を持たれた方々が主な対象となります。



今後、高齢者が増加していくなかで、要介護者への医療や介護の提供のあり方が現在以上に国民的な課題となっていくことは明白です。



さらに、要介護状態となっても「口から食べる」ことは重視されていく傾向にあるため、「口腔ケア」や歯科治療など、歯科からのアプローチがますます必要とされる時代となるでしょう。



そのために2012年の医療保険と介護保険の同時改定にあっては、その二つの制度を有機的に結びつけ、一人でも多くの要介護高齢者に、適切な「口腔ケア」と歯科治療が提供されるように制度の改革を期待したいものです。



注釈
(1)「要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究」(2001年 米山ら)
(2)「兵庫県歯科医師会・平成14年調査」

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