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摂食・嚥下障害看護認定看護師座談会第2回

摂食・嚥下障害看護認定看護師座談会 『高齢患者の「口から食べる」について考える』(後編)

投稿日:2015.09.24

ファシリテータ(写真中央)
口腔リハビリテーション多摩クリニック院長、日本歯科大学教授
菊谷 武 先生
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会理事
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
日本老年歯科医学会指導医・認定医
日本障害者歯科学会指導医・認定医
<座談会出席者 〔摂食・嚥下障害看護認定看護師〕 >
(写真左から)
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 杉山 理恵 先生
戸田中央リハビリテーション病院 兼本 佐和子 先生
日本医科大学多摩永山病院  渡部 愛弓 先生
つくばセントラル病院 古田 良恵 先生

理想的な地域連携のあり方

菊谷:摂食・嚥下障害のある患者さんが安心して生活できるためには、どのような地域連携のあり方が理想でしょう?

杉山:同じグループ内に、急性期、回復期、療養型の病院、特養(特別養護老人ホーム)などがあって、さらに訪問看護師まで揃っていたらいいと思います。そうすれば、地域包括ケアシステムを構築しやすいのではないでしょうか。
菊谷:医療情報の提供や風通しのよさで考えれば、それはいいですね。ほかの施設の方々とコミュニケーションを取るにも、手紙を書いたり、電話をしたりする必要がありますから。ところで、嚥下障害を抱えた方が在宅に戻るとき、独居ではなく家族がいることが条件になりますか?

古田:嚥下障害で経管栄養に移行した患者さんは、ほとんどが施設に移ります。ただ、経済的な面が大変という方も多く、在宅の場合はご家族に食事介助や調理方法についての指導をして、安心して在宅生活が送れるようにしてから退院していただいています。

兼本:独居で在宅に戻るのは難しいですね。摂食嚥下障害のある患者さんが退院された場合、当院で行っていた訓練を在宅で継続するのも難しいと思われます。訪問で嚥下訓練ができるSTや看護師も少なく、ケアの充足ができていないことも少なくありません。いわゆる”嚥下難民”をなくすためにも、地域で摂食嚥下障害を支援できる体制を整えていくためにできることを模索しています。
菊谷:杉山さんのところでは各地から患者さんがいらっしゃるため、情報を集めるのも大変かと思います。いかがですか?

杉山:地方在住の方もいますし、関東圏の市町村でも、地域として横のつながりがないので、どのように紹介していいかわからず困ることはありますね。

菊谷:患者さんに安心して自宅に戻ってもらうためには、地域を見据える目を持って支援できる看護師が必要です。そうすれば、より病院から在宅への流れがスムーズになるのではないでしょうか。

これからの摂食・嚥下障害看護CNの役割

菊谷:今のところ、摂食・嚥下障害看護CNとして求められる役割が、施設によって大きく異なるという現状があるように思います。そのような中、みなさんはどのような役割を担うべきだと考えていますか?

兼本:摂食・嚥下障害看護CNの役割の”見える化”が、できている施設とできていない施設があるため、まず”見える化”の仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。トータルマネジメントができる職種なので、摂食嚥下障害をもつ患者さんのリハビリや口腔ケアなどに介入することで診療報酬の加算の対象になれば、専従としてそのスキルをいかんなく発揮できると私は思います。
杉山:一個人では限界がありますが、チーム医療で活躍の場が広がっていくと思います。私はNSTに所属していて、チーム医療の一員でいることで病院全体のことが見えますし、栄養障害の原因や治療も多方面から見られる気がしています。

古田:最近では、ケアマネジャーさんなど他職種の方に食形態のお話をさせていただく機会も増えています。嚥下障害のリスクについても話していますが、本人が普通の水を飲みたがって周囲の人が根負けしてしまうこともあるようです。また、必ずリスク管理についてもお話しさせて頂いています。退院後、この方に嚥下障害があるのを知らずに親戚の方がシュークリームをあげて皮で窒息しかけた時にリスク管理の指導を受けていた娘さんがハイムリッヒ法で助けたケースもあります。嚥下障害に伴う怖さを広く理解してもらうための活動も充実させていきたいです。

菊谷:舌が上あごを押し上げる力である「舌圧」の値は、口腔機能の数値評価の一つとして注目されています。この舌圧を測定するツールである舌圧測定器を、ご存じですか? 嚥下の評価は、血液検査のように数値で表せないので、舌圧に置き換えるとわかりやすいのです。訓練の成果をみるときも、舌機能の客観的評価に役立ちます。

また、舌圧を測定する際、「舌でバルーンを口蓋に押し付けてね」などという指示をしますが、最初からうまくはできません。それができるようになるということは、人の指示を聞いて認識したということです。舌の筋力だけでなく総合的に機能が向上し、まさに食べる準備が始まったということになります。このように、舌圧は機能全般の回復の目安にしてもらえるといいと思います。
舌圧測定器
舌の連動機能を最大舌圧として測定するもので、得られた測定値は摂食・嚥下機能や構音機能に関する口腔機能検査のスクリーニングの指標となります。(本機器で得られた測定結果のみで、確定診断は行わないでください)
舌トレーニング用具 ペコパンダ
摂食、嚥下機能の向上のために、舌の筋力を強化するために開発された自主訓練用トレーニング用具です。
>>>日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックが監修している舌圧に関する情報が掲載されているサイト 
お口の情報室:http://orarize.com/


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