1. ホーム
  2. コラム
  3. 西山順博先生に訊きました 『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第7回
西山順博先生に訊きました 第7回

西山順博先生に訊きました 『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第7回

投稿日:2017.06.06

飢餓状態後の栄養補給の落とし穴、 リフィーディング症候群にご注意!

高度の低栄養状態にある患者に、いきなり十分量の栄養療法を始めることで発症するリフィーディング症候群(refeeding syndrome)。
低栄養状態高齢者への栄養補給を始める際にも、注意すべき代謝合併症です。

リフィーディング症候群とは?

秀吉は見た! 飢餓状態で一度にたくさん食べると?

長寿国日本には、低栄養状態高齢者が少なくありません。
以前は「粗食こそが長生きの秘訣」と「メタボ予防」が提唱されていましたが、近年は皆さんご存知の通り「年をとったら肉を食べなさい」と、良質なタンパク質をしっかり摂るよう、国を挙げて意識改革を呼びかけています。
しかし慢性的な低栄養、飢餓状態が続いている患者にいきなり積極的な栄養行うことで発症するリフィーディング症候群で、心停止による死亡例も報告されているのです。
兵糧攻めをよく用いた豊臣秀吉。
伝記「豊鑑」によれば、降伏してきた飢餓状態の敵兵たちは、秀吉が用意した粥をいきなり大量に食べすぎた結果、ほとんど死んでしまったといいます。栄養で元気にするはずが逆の結果を招いてしまい、秀吉は「飢餓状態で急に腹いっぱい食べると死んでしまうことがある」、すなわちリフィーディング症候群を知るのです。

リフィーディング症候群 はなぜ起きる?

飢餓状態は 、エネルギーをはじめビタミン・微量元素(リン、カリウム 、マグネシ ウム など )も不足して いる状態です 。
そこへいきなり大量の糖・アミノ酸が補給されると、大量のインスリンが分泌されることで、代謝合併症が惹き起きされます(図1)。

高リスク患者の発症予防のために

リフィーディング症候群は、再栄養開始後から1~2週間までに発症するリスクが高いといわれています。
高リスク患者(表)では初期投与エネルギーを制限し、必要なミネラルやビタミンを補って発症を予防します。
現体重×10kcal/kg/ 日(重症ならば5kcal/kg/日)程度から栄養補給を開始し、栄養状態、血液検査値、心不全の有無などをモニターしながら100~200kcal/日ずつ増量していきます。
目標量(25~30kcal/kg/日)は、1週間以上かけて徐々に増量していきます(図2)。

目標量計算時の体重は、やせている患者さんは現体重に基づいて計算しましょう。
重度の低栄養状態にある高齢者の栄養管理スタート時には、ナースのみなさんも指示栄養量と投与スケジュールを必ず確認してくださいね。
参考文献:⑴中屋 豊、他.リフィーティング症候群 四国医誌68巻1.2号
      p23・28 APRIL.25 2012.
     ⑵週刊医学界新聞(第2760号 2007年12月10日)・医学書院

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。



他の方が見ているコラム