1. ホーム
  2. コラム
  3. 【聴きある記】ナースマガジン栄養ケアセミナー
聴きある記

【聴きある記】ナースマガジン栄養ケアセミナー

投稿日:2017.08.23

早期経口摂取のための栄養管理の新潮流

Acute Stroke 患者に対する アウトカムを生む地域包括経腸栄養ケアの実践

わが国では、高齢化の進行により脳卒中有病者数は2025年まで増加傾向にある。
脳卒中発症後の患者に対する適切な栄養管理は、経管栄養から経口栄養への橋渡し(ENSBOI)として、高齢者の健康寿命回復に貢献できる可能性が大きい。
急性イベント後の高齢患者の生活をいかにサポートしてゆくかをテーマに、本セミナーは、大阪・東京・名古屋の3か所で開催された。
本誌今号のテーマ「退院支援~地域での暮らしを支える」に関連し、「地域包括経腸栄養管理」を提唱する水野英彰先生の講演要旨を紹介する。
【取材・執筆】西谷誠(ニュートリション・アルファ)

認定看護師を中心とした新たな経腸栄養管理ENSBOI の実践

厚生労働省の調査によると、高齢者の約2割は低栄養の傾向にある。
また、西多摩圏域の高齢者を調査したところ、約1割がフレイル状態にあると推測された。
低栄養状態では負のスパイラルに陥り、急性イベント率が上昇する。

急性イベント発症後の栄養管理が重要

自施設で急性イベントを発症した236症例をみると、平均BM I は17.52、平均下腿周囲長24.2cm。
動的栄養指標では、O-PNI 38.1±5.4、TP 5.9± 2.1 g / d l 、アルブミン2.8 ± 2.3g / d l 、プレアルブミン14.3±4.7g/dl で栄養状態は悪かった。
こうした患者には早急に栄養補給をする必要があるが、経口摂取による栄養管理にはハードルが多い。急性イベント後に最適な栄養管理を行い、全身状態の回復を目指すことが必要となる。
西岡らによるAPPLE スタディでは、低栄養が摂食嚥下機能回復を妨げる重要因子であることが示されている。
急性期脳卒中患者では嚥下障害が高率で起こり、栄養状態回復/維持には早期からの受動栄養管理が重要となる。
「重症患者の栄養管理ガイドライン」(日本集中治療医学会)では、静脈栄養と比べ経腸栄養では感染性合併症が低率で経腸栄養を強く推奨するとされ、その他の学会のガイドラインでも早期経腸栄養が推奨されている。

Enteral Nutrition Support for Bridge to Oral Intake(ENSBOI)

ENSBOI は急性イベント後に最適な経腸栄養管理を行うことにより、malnutrition を最小限にし、リハ栄養を継続させ、①経腸栄養からの完全離脱、②1日エネルギー充足率50%以上の経口摂取回復をめざす。
急性イベント発症時から1週間:①イベント後の全身状態維持回復、②静脈栄養からの離脱、③体重減少またはタンパク質異化抑制、を目的とする。
経鼻胃管による液体栄養剤を中心とした経腸栄養管理がよい。
経腸栄養に求められる機能性としては、抗炎症、腸内環境の安定化、タンパク質異化抑制、消化吸収負荷の少ない組成があげられる。
亜急性期から慢性期(発症約1週間〜3か月):①リハビリと併用し健康寿命回復、②経口摂取への完全〜一部移行、③体重増加、タンパク質同化促進をめざす。
短時間で投与するためには、ボーラス投与で合併症が少ない流動食が求められる

粘度可変型流動食の有用性

粘度可変型ペプチド栄養材(ハイネイーゲル)は、摂取時は液体だが胃内で半固形化し、脂質の約30% が中鎖脂肪酸(MCT)という特徴がある
PPI 投与例では胃酸が抑えられるためゲル状にならない場合があるので、胃食道逆流対策として、食後に乳酸Ca 投与が勧められる。
腸内細菌と便の性状は深く関係し、善玉菌が増えると便の㏗が高くなる。最近、時間栄養学が注目されている。
液体栄養剤では食事ごとの投与時間は平均120分であるのに対し、粘度可変型流動食では平均20分に短縮され、サーカディアンリズムに適っている。
当院でのENSBOIの実際を図1に示す。
高齢者ではコラーゲン産生量が低下し、それにともない骨関節、血管、皮膚、眼などの機能が低下する。
ハイネイーゲルは5..76g /400kcalのコラーゲンペプチド(CP)を含有し、700kcal 投与で10g以上のCP を摂取できる。
CP を補充することにより、創傷治癒、骨代謝が促進され(図2・3)、脳卒中後の褥瘡予防、リハ栄養に貢献できる。
ENSBOI では、これらの情報を共有した上での多職種連携と地域包括ケアが重要である。
【協賛】株式会社大塚製薬工場/ イーエヌ大塚製薬株式会社/ 株式会社三笑堂/ 株式会社栗原医療器械店/ 株式会社名古屋医理科商会
※田中先生・三鬼先生の講演要旨は次号(21号)でご紹介いたします。

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。