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セミナー・イベントレポート

セミナー・イベントレポート特別篇 第21回日本病態栄養学会年次学術総会

投稿日:2018.01.31

■第21回日本病態栄養学会年次学術総会

日時:2018年1月12-14日
会場:国立京都国際会館(京都市)
会長:山田祐一郎先生
(秋田大学内分泌・代謝・老年内科学)

3日間のプログラムの中から一部紹介する。

●招待講演

我が国の医療保険の現状と展望

演者:鈴木俊彦先生(厚生労働省保険局)
1)社会保障を取り巻く状況

わが国の人口は減少局面にあり、2065年には総人口は9000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になる。
高齢化率は1980年から2013年までの33年間で約16%上昇し、医療・介護・老齢年金の規模は約11%上昇している。

2)医療保障―当面の課題と対応の方向性

団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えると、2018年、2024年が医療・介護保険同時改定となり、その意味でも今年度の改定は重要。
①医療機能の分化、連携、地域包括ケアシステムの構築推進、
②効率的・効果的な医療・介護の提供(在宅医療・介護サービス充実)、介護人材の確保、適正化・重点化が骨子となる。
地域医療構想による2025年の病床必要量は2015年より約5万床減の119.1万床となる。

3)これからの社会保障―改革の次の一手を考える

今後の社会経済構造の変化を見通した総合的な取り組みが必要。
キーワードは格差,貧困で、とくに子供の貧困と高齢低所得者の増大に留意すべき。
年金・医療・介護を通じた低所得者支援強化が必要。
全世代・全対象型地域包括支援体制を構築する。
●合同パネルディスカッション1

生活習慣病とサルコペニア

栄養療法推進協議会に参加している8学会の代表が、標記テーマについて講演した。
冒頭、座長の学会担当理事、門脇 孝先生(東京大学)は、2015年に発足した栄養療法推進協議会の設立趣旨について、
「高齢化社会を迎え、一人が複数の疾患を有していることが多い。肥満・内臓脂肪蓄積に加え、サルコペニア・フレイルなど病態が多様化している。
一方で、関連各学会の栄養に関するガイドラインについては、十分な協議・調整が行われず、一部に不整合が認められる」と述べた。
座長 
日本病態栄養学会 理事長、日本栄養療法協議会 会 長   清野 裕 先生
日本病態栄養学会 理事、日本栄養療法協議会  担当理事  門脇 孝 先生

1.ADL低下防止に向けた栄養療法確立に向けて

矢部大介先生(日本病態栄養学会/関西電力医学研究所)

サルコペニア+低栄養により死亡率が上昇する。
低栄養予防には多様な食品摂取、咀嚼力が必要。サルコペニア予防には、運動+栄養による複合的介入が重要。

2.高齢者の特性とサルコペニア

葛谷雅文先生(日本老年医学会/名古屋大学大学院)

高齢者は成人期と比べると体組成が変化している。高齢者の低栄養は考えられているより多く、要因として多病、多剤服用、精神疾患などがある。
要介護となる要因(ロコモティブシンドローム、フレイル、サルコペニア、認知症、転倒・骨折)を予防する必要性がある。
65歳以下:過栄養、メタボ予防、65-75歳:過栄養・低栄養両方への個別対応、75歳以上:サルコペニア、フレイル、低栄養予防、という年代別栄養管理が必要。

3.保存期CKD患者の切実なアウトカムとしての身体活動低下

日本人の透析導入患者の短期予後は世界と同等に悪い。これには年齢と身体機能が強く関係している。CKD患者の運動機能は保存期からすでに低下している。
保存期CKD患者の身体機能は生命予後に関連する。
筋肉量・筋力が低下している場合は、たんぱく制限を再考し、運動指導を行う。

4.サルコペニアを合併した透析患者への対応

菅野義彦先生(日本透析医学会/東京医科大学)

糖尿病の血液透析患者では、十分なエネルギー量を摂取していれば現在のタンパク質推奨量で骨格筋量は減少しない。
糖尿病、高齢透析患者における食事摂取量と骨格筋量の関連は明らかでない。

5.肝疾患におけるサルコペニア

白木 亮 先生(日本肝臓学会/岐阜大学)

肝疾患患者では40%がサルコペニア。学会ではCT、BIA、握力によりサルコペニアの判定基準を作成している

6.糖尿病とサルコペニア

荒木 厚 先生(日本糖尿病学会/東京都健康長寿医療センター)

サルコペニアは糖尿病発症の危険因子。
サルコペニア肥満で糖尿病がおこりやすくなる。高齢者のサルコペニアは、中年者と異なり最近発症の糖尿病のリスクとなる。糖尿病でのサルコペニア、フレイルには、筋肉量よりも身体能力の低下が重要。
サルコペニアの治療として、レジスタンス運動、タンパク質の十分な摂取、BCAA、ロイシン、HMB、ビタミンD、インスリン抵抗性改善薬などの報告がある。

7.サルコペニアと身体活動

石井好二郎先生(日本肥満学会/同志社大学)

日本人若年女性の骨格筋指数を調べたところ、半数以上がプレサルコペニアであった。
遅筋線維は加齢により減少する。サルコペニア予防としてステップ運動が効果的。

8.活動性改善のためのタンパク質摂取と運動療法

梅本安則先生(日本リハビリテーション医学会/和歌山県立医科大学)

生活習慣病とサルコペニアは互いに関連している。
高齢者・活動性が低下したサルコペニア患者は、積極的な運動療法とそれに見合ったタンパク質量が必要。

討論では、

①DEXA等は一般的ではないので、骨格筋をどう測るかが問題、
②タンパク質摂取量の基準として、理想体重、標準体重、現体重のどれがよいのか、
などについて議論された。

※取材・執筆:西谷 誠(ニュートリション・アルファ)

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