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取材レポート

取材レポート「手指衛生遵守率の向上のため洗いたくなるような洗浄剤を」

投稿日:2018.03.02

正しい手指衛生は、感染対策の基本です。しかし、手荒れが発生していると、手指衛生自体が刺激となり、遵守率の低下につながるといわれています。
感染管理認定看護師として手指衛生遵守向上に取り組んでいる札幌東徳洲会病院の石塚孝子さんにお話を伺いました。

手荒れがある人の手指衛生を何とかしたい

札幌東徳洲会病院では、2011年にAPIC(米国感染管理疫学専門家協会)による第三者評価を受けた結果、「手指衛生が十分できていない」と指摘されたことをきっかけに、改めて感染管理に取り組んでいました。
その後、2015年にはJCI (国際的な医療機能評価)の認証を取得し、感染対策に対する職員の意識はよリ高まっています。しかし、手指衛生の徹底を阻んでいたのが、頻回な手洗いも影響している職員の手荒れ問題でした。
「当院では、WHOのガイドラインに基づいて日々の手指衛生を行っていますが、推奨されている5つのタイミングで行うには、洗浄剤と流水による手洗いが困難な場合があるため、擦式アルコール製剤の使用が第一選択となります。
しかし、手荒れがあると、擦式アルコール製剤の使用も刺激になります。これまでも手荒れやアトピー性皮膚炎などの理由で手指衛生ができない人には、皮膚科受診してもらい軟膏を処方してもらうか、市販の保湿クリームを使用してもらうことで対応してきましたが、なかなか改善できませんでした」
と石塚さんは言います。
そのため、患者に対する感染リスクと職員の健康管理の両面から、対策を講じなければと考えていました。
手荒れと黄ブ菌のバイオフィルムの関連性について、2017年2月開催の日本環境感染学会学術集会の際に聞き、さらにバイオフィルム除去機能が報告されているオレイン酸洗浄技術の存在を知った石塚さんは、オレイン酸洗浄技術が活用されているソフティEX-⊂ARE泡ハンドウォッシュのサンプル品を、手荒れが重症化している職員に肌のターンオーバーのサイクルを考慮して約4週間テスト導入をし、モニタリングしました。
「使用者からは『亀裂があっても手洗いの苦痛を感じない』『しっかり洗えるうえ、しっとり感がある』など好評で、『ぜひ継続して使いたい』と希望する声もありました。
これならば手荒れを持つ職員も手指衛生の遵守ができると考え、それが採用の決め手となりました」
数種類の他社製品とも比較した中で、泡切れのよさ、洗いあがりの心地よさなどの面でも最も優れていたといいます。
エビデンスの充実も、ICTやICC、事務部門への共有、採用決定に役立ちました。
「当院では正しい手洗いを習慣づけるため、各部署から『手指衛生トレーニング調査票』を提出してもらっています。これは毎月、職員同士でペアになり、手指衛生の手順や、全工程に何秒かけているかを確認し評価するものです。ICTで全職員の手荒れの状況を調べることが困難なため、手指衛生トレーニング調査の際に、手荒れの有無のチェックも追加し、実態を調べられるよう工夫しました。
6月に調査を開始して、全職員843名中648名(76・9%)から回答があり、そのうち手荒れがあると回答した職員は85名(13・1%)でした。
院内の手荒れ状況を具体的に把握できてEX-CAREの効果検証にも役立ちました。今後、秋から冬にかけて、手荒れが見られる人も増える可能性はありますが、引き続き、データを取っていきたいです」

他部署との課題の共有から新製品の導入が決定

新しい洗浄剤の導入を考えたとき、まずICTからICCへ職員の手荒れの現状を知ってもらい、問題を共有するところから始めたそうです。その上で、洗浄剤使用者の使用前後の手の様子を写真なども使って示し、手荒れ対策に病院全体で取リ組む必要性と、そのために有効だと考えられる洗浄剤について話して、検討してもらいました。
「事務部門も交えて協議を行い、コスト試算をし、複数の製品と比較検討を重ね、手荒れを保有する職員専用の洗浄剤として導入が決定しました。何事も情報を共有して協力してもらうことが大事ですが、今回も事務部門などの協力が得られ、検討から導入までがスムーズだったと思います」

今回、この製品を使用できるのは、手荒れ(亀裂、炎症、落屑、創傷など)を保有する人のみという条件で、手荒れのある職員が一人でもいる部署に置いています。
「手荒れのない人が使用する洗浄剤も、従来の製品は『乾燥を感じやすい』との声が多かったため、同時に見直して、低刺激な洗浄剤に変更しました。
また、変更することでわずかながらコストが削減できたため、その分を手荒れを保有する職員専用の洗浄剤に回しても、トータルでコストアップせずにすむようにしました」
製品の紹介、導入目的や適正使用のお願いなど、院内の掲示板へのお知らせの掲示、月1回発行している院内報『ICTニュース』への掲載、全職員への院内メールでの配信、電子カルテ上での情報配信など、職員全員が確実に共有できるよう徹底しています。
また、洗浄剤本品に「手荒れのある職員専用」のラベルを貼り、製品の払い出し管理を行って乱用防止を図るなど、様々な工夫をしています。

手洗いをしたくなるような洗浄剤を導入したかった

「とにかく手荒れのある職員も手洗いをしたくなるような洗浄剤を導入したかったんです」
と石塚さんは言います。
手荒れがひどくなると、手洗いを回避しがちになるため、手指衛生の遵守率を下げる一因となリ、それが院内感染や手荒れを保有する職員自身の感染のリスクを高めてしまいます。
みんなが気持ちよく手を洗えて、感染対策が万全にできることが理想です。

「スキンケアで重要なのは、手荒れなどを予防することです。現状は手荒れしてからの使用ですが、手荒れリスクのある人の予防のために使用できる仕組みづくりが次のステップだと考えています」

これからも毎月、手荒れの状況を評価して、悩む人を減らしていくことが課題だと語ってくれた石塚さん。取材を通して、毎日行う手洗いのためだからこそ、使いたくなるようなものを導入することが大事だと実感しました
詳しくはこちらからクリックしてください。
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HP:http://www.kao.co.jp/pro/
■取材協力/医療法人徳洲会 札幌東徳洲会病院
〒065-0033札幌市東区北33条東14丁目3ー1
TEL:011-722-1110
HP:https://www.higashi-tokushukai.or.jp/

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