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看護・医療 しゃべり場 対談編「オーラルマネジメント視点から口腔ケアの意義を再考する」

投稿日:2018.07.09

全身感染症予防や経口摂取維持回復のため、オーラルマネジメントの重要性が見直されるようになってきました。
チーム医療に歯科が積極的に参加している施設も増えています。
今回は、藤田保健衛生大学医学部歯科・口腔外科の松尾浩一郎先生と、同大学病院看護長で摂食・嚥下障害看護認定看護師の三鬼達人先主のお二人に、お話を伺いました。(文中敬称略)

歯科の役割はスタッフのスキルや意識を上げること

松尾 治療が優先される急性期医療の現場では、口腔ケアは軽視されがちです。
しかし当院の歯科は、入院時から義歯の作成や修理を行い、感染対策チームとしての口腔衛生管理への介入、そして摂食・嚥下チームとして患者さんの食支援にまで関わっている点が特徴といえます。

三鬼 以前は歯科医師や歯科衛生士が病棟に来ることはほとんどなく、口腔ケアは看護師たちだけで行わなければいけない状況でした。
松尾先生が赴任されてきたのがチャンスだと思い、勉強会を開いて院内全体で口腔ケアに取り組む環境を築いてきました。
松尾 lCUの患者さんをはじめ、誤嚥性肺炎になるリスクの高い人が多いので、早期から感染対策としての介入が大事ですね。術前外来で歯科の診察も行い、口腔の状態が不良な場合は、治療や指導を行います。
また、化学療法や薬の副作用により口腔内に問題が出るケースにも注意しています。

三鬼 急性期のファーストタッチから歯科が介入しているため、一般病棟に移ってきたときにも記録を見れば、その人の口腔内の状態がわかります。
歯科衛生士も病棟内にいるので、困ったときに相談できるのはありがたいです。
より連携を取りやすくするために、私たち認定看護師が調整する役割を担っていくべきだと思います。
松尾 医師は疾患の治療が中心になりますから、患者のQOLやADLに関することは看護師が見落とさないようにサポートしてゆくとよいでしょう。

三鬼 看護師は、学生時代から口腔ケアについて学習する機会があまりないんです。入職後も、熱心に取り組んでいない病院・病棟だと、知識やスキルを指導してもらえない現状があります。
未だにガーゼ清拭だけの施設もあるようですし。

松尾 抗生剤は誰が使っても同じ効き目がありますが、口腔ケアは上手な人と下手な人では効果がまったく違いますからね。正しく行えるようになって、初めて感染予防ができるわけです。

三鬼 教えてくれる人がいないと、自分がやっていることが本当に正しいか自信が持てない、という声もよく聞きます。孤軍奮闘している人が多いと思います。

松尾 フィジカルアセスメントと同様に口腔内アセスメントも行い、その結果に対してどうアプローチするかが重要です。一人だけ手技がうまくなっても不十分で、病棟単位で取り組まなければいけません。

三鬼 誰か一人が頑張っていても、全体のボトムアップにつながらないと、なかなか浸透しませんね。最初の状態からどれだけ改善したかがわかるよう、共通の評価ツールを用いてケアの質を担保することが必要でしょう。
共通言語で評価しながら、課題を抽出し、適切なケアを実践しその結果を再評価する、というサイクルを構築し、ケアの質を向上させていきたいと思います。

松尾 口腔ケア用品のコストを考えてしまうところもあるようですが、誤嚥性肺炎を発症した際のデメリットを考え、リスクに備えてほしいですね

オーラルマネジメントを看護業務として定着させる

三鬼 回復期病棟では嚥下障害のある人への経口摂取訓練をするため、そこで誤嚥性肺炎を起こすこともないとはいえません。ただし、それを恐れて訓練をしないと、廃用性症候群による誤嚥性肺炎が起きてきます。
だからこそ、誤嚥をしても肺炎にならないよう、口腔衛生管理が大切なのです。

松尾 胃痩造設された方でも、退院後に機能が回復し経口摂取の兆候が現れるケースもあります。しかし気づかれずにずっと胃痩栄養、ということもあります。
口腔機能の回復の状態に応じて、嚥下機能の再評価をするべきです。
訪問看護師に働きかけるのも一つの方法ではないでしようか。
三鬼 患者さんの食事の様子を日頃見ている私たち看護師が、変化に気づいて報告し、多職種で検討していく必要がありますね。

松尾 最近は、施設にも訪問歯科が入って、食事の仕方や形態が合っているかを確認するミールラウンドを行うようになってきています。ただし、施設の負担を増やすことになる可能性もあるので、事前の相談が必要です。

三鬼 入院中には食べるのが難しくても、摂食・嚥下機能が回復すれば食べられる可能性も上がります。そのために私たちは、何らかの形で介入して、次のステップにつなげたいと考えています。
今後、スタッフのミーティングでも口腔ケアと摂食・嚥下リハビリについて理解してもらい、病棟に広めていこうと企画しています。
体位変換やおむつ交換と同様、オーラルマネジメントも看護の必須業務の一つになればと思います。

松尾 退院後の口腔状態を低下させないためには、訪問看護・介護に関わる人たちのスキルアップも必要です。OHAT(何ぞや第17回)の活用が広まれば、在宅や施設入所の患者さんの情報も共有できるようになります。
地域包括ケアシステムの中でも多職種と連携し、私たちの存在と私たちの活動によるアウトカムを示していきましょう。
(2018年3月22日取材)

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