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聴きある記

聴きある記『ナースマガジン慢性期看護セミナー』第2回

投稿日:2018.09.13

ナースマガジンでは、東京・大阪・福岡において在宅療養支援をテーマとするセミナーを開催しました。
前回に掲載した日本慢性期医療協会の会長である武久洋三先生の基調講演に続き、2回目となる今回は東京会場で水野英彰先生にお話しいただいた内容をご紹介します。
(編集部まとめ)

経腸栄養管理におけるリスクマネジメント 慢性期栄養管理の工夫 〜トラブルを未然に防ぎケアの質を高める〜

健康寿命を延ばすために 高齢者手帳の検討を

健康寿命と平均寿命は違います。厚生労働省が実施した「平成26年国民健康・栄養調査」によると、日本では65歳以上の高齢者のおよそ2割が低栄養傾向にあります〔図1)。
低栄養とフレイルがオーバーラップして、筋力が減少した状態をサルコペニアといいますが、フレイルは65歳以上人口の約2割、サルコペニアの有病率は約1割です。続計学的数字は、都道府県による違いもあります。
図2で、身体機能障害にあたる箇所を「魔のトライアングル」と呼ぴます。
当院で脳疾患や肺炎など多岐にわたる急性イベントを発症した高齢患者は、ほぼ魔のトライアングルが進行していくことで疾患を生じていました。

高齢化社会で医療崩壊を抑制するためには、いかに早くナーススタッフが患者のフレイル・サルコペニア・低栄養などに気づき、対応できるかが大切です。
そこで、私は世界に誇れる日本の母子手帳と同様に、包括医療の中で「高齢者手帳」があると、大きな武器になると思います。なぜなら、患者の健康状態や体重などをモニタリングすることが重要だからです。

その人が健康だったときどういう状態だったか、どれくらいの体重だったかといった情報がまったく包括化されてないため、リハビリテーションや栄養管理をどうすればいいのか、どの状態まで戻せば健康寿命回復なのかという道しるべさえないのです。

最近は、栄養評価の指標としてCONUTスコアを使っています。これはアルブミン、リンパ球数、総コレステロールの3つの値から評価するもので、入院時にすぐ判断できます。基本的に、低栄養によるフレイル、サルコペニアが急性イベントを引き起こしているほか、BMIが18.5以下の高齢者は死亡のオッズ比が上がります。医者は病気を治すことに特化しますが、急性治療だけでなく、低栄養対策なども同時に行わなければ、治療後の栄養状態は非常に悪くなり、寝たきりにもつながってしまいます。

不適切な食事介助を行うことで 患者を低栄養にさせている?

高齢者の急性イベント治療終了後の栄養状態は総じて悪く、栄養管理を行っても成果が出るかどうかは厳しいのが現状です。
現在、日本で問題になっているのは、経口摂取にこだわるあまり、食事介助者が患者を低栄養にさせている可能性があるということです。海外ではシップフィーディングといって、3食の食事の合間に経口補食をすることで体重の減少や、認知力の低下を抑制できることがわかっています。
摂食意欲の落ちた高齢患者が十分なエネルギー量を満たすには、分食をすることが大事です。

ESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)では、受動AHN(人工的水分・栄養補給法)導入の基準が7日以上の欠食、1日エネルギー充足率60%以下が10日間となっています。日本ではもともと低栄養の人が多いので、海外の基準を参考にしつつ、各病院や施設でガイドラインを決めてほしいと思います。私の場合は、3〜4日間の欠食があれば代替栄養を行っています。

栄養投与ルートには経腸と経静脈がありますが、日本集中治療医学会のガイドラインでは経腸を強く推奨しています。死亡率に差はありませんが、感染性合併症率が優位に低いのは経腸です。経静脈では絨毛の委縮が見られ、免疫機能が低下することが知られています。また、腸内環境を整えることで善玉菌が増えると、短鎖脂肪酸がサイトカインに関与して合併症を抑えます。そのため、「腸が使えるなら腸を使え!」というのが原則です。

経腸栄養管理で目指すアウトカムは、経ロ摂取に移行して生活の質を向上させるためか、エンドオブライフケアを充実させるためかで違います。どちらにしても栄養管理を工夫し、何を目標にケアプランを作成していくかが非常に重要です。

経腸栄養管理では 栄養剤選択がポイント

経腸栄養も食事介助の一つです。経腸栄養剤は、大きく液体、半固形化、半固形状、粘度可変型に分かれます。誤選択をすると事故につながる可能性もあるため、それぞれの特性を理解し、経ロよりもリスクが高いと意識しながら行った方がよいでしょう。栄養剤の選択を行うナースは、栄養管理の知識を持った上で、任務を任されるべきだと思います。選ぶ際のポイントは次の通りです(図3)。
経腸栄養剤の誤選択によって医原性の下痢や褥瘡、誤嚥性肺炎などが発生すると、患者への負担および医療費の損失が生じるなど、病院経営にとって大きなマイナスになってしまいます。
誤選択を少なくするためによいのが、胃内でゲル状に変化する粘度可変型流動食(ハイネイーゲル)です。粘度可変型流動食は胃痩でも経鼻経管でも投与でき、食事時間を大幅に短縮できる上、血糖スパイクが起きにくいメリットがあります。食物繊維のペクチンが含まれているので、腸内環境の改善にもつながります。

スキンフレイル(※)の予防が トータルコストの削減にも

ハイネイーゲルには、線維芽細胞を活性化し、増やす働きのあるコラーゲン加水分解物(コラーゲンペプチド)が入っています。コラーゲンペブチドは「褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)」でも褥瘡発生後に有効な栄養素とされています。

臨床研究においては、炎症期を過ぎた段階で投与することで、傷の治りを早くしたという結果が出ています。
1日5g以上摂取すると効果を発揮するといわれていますが、それだけの量を食事から摂取するのは困難なので、サプリメンテーションが必須です。
ハイネイーゲルには300kcalで4.32g、400kcalで5.76gのコラーゲンペブチドが含まれています。褥瘡やスキンテア(※※)などが見られる人に対してはもちろん、予防的に3食のうち1食でも活用すると、皮膚の強化対策に役立つ可能性があります。
トータルコストを考えると、安価な栄養剤を選ぶよりスキンフレイルを予防できる栄養剤を選んだ方がよいでしょう。
今後の医療においては未病対策と、イベントが起きてからのリカバリーが重要です。特に慢性期のウェイトが大きくなってくると考えられますので、愚者も看護・介護者も楽で安全な療養生活を送れるよう工夫していく必要があります。
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※スキンフレイル:皮膚が脆弱で褥瘡発生リスクの高い状態
※※スキンテア:摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる真皮深層までの創傷
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1)土師誠二:経腸栄養の基本 起こりやすい経腸栄養合併症と予後・改善策.Nutrition Care 10:990-995,2017.
2)Bozzetti F:ESPEN guideline on ethical aspects of artificial nutrition and hydration. Clin Nutr.2016 Jul 16.

※次回は政田美喜先生・高木良重先生の講演要旨をご紹介いたします。
第2回 栄養管理 水野 英彰 先生
第3回 局所管理・スキンケア 政田美喜先生・高木良重先生

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