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達人に訊く!

達人に訊く!被災者の健康を守る ここがポイント

投稿日:2019.02.13

もし、ライフラインが止まったら…感染対策はどうしたらいいの?体の清潔ケアは?身体管理は?水やお湯がでない時の食事や口腔ケアってどうするの?そんな避難所生活でのケアを、達人の皆さんにお訊きしました。

手指衛生

感染症を予防するには手洗いが重要ですが、ライフラインが途絶えたときの手洗いは難しいと思います。その場合はアルコール含有手指衛生薬を用いるとよいでしよう。
特に調理に関わる人は、食中毒予防のために手指衛生の徹底を呼びかけましょう。

注意

流水手洗いができる場合、共用タオルは避けましょう。

マスクの着用

避難所では多くの人々が近接して生活しています。埃や多くの病原体(細菌・ウイルス)が咳やくしゃみの際に伝播することが多いため、感染しない、拡大させないよう、咳・くしゃみをしている人ヘマスクの着用を呼びかけましよう。

環境整備

避難所では様々な人が出入りするため、感染症予防のためにも、清潔な環境を整えること、物品を清潔に保つことが重要です。
感染症が移りやすい場所として、トイレ・おむつを替える所・食事を準備するエリア・その他嘔吐物や便などで汚染された場所があります。
これらの場所はその他の場所よりも清潔に管理することが重要となるため、消毒薬を日常的に用いたほうがよいでしよう。

注意

次亜塩素酸ナトリウムは、製品ごとに濃度が異なります。市販の漂白剤を使用する場合は、次亜塩素酸ナトリウムが含まれていることと濃度(概ね5~6%が多い)を確認しておきましょう。
例【食器類の消毒の場合】0.02~0.05%

口腔ケア

災害時のロ腔ケアは後回しにされがちですが、口腔ケアを行うことは肺炎予防やロ臭予防につながります。デンタルリンスでロをゆすぐ、ふき取りタイプのロ腔ケア用ウエツトシートでロの汚れを拭き取るなど、経管栄養の方も忘れずにケアを行いましよう。
食べかすや痰がこびりついてる場合は、保湿ジェルをつけたロ腔ケア用スポンジで除り除きます。

清潔管理

発災初期は入浴できないことか多いので、主に清拭により身体の清潔を保ちます.
【水が使える場合】
バケツや洗面器に水をため、タオルを浸し、しぼってふき取ります。
【お湯が使える場合】
お湯をため、温タオルで体をふき取ります。背中やお腹にタオルを広げて温めると、リラックス効果や排便促進の効果があります。温タオルのあとは乾いた清潔なタオルで、湿り気をふきとりましよう。足浴も血行促進効果があります。
【水が使えない場合】
制汗スプレー、ドライシャンプー、顔用汚れ落としシート、体拭きシート、ふき取り式皮膚洗浄剤(保湿効果のある製品もあり)なども活用し、清潔を心がけましょう。

身体管理

【寒さ対策】
体育館や教室などの床に寝るときは、床の冷たさが直に体に触れないよう、一番下に段ボールを敷くと断熱効果があります。
【健康管理】
避難所での1人あたりの居住スペースは狭く、寝床で過ごす時間が多くなり運動不足になりがちです。さらに、集団の中でのトイレ利用が気になって、水分摂取を控えるような状態が続くと血栓ができやすく、下肢静脈瘤やエコノミークラス症候群発症のリスクが高まります。
こまめな水分摂取と共に、軽い運動、散歩、ストレツチ、マッサージ等を行うよう、声をかけたり一緒に体を動かしたりするとよいでしょう。

環境の変化や不安による自律神経の乱れから、便秘・不眠・高血圧・頻尿などの訴えも多く聞かれます。心身の緊張を解きほぐし、孤立やひきこもりを招かないよう、お茶会など会話の場を提供することも大切です。
水害時は水が引いたあと、乾燥した土埃が舞い上がりやすくなります。結膜炎や目・喉の痛みに対するケアも指導しましょう。
支援物資の不足や食品の偏り、食べ慣れない物など、避難所では低栄養や脱水、栄養バランスの乱れが生じがちです。特に高齢者や嚥下困難者は、食事の用意、食事環境の調整、食後の休調変化の観察、食中毒発生予防など、多岐にわたって注意が必要です。

食事の用意

支給された食事は、食べやすい大きさに切ったり、必要に応じて再調理してアレンジをするとよいでしよう。冷たいものは温かく(パッククツキング※を活用)、パサパサしたものは飲み込みやすく(牛乳、スープ、濃厚流動食に浸すなど)して、高力ロリーで蛋白質・ビタミン・ミネラルを含むものをまんべんなく摂れるよう指導しましよう。
※パツククッキング:ポリ袋に食材を入れ炊き出し用のお湯を利用して火を通す調理法。
ライフラインが途絶えてしまってもカセットコンロ・鍋・水・ポリ袋だけで同時に何種類もの簡単な調理ができます(雑炊、パン粥、温野菜、他)。

水分補給

脱水予防のための水分補給には、水分を素早く吸収できるよう、糖分と塩分を含むイオン飲料が推奨されています。
1日にどのくらいの水分を摂ったか、量を意識してもらうようにしましょう(ペツトボトルー本で500mLなど)。ペットボトルの飲み物は、直接ロをつけず、コツプなどを利用するよう指導しましょう。

【参考】
一般社団法人日本環境感染学会:「大規模自然災害の被災地胃於ける感染制御マネージメントの手引き(第1版)2014」
国立健康・栄養研究所/公益社団法人日本栄養士会:「避難生活で生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について2017〔改訂)」

【写真提供】
S…佐藤純 / P…©ピースボート災害ボランティァセンター(PBV) / Mitsutoshi Nakamura (敬称略)

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