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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL第16回

ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.04_その2

投稿日:2019.02.20

編集日:2023.03.03

「気づき」のポイント

医療法人社団日翔会理事長の渡辺克哉先生は、在宅患者の「食べられない(食べない)」に着目し、在宅食支援のアプローチおよび実施上のポイントを押さえ、地域の多職種と連携しながら最適なケアを提供してきた。
在宅患者が抱えている食事の問題を理解するための考え方として、「具体的な事実を集め、そこから想像力を駆使して問題の根幹を理解するよう努める、という二段構えのアプローチが必要」と渡辺先生は語る。
以下が具体的なポイントだ。

➊食事の問題について、基礎情報を収集する

まず、患者を診る際には、食べることに関する知識を持ち、また相談できる専門家とつながっておくことを心がけ、
①患者の日常生活の様子や会話などからも個別の情報を集める。
②視診、問診、血液検査値などから本人の全身状態、家族歴などを把握する。
低栄養により食べられなくなっている場合もあるので、
③栄養の指標(MNA-SF、CONUT)・嚥下の指標(EAT・10、反復唾液のみテスト、水のみテスト)・認知機能検査・口腔内状態(OHAT)・嗜好や食歴も含め、食支援の方法を検討・把握する。
社会的因子(貧困、独居、社会サポート不足など)、心理的因子(うつ状態、認知症、不眠など)、医学的因子(がん、COPDなど)・薬剤の影響(トランキライザー、ステロイド、利尿薬など)、加齢による影響(多様な生理的変化)、栄養バランスの乱れ(微量元素、ビタミン類の摂取量低下)などにも注意し、
④食欲不振を来す原因がないか、その可能性を考える。

➋重要な問題は何か、縛りこむ

「食べられない(食べない)」という状況が「食べたくない」のか、「飲み込めない」のか、原因を分けて考えると問題を理解しやすく、その対処法も見つかりやすい(図3)。
「食べたくない」場合であれば、その理由を広くとらえることがポイントだ。
食事時間の問題(しっかり覚醒していない)、消化機能の問題(お腹が張っている)、嗜好の問題(味が悪い、好きなものではない)、人間関係(食事介助をする人と仲が悪い)、食べにくい(姿勢、テーブルの高さ、一口量、食事介助の速度、食べさせ方)などは日常を観察することで気づけるようになる。
また、収集した個別具体的な経過や状況から、主要な問題とその要因(一っなのか複数なのか)を、仮説を立て絞り込んでいく。

さらに、専門的な評価や診断が必要な時は専門職種に依頼することも視野に入れたい。そのためにも多職種連携のシステムが稼働しやすい関係を築いておくことが重要だ。

一方、「飲み込めない」場合であれば、以下の3つの原因を認識した上で、各領域の専門家が関わって原因を明らかにし、その対処法を探ることとなる。

■機能的原因:嚥下に関わる器官が動かず、神経や筋肉に問題がある場合(脳卒中の後遺症、神経筋疾患、抗精神薬や鎮痛剤の影響、加齢による筋力低下など)。

■器質的原因:口腔・食道・胃までの嚥下に関わる器官に、通過障害を起こす構造的な問題がある場合(口内炎・咽頭がんによる腫瘍、炎症など)。

■心理的原因:心因性の疾患による影響(不安・うつ病による食欲不振など)。

さらに、提供される食事の形状や大きさが口腔内の状況と合っていない場合も、飲み込みにくくなる。

❸仮説に基づき、食支援を実施する

健康状態や安全面への配慮は当然必要だが、配慮することと禁止することは異なる。実施される行為がリスクを持つ場合(食べると誤嚥や窒息を起こすかもしれない、など)、そのリスクが発生する可能性についてのリスクマネジメントも徹底した上で、同意を得られたら実施するようにしたい。
大切なことは、食事を楽しむ、という側面を忘れず、食べることによる満足感や充足感をどうやったら得られるか、という視点で考えること。

「食べたくない」場合は食べたくなるような工夫を考え、安全性と満足感の両立を図りつつ、実施してみると良い。

❹うまくいかない時は再チャレンジ

問題を解決できない時は、問題点と方法の見直しをしてみる。方法がうまくいかないケースは、問題の立て方や仮説が間違っている場合もあるため、再度傭職し柔軟にとらえ直して再チャレンジを。
基本的には、この➊~❹が一連のアプローチの流れで、その繰り返しが基本となる(図4)。

ニュートリション・ジャーナル
理解なき支援が「溝」を生むVol.04
その2『気づきのポイント』

この記事の監修者

渡辺克哉 先生
渡辺克哉 先生
  • 医療法人社団日翔会理事長

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