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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.07 その3

投稿日:2020.11.16

with コロナ時代の在宅医療

厚生労働省によると、2020年5月の医科・入院外のレセプト件数は、前年同月比で79%まで落ち込んでいる※2。新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、症状が軽ければ受診しないなど、患者の受療行動が変わってきている。収束後も外来患者が元の水準まで戻るとは考えにくく、外来医療のあり方自体を見直す必要もあろう。専門家からのアドバイスを受ける機会が減ることで患者の全身状態に悪影響が生じてこないかにも注意が必要だ。

ただでさえ少ない在宅訪問栄養指導の穴を埋めるべく、その人の生活と折り合いをつけながら、栄養ケアまで行う訪問看護師。「免疫アップ以前にエネルギーの確保から始めなければならない方が少なくありません。食事が全く摂れず、低栄養にまで落ちてしまった場合はエネルギーが優先されますが、自粛明けからデイサービスへの通所が行えるレベルの患者には、感染症対策として、栄養と免疫に関する指導を行います。おやつ代わりとして、手軽に取れるビタミン・ミネラル・乳酸菌などを配合した栄養補助食品を案内することもあります。サンプルや実践につながるわかりやすい小冊子を用いて、在宅患者やその家族への情報提供に努めています。患者にとっては日々の生活が最も大切。体力を維持する上で食事(栄養)が果たす役割は大きいですから」と望月氏は語る。

withコロナ時代には、個々人が自主的に情報を収集し、栄養管理を進めていく努力も必要になってくるかもしれない。在宅医療を担う者は、正確な情報の蓄積と、それをかみ砕いて患者家族の理解と実践につなげる工夫が、これまで以上に求められることになりそうだ。

※2「新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取り扱いについて」2020年8月19日中医協総会資料p20

免疫と栄養”の理解を深め、臨床での実践へ

感染機会を減らす方法としての手洗い・消毒、ディスタンス、環境整備については生活様式の特徴からわが国では実践されやすいといえます。しかし、栄養と免疫については漠然としており、具体的な因果関係が理解されにくく、実践に結び付きにくいようです。

本調査について、回答者の多くが管理栄養士であることから栄養管理への関心は高いと考えられますが、「栄養学的なアプローチを充実させることが、患者様・利用者様の感染予防にとって有効であると思う」という回答が43%なのに比較して「どちらともいえない」という回答が56%で、事前の予想に反した結果もありました。

年初からの新型コロナパンデミックの影響で、「免疫」の解釈が「感染症と闘い、自身の体を守ること」のみと捉えられていますが、「免疫」は複雑で別の面も持ち合わせています。身体に有害なものを排除し、有益なものを吸収する腸管免疫は全身の生理反応と連動し、時として臓器障害等を起こすように有害な反応も含み、サイトカインストームも免疫反応の一部であることは一般的な認識には上がってきません。今後は、免疫賦活が生体にとってよくない反応に結び付くのはどのような栄養法なのかが示され、その機序を理解していれば、患者に合った栄養素を選択したりタイミングをずらしたりして、適切に対応できるでしょう。

これから、ますます感染症対策としての免疫作用が注目されることが予想されます。個々の患者に合った具体的な栄養ケアの実践のためにも、”栄養と免疫”について、栄養士はもちろん訪問看護師の方にも関心を持ってもらいたいと思います。理解が深まれば、積極的な栄養ケアの実践へと進めるのでないでしょうか。
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発行:メディバンクス株式会社 ニュートリション・ジャーナル編集部
Mail:info@medi-banx.com

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