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教えてっ! 退院支援の5つのこと第16回

教えてっ!退院支援の5つのこと 第16回

編集部より

ナースマガジン33号(2010年10月25日発行)の「教えてっ!退院支援の5つのこと」でご紹介している、「退院支援の在り方を考える・学ぶ」退院支援塾(全5回)。
ZOOMを使い、宇都宮宏子先生(在宅ケア移行支援研究所都宮宏子オフィス代表)の講義と受講者のディスカッションで毎回にぎわっておりました。
ナースマガジンでこの退院支援のコーナーを開設して、はや4年。第16回目の掲載なのですが、実はこの企画が始まった当初、私の中では退院支援も退院調整もすべてごっちゃまぜでした。入院時から退院の話が始まるなんて…と追い出され感満載の患者・家族側に近い感情を持っていたかもしれません。
しかし取材を重ねるごとに、病院側・地域の受け入れ側それぞれがどんなに患者・家族のために動いておられるかを知り、かつての自分を恥じ入っている次第です。

そしてこの宇都宮先生の退院支援塾では、「退院支援は退院後の行き場を探すことが目的ではない」「患者である前に地域で生活している人」ということを再認識させていただきました。

退院後は少なからず入院前の生活とは状態が変わります。できていたことができなくなることもあるでしょう。そのギャップをできるだけ埋めるために退院後の生活を予測して必要なサービスや環境を整えること、それが退院支援なのだと、遅まきながら理解した次第です。院内、地域それぞれの関係者が押さえておくべき支援のポイントを、毎回丁寧に紐解いてゆく宇都宮先生。

全5回を通して宇都宮先生が発信されている在宅ケア移行支援に向けたメッセージ、「病院チーム、在宅チームが協働していくことで望まぬ入院を防ぎ、aging in place(地域で暮らし続ける)を叶えられる地域にしていきましょう!」を思い起こしながら、本誌をお読みいただければ幸いです。
(2020年10月28日 編集部:岡崎)

宇都宮宏子先生の退院支援塾  「退院支援の在り方を考える・学ぶ」

在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス代表

宇都宮 宏子先生

①退院支援は看護そのもの ~地域包括ケア時代の看護連携~

退院支援は退院後の行き場を探すことが目的ではありません。病院を退院して地域で生活する方は、患者である以前に地域で生活をしている人。その生活を支えるためには、生命・生活・人生の視点からのアプローチが必要です。

退院から在宅療養への移行の中で、院内、地域それぞれの関係者が押さえておきたい支援のポインを示します。
①ケアプロセスマネジメントの可視化
入院決定時から始まる在宅療養移行支援は、そのプロセスを関係者で可視化できていることが大切です。暮らしの場で可能な医療・看護・ケアの提供、意思決定支援などのプロセスは、看護部全体で可視化し、院内のチームで実践できるように取り組みましょう。多職種カンファレンスでは、IC場面に在宅・施設支援者等が同席することも効果的です。
②安定着地のサポート
不安定な退院直後は集中的な看護で安定着地を支え、再入院を予防します。医療保険適用の退院後訪問指導や特別訪問看護指示書による訪問を利用し、生活の場に専門性の高い看護・ケア・リハビリテーションを届ける仕組みを、地域に作ってほしいと思います。
③地域との協働・連携推進
地域との協働・連携は、医療介護連携事業や広域事業(小児・難病など)の取り組みに繋がります。

看護師は、医療・ケアの両面から患者を把握することができます。その両側面からアプローチする退院支援は、生活そのもの、看護そのものと言えます。地域との調整を図りながら、患者自身の思いに応えていきましょう。

(2020-06-11)

②退院支援のプロセス  第1段階: 退院支援が必要な患者の特定

入院医療を受けたら元の状態に戻る、またはきっと良くなる、と患者さんも家族も期待をこめられます。しかし残念ながら入院前とは状態が変わったり、高齢者や認知症患者にとっては入院環境そのものが備わっていた能力を奪ってしまうこともあります。

「こんなはずではなかった」というギャップを少しでも縮めるために、早期に退院後の生活をイメージし、必要な支援の準備をしましょう。看護師は医学的な視点と生活の視点をもっていますから、入院の目的や入院中の状態を見て退院後の状態を予測することができます。退院時の体の変化や支援の必要性をアセスメントし、退院支援の必要性を医療者間・患者・家族と共有し具体化する段階を、退院支援プロセスの第1段階と位置づけました。

入院前の情報をしっかり把握しておくと、目指すゴールも決定しやすくなります。病院チーム・在宅チーム各々の役割を明確にして連携していくことは、患者の揺れ動く思いに沿った話し合いを、より円滑に進めてゆく上で重要なポイントとなります。

(2020-06-25)

③受容支援と自立支援  第2段階: 生活の場に帰るためのチームアプローチ

退院支援の第2段階では、東京都退院支援マニュアルを参考にしてみましょう。

2016年の改訂版では、「退院支援は、入院医療機関のみではなく地域と連携した取組」であることを明確に打ち出しています。入院医療から暮らしの場へ移行する際は、課題を医療とケアに分けて整理・マネジメントすることが重要です。入院前(発症前)との違い(ギャップ)を明確にした上で、意思決定支援、方向性の共有、療養環境の準備・調整を始めるために、医療とケア2種類の初期アセスメントシートの活用を提唱しています。

これらのアセスメントの結果を踏まえ、チームで行う在宅移行支援としての“おうちへ帰るための視点”や退院調整を共有していきましょう。

患者さんが暮らしの場へ戻っていくにあたり、具体的に生活をイメージできるのは日々患者に接している病棟看護師だと思いますが、その情報を看護部や退院支援に関わる部署全体で共有し、在宅チームに繋いでいってほしいと思います。
●参加者からのコメント
困り事が明らかになってから退院が出来ないと相談がきたり、このまま在宅に移行するのは難しい状態だと気づいていても、問題解決のためのシステムが確立されていません。もっとスタッフの意識を上げられるようにしたいです。

(2020-07-08)

④地域・社会資源との連携・調整  第3段階: 退院を可能にするための制度・社会資源への調整をおこなう

退院支援の第3段階では、訪問看護・在宅医療におけるサポートおよび環境調整、生活支援・ケアサポートの導入が重要になってきます。在宅療養を支援するサービスと社会保険制度について、また在宅療養指導料のポイントなどを理解しておくことが必要です。

初めて介護保険を利用する際は、地域包括支援センターとの連携がスムーズに行えるよう、事前の準備と調整をしっかり行いましょう。さまざまな職種の知識・サポートが加わることで、より多くのメリットを引き出すことができます。医療・生活、それぞれの担当窓口を明確にしておくことが、円滑な連携サポートに繋がると思います。
●参加者からのコメント
・MSWと共同で介護保険について院内リーフレットを作成し、活用しています。
・個々の患者さんの状況に合わせ、介護サービス利用が開始できるよう、要介護認定申請のタイミングに気を付けて利用者に伝えています。

(2020-07-22)

⑤外来で始める在宅療養支援 出会いを前へ  この町で生ききりたいを叶える

在宅療養患者は、生活しながら病院に外来受診され、生活者として病気への不安や生活の困りごとを抱えています。外来受診時に患者自身や環境の変化に気づき、一歩先を予測するのが外来の看護師です。在宅療養継続や再開に向けた備えを在宅チームと協議し、地域の社会資源をつなぎながら患者の思いを紡いでいきます。

分岐点を境に、患者は人生の再構築と向き合います。それを支える病院チーム・在宅チーム双方の連携を強化することで、サポートの不備による入院を防ぎ、aging in place(地域で暮らし続ける)の実現を可能にすることでしょう。
●参加者からのコメント
・一人の患者さんが生活する上で関わる外来、療養、訪問看護師が共有できるシートを活用しています。
・外来受診にケアマネジャーや施設看護師が同行し、情報交換をしています。

(2020-08-05)
※この退院支援塾の詳しい内容は、取材レポートとして随時ご紹介していく予定です。

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