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高濃度酸素療法はどのレベルで脳梗塞患者に効果があるのか、どのレベルの状態改善が見込めるのか

先日”ナースの星WEBセミナーで配信した 鎌田 佳伸先生 の新テーマ、「脳神経シリーズ」。
おかげ様で大盛況に終わりました。

今回は、鎌田 佳伸先生に受講者様からのご質問にお答えいただきました。
函館脳神経病院 集中ケア認定看護師
鎌田 佳伸先生

ご質問

梗塞の急性期から自分が受け持った患者さんです。

急性期後にこの患者さんは高濃度酸素療法を実施しました。発語機能は戻りませんでしたが、意識状態が少しずつ改善していったというケースがあります。

高濃度酸素療法はどのレベルで脳梗塞患者に効果があるのか、どのレベルの状態改善が見込めるのかしりたいです。

鎌田佳伸先生からの回答

高気圧酸素治療は、大気圧よりも高い気圧の環境下で、高濃度の酸素を吸入する治療のことを言います。大気圧下に比べ10~20倍の酸素を体内に吸収できるとも言われており、最近では診療報酬が上昇し注目されています。

ある文献では、脳梗塞発症後24時間以内に高気圧酸素療法を実施した39症例と、非実施症例では、治療開始10日で運動麻痺や言語障害が改善し、30日後も継続して改善したと報告されています。しかしこの報告ではJCS20以上の重症例や広範囲脳梗塞では非実施症例と差はなかったとされています。

しかし脳卒中ガイドライン2015では、治療効果に十分な科学的根拠はないとされています。またこの治療は、患者の循環呼吸が安定していることや、ある程度指示理解が得られる患者でなければ実施することは難しいように感じます。さらに肺気腫や気胸の患者は実施できない事や、実施後耳痛などを訴える患者も比較的見られます。

これらを考慮すると、全ての患者に劇的な効果が出るとは言えないけれども、比較的脳梗塞の範囲が狭い患者や、軽症例では症状の改善が期待できるため、高圧酸素治療の実施することが望ましい。しかし禁忌や合併症など、リスクとベネフィットを考え治療の是非を考慮するべきだと感じます。また症状の改善には、酸素治療だけでなく、日々の入院生活の中でのリハビリテーションを継続し、「生活の再構築」を意識していくことが重要と感じます。
参考引用
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/14/6/14_6_627/_article/-char/ja/
・脳卒中ガイドライン2015 P325~326
・大島光子, 佐渡島省三, 梁井俊郎ら : 急性期脳梗塞患者における高気圧酸素療法の効果-臨床経過と髄液乳酸濃度を中心に-.脳卒中10 : 208-214, 1988

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