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神戸の訪問看護師 藤田 愛さんのコラム

千分の一のコロナの訪問看護⑩

※原文およびその他の投稿内容については、藤田さんのフェイスブックでお読みいただけます。

1000分の一のコロナの訪問看護⑩ 酸素器機を不足させない作戦

自宅療養者、入院待機者が2000人を超えたことがあった。
すると「在宅酸素が足らなくなる」「大阪、兵庫で酸素器機争奪戦が起きている」プチパニックが生じたことがあった。

まずい、と思いできることを考えた。

コロナで使用された機器は、使い終わってすぐに引き上げられず、酸素業者の方が感染しないために、各社、自宅で2~4週間寝かせて引き上げるというルールがある。その後、メンテナンス1週間、約一か月もインターバルがある。

思い出せるだけで10台は家に置かれたままの酸素器機。あの時は入れるだけで精いっぱいだった。この「寝かせる」期間を短くできれば、単純に一週間で酸素器機は次の酸素吸入が必要な方のところに出動することができる。

複数の酸素業者さんとお話して、もし看護師が消毒をしてビニール袋をかぶせてみたらどうなりますか?
「助かります、それならすぐに回収できます」
というお返事。わお!

神戸市に提案したらnice!即採択、まではよかったが、ブーメランで神戸市⇔訪問看護の委託契約書に酸素器機の消毒、回収調整の文言が追加された、そのつもりだったけど私やるんや(笑)

でも委託業務契約事業所でなくても、訪問医師でも看護師でも誰でもできることなので10分のお時間があればぜひ協力下さいませ。腕磨けば3分でいけます😉

さて今日はリハーサル。
まずは8台。しっかりお役目を果たしてくれた酸素器機。
余談になるが、訪問を始めた頃はコロナ主治医が不在で、酸素器機が入るようになった道のりの長さ、様々な試行錯誤。お仕事で不在だったり、在宅の方たちには『え、同じ人?』見違えるほど回復されて元の生活に戻られている報告や、療養中の思い出話しをして下さる。

言葉が見つからないでいると、一緒に回ってくれた社会福祉士兼介護支援専門員が「所長、うれしいですね」と目を細める。「ほんま、うれしい」、それぞれの回復も、不在がちでほとんど事務所にいられなかった所長がうれしいと思っていることを分かってくれていることもどっちもうれしかった。

思いがけず、単なる回収作業ではなく、その後のうれしい経過を知る素晴らしいサプライズ付きの訪問となった。

全部まとめてありがとうねの気持ちで器機を一台ずつ、隅々までアルコール清拭をして乾かして、ビニール袋をかぶせ家の前に置く。時間差でやってきた業者さんに引き取られてゆく。8台で半日を費やした。

さて本題

課題も見えた酸素器機回収作戦のリハーサル。方法と見えた課題。
コロナで使われる在宅酸素器機の主役は5ℓタイプ。
酸素飽和度が93%を下回ってゆく時、大半が3ℓスタートを必要とする。不足した時に3ℓマックスタイプだと足らなくなる。
*結果的に3ℓマックスで回復に至った方も多く、見分け方が見つかるかも知れない。

5ℓタイプは重量約20㎏、とは考えず、自分で運んだエレベーターなしの5階建て5階。歯を食いしばるとはこういうことかとか思いながら、手がちぎれそうになりながら一段ずつ階段を上がったことを忘れてない。

①2名体制(1名は職種何でもいい)
1)本人の回収希望時間と業者さんの回収可能時間が合わず、かつ家の前に置きっぱなしにできない(アパートの通路が狭くて機器を置くと人の通りを妨げる、置く場所がない等)は事務所に引き上げて、都合のいい時に回収に来てもらうことにしたので、20㎏を家から車に乗せるため。
2)分業しながらの作業効率:順路の決定、行く先への電話連絡(おおよそ何分後に到着します、できれば玄関先に機器を移動させておいてほしいお願い、駐車番)
3)持ち帰りなくても一人で行くと駐車場所がないお宅だと1名が車に乗っていて邪魔になると車が動かせる。

②必要物品:構えはスタンダードプリコーション、プラスティック手袋、一面一枚分のアルコールガーゼ、透明のポリ袋45ℓサイズ、レジ袋

③酸素器機の引き上げの日程を確保したら、業者さんと打ち合わせ(看護師消毒→業者さん引き上げ)、元療養者の方の都合を合わせて順路を決定、元療養者の方に概ねの時間を伝え、不在の場合、雨がかからず邪魔にならない置ける場所がある方は家の前に出しておいてもらうことにした。独居、夫婦で入院中の方はご家族に鍵を開けてもらわなければならず、時間が合わず本日は断念。

④カヌレ、ホース類をレジ袋にまとめ家庭で破棄していただくようにお願いする。*神戸市は燃えるゴミ(青い袋)

⑤消毒清拭と袋かけ:
1)一部を除いて玄関の外に機器を運び出してからアルコール清拭、一面一枚のガーゼを使用、コンセントのチューブ、フィルター部分も忘れず。
2)2~3分風にあててアルコールが乾いたら透明のポリ袋をかぶせる。ボンベがある場合は別の袋をかぶせる。
3)玄関前に置いて、のちに業者さんが回収に来ることを伝えて、ご挨拶。

⑥持ち帰り分は車に運ぶ。軽自動車の後部座席の足元だけで3台は十分入る。

ざっとこんな工程

課題:使用したホースやカニュラを業者さんが持ち帰って破棄できないことを確認できていなかったので、事務所に持ち帰って破棄することとなった。これは上記方法を見つけられたので解決。

療養から数日が経ち、回復後は皆さんお仕事に戻られたり、外出されたり、また入院中の方はご家族に開錠してもらわねばならず、私たち、業者さんの時間を合わせるのが難しい。業者さんは当然ながら、出動する酸素器機の時間が急ぎ、車が埋まっている。まとめての回収や時間指定は難しい。

酸素を必要とする方が一気に増えるピーク時には、今日のように2台で回収におつきあいしていただくことはできないだろう→後でまとめて回収作業をするよりは、酸素が不要となった時、訪問の終了時に1台ずつ時間指定をしない当日中、よい場所があれば近日中という形での回収をお願いする。無理なら事務所に一時的に保管する。これは今後、業者さんと一緒に検討できる課題だと思う。

器機によっては45ℓタイプのポリ袋に収まらない機種もあったので、ぱっつんぱっつんになったが何とか覆うことはできた。
というわけで、本番のようなリハーサルが終わった。

訪問中は15分しか滞在できないのでゆっくり話すこともできなかったので、サプライズがうれしかったし、その後、体調や暮らしがどうなったかを知ることでコロナ訪問看護への新たな知見が増えたのも貴重だった。
(2021.5.21)

つつく・・・
※藤田さんの著書は台湾でも翻訳出版(写真左)されています。

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