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褥瘡は、治療よりも予防 第1回

褥瘡は、治療よりも予防。 第1回

投稿日:2011.06.21

平成14年10月の厚生労働省の褥瘡対策未実施減算以降、褥瘡対策は、治療よりも予防と言うのは、常識になっていると思う。

しかし、私自身が、褥瘡を本気で予防しなければならないと思ったのは、その通達が行われた1年以上前の平成13年の6月のことだった。

平成10年6月から愛知県豊田市にあるK病院(600床)に初めて常勤の形成外科医として赴任して以来、全病棟の褥瘡患者の治療と在宅訪問診療で褥瘡がある患者に関して治療に専念した。

積極的なデブリードマン、ガーゼをやめて創傷被覆材を導入し、除圧とポジショニングの徹底、筋皮弁手術、陰圧療法、リハビリテーション、栄養サポートチームの立ち上げ、褥瘡クリニカルパスの作成などできることをとことん行ってみた。

その頃、褥瘡有病率は、4~5%で、毎週水曜日の褥瘡回診は、かなり忙しい状況だった。
そして、赴任後3年が経過した平成13年6月になって、褥瘡治療の成果をまとめてみた。

3年間の治療効果は実感していたが、院内褥瘡患者数は、減少するどころか、徐々に増加し、30人前後(5%前後)になっていた。

もちろん、褥瘡を持って退院する患者様には、原則7日内にご自宅へ訪問して、体圧分散マットレスの選択や体位変換方法の指導も積極的に行っていた。

在宅では、人手不足で有効な体位変換が出来ず創傷被覆材が使えない点も悩みの種になっていた。

結局在宅では、患部にずれ力と圧迫力を引き起こしているガーゼ軟膏処置を、行うしか選択肢がなかった。

治療法をいかに改善しても、褥瘡発生原因に対して何らかの予防的介入を行わない限り、このまま褥瘡は、増え続けることが予想された。

予防するしかない。本気でそう決意した。

しかし、どうすれば良いかが皆目見当がつかない状況だった。その頃、院内では、褥瘡発生患者に限定してブレーデンスケールによる褥瘡リスクアセスメントを行っていた。

患者ひとりあたり 2時間近くを要し、担当の看護師は残業になっていた。緊急入院事例が発生すれば、そちらを優先するので、ブレーデンスケールの判定は、翌日へずれ込むことも多かった。

当然ながら褥瘡対策は1日遅れとなる。予防するために入院患者全員に対してブレーデンスケールを付けることは、どう考えても不可能と思われた。

しかし、丁度その時、褥瘡学会の初代理事長の大浦武彦先生の開発された褥瘡リスクアセスメント(大浦スケール)に出会った。

ブレーデンスケールの判定法に比べて、とても簡単で、これなら、入院患者全員に導入できるかもしれない。希望の光が見えた瞬間だった。 続く 

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