1. ホーム
  2. コラム
  3. 秋から特に注意したい高齢者の乾燥肌対策
ナースマガジン

秋から特に注意したい高齢者の乾燥肌対策

投稿日:2013.10.17

軽視していると、思いがけないトラブルに発展することがある高齢者の乾燥肌。
専門家のお二人に、注意すべきポイントなどを伺いました。
渡邉 ナースの皆さんは高齢者の患者様と多く接しているので、特有の肌トラブルに遭遇するケースも多いかと思います。

高齢者の肌が乾燥する原因としては、加齢にともない自然に体の代謝機能が落ち、皮脂腺から分泌される皮脂量が減少することが挙げられます。また、乾燥が進んだ肌では角層の中にある細胞や水分をつなぎとめている肌の必須成分セラミドが失われがちです。

結果、外部の刺激から肌を守り、水分の流出を防ぐ肌の「バリア機能」が低下し、肌の保水力や保湿力が下がっていくということになります。

西田 セラミド不足は、乾燥の大きな原因の一つですね。

渡邉 肌の保湿に重要な、皮脂やセラミドは、肌を洗浄する際に流れ落ちてしまいます。洗浄してから肌が潤いを取り戻すまで、高齢者は若者の倍の時間がかかります。

セラミドが不足し、バリア機能が低下することによって、高齢者は肌本来の成分だけでは保湿がなかなか追いつかず、どんどん乾燥が進み、様々な肌トラブルが起こるのです。
西田 私が目安としている、保湿ケアが必要な皮膚の乾燥を見分ける方法の一つに、固定用テープの貼り付きやすさがあります。貼れなくなったり、貼りづらい高齢の患者様は、老人性乾皮症(下図)の可能性があるのはもちろん、肌のバリア機能が落ちて白癬菌(水虫)などの感染症にもかかりやすくなります。

渡邉 適切な保湿でいかに肌のバリア機能を保持するかが大切ですね。私は急性期病院におりますが、高齢者の患者さんはほぼ例外なく乾燥肌です。健康レベルが日常より下がっている方々なので尚更です。

西田 また、疾患で肌のバリア機能の低下やそれによる乾燥を予見することも出来ます。病院や介護施設等のコンサルテーションで様々な疾患の高齢の患者さんにお会いすると、皮膚乾燥や菲薄化している方も多いです。むくみで乾燥している方も良く見かけますね。

渡邉 肝疾患や腎疾患の方、血液疾患の方も乾燥肌が多いですよ。重度の皮むけを起こす方もいます。
西田 末梢動脈疾患を持っている方は全国に推定で320万人といわれています。栄養が行き届かなくなるので、皮膚に乾燥や変色といったトラブルが起きがちです。

また、糖尿病などの神経障害がある方などは、気づかずにケアが行き届かなかったり傷をつくっていたりもします。高齢者は病気のデパートになっている方も多いので、受診している疾患だけでなく、それに伴う肌の変化にも意識して、ケアしてあげることが重要ですね。

渡邉 そうですね。原因となる疾患を内側から治しながら、同時に肌表面のケアをするということに尽きます。肌は細菌から身を守ってくれる人体で最大の臓器。年相応に健常にすることが大切です。

高齢者ですと白内障や網膜症などで自分自身の皮膚の状態が見えにくい方もいらっしゃいますから、まずはご自分の状態に気づいていただく、そしてセルフケアの意欲を上げてもらうことが第一歩だと思います。
渡邉 秋〜冬は若い人も乾燥する時期ですから、高齢者は更に注意が必要です。電気毛布やあんかなどの電気寝具で、肌の乾燥が進んでいる方も多いですね。

西田 秋冬は布団に入ると体が温まってかゆみも出るため不眠症になる方もいらっしゃいますので、肌の保湿やお布団の温度調節をしてあげることなどがますます大切になってきます。

渡邉 基本のケアとしては、肌(角層)に影響を与えにくい洗浄剤を使い、セラミドなど保湿に優れたスキンケア用品を塗り続けること。一週間くらいでかなり変わります。

西田 冬の乾燥に対応することはもちろんですが、普段から一年を通してご自宅で保湿をする意識を持っていただくことが何よりも大切。冬は油分が多いクリームを、そして夏はさらっとしたローションタイプなど、季節に合わせた保湿剤をお勧めすることで、気持ちよく続けていただけると思います。
西田 基本ではありますが、どんな疾患でも肌の乾燥をチェックすること。そしてケアの必要な患者さんにはスキンケアを習慣づけてもらうことが大切ですね。私が伺っている施設では、入浴の日に保湿剤や入浴剤を用意し、終わったら必ず保湿剤を塗ってから洋服を着ていただく流れを作っています。

渡邉 現場にすぐ使える用具やスキンケア用品を揃えておくのをお勧めします。どんなに意識があっても、取りに行って準備してからとなると、忙しい中では難しいですから。あとは、ひと通りのスキンケアマニュアルがあれば、ナースの経験に関わらずきちんとケアができるようになるでしょう。

西田 普段からのスキンケアを通じて、患者さんと信頼関係が生まれたり、心や体の痛みを少しでも楽にするお手伝いができるのは、ナースにとってとても素晴らしいことですよね。

渡邉 ナースの皆さんはスキンケアの意識が高い方が多いですから、正しい知識やスキルをもっていれば、効果的なケアを行ったり、患者さんに適切な指導ができると思いますよ。

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。



他の方が見ているコラム